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モノを買うとき、ちょっと立ち止まって考えて【「マイ・エシカル」でいこう。・1】

モノを買うとき、ちょっと立ち止まって考えて【「マイ・エシカル」でいこう。・1】

第1回 エシカル協会・竹地由佳さんに聞く、「エシカル消費って何?」

7月3日、静岡県熱海市で発生した記録的豪雨による土石流は、130棟以上の建物を呑み込み、11名の方が亡くなりました。現在も安否不明者の捜索が続けられています。思い起こせば昨年もちょうど同じ時期、熊本県を中心とした大規模な集中豪雨が発生し、80名以上が犠牲となりました。

毎年のように気象災害が発生し、「数十年に一度」「記録的」という報道が目立つようになったのは、日本国内だけではありません。西ヨーロッパでは2003年夏に「熱波」が猛威をふるい、フランスでは14,800人、ヨーロッパ全体で7万人以上が亡くなりました。19年にはフランスで観測史上最高となる45.9℃を記録。インドのラジャスタン州では50.6℃という最高気温が観測されました。

地球規模の危機的状況を少しでも良くするため、わたしたちには何ができるでしょうか。一人一人が自分の暮らしと向き合い、少しずつでも行動を改善していくことが、子どもたちの未来を守る大人の責任です。たとえば、食べるもの、使うもの、身につけるもの。日々の買い物の中で、それをどう選び、使っていますか?

モノの「過去」「現在」「未来」を考える、エシカル消費。

「価格、機能性、デザインで選ぶ人は多いですが、そこに『エシカル』という物差しも、ぜひ加えてほしいですね」

そう話すのは、一般社団法人エシカル協会理事の竹地由佳さん。「倫理的」という意味の「エシカル(=ethical)」は、「法的な縛りはなくても、多くの人が正しいと思っていること」「本来、人間が持つ良心から発生した社会的な規範」と言い換えられるといいます。同協会はこの考えをベースに、「人・社会・地球環境・地域に配慮した考え方や行動」がエシカルであると伝えています。

「エいきょうを、シっかり、カんがえル(影響をしっかり考える)」。協会ではこのスローガンで、エシカルな消費やライフスタイルへの理解を広げています。

「買い物をする時は、そのモノの過去・現在・未来を考える。つまり、誰がどこでどうやって作ったものなのか、それをどのように使うのか、使ったあとはどうするか。そこまで考えて選ぶことが、影響をしっかり考えるということだと思います」

※エシカル協会提供

たとえば、子どもが大好きなバナナ。森林伐採により広大な農地を造成し、除草剤や化学肥料、農薬をたくさん使って大量生産されたものがある一方で、自然林を生かし、生態系を守りながら無農薬で育てたものもあります。

有機栽培のバナナ園 撮影:成見智子

ファッションなら、ペットボトルをリサイクルした繊維で作られた製品や、古着を集めてリメイクしたTシャツ、フェアトレード製品(発展途上国の生産者を支援するため、公平な関係のもと、適正な価格で販売されたもの)。おもちゃなら、土に還る木材で、間伐材や端材で作られた積み木。ちょっと意識して探すだけで、エシカル消費になるモノは身の回りに案外たくさんあることに気づくでしょう。

地球温暖化は、なぜ起こる?

気象災害の主な原因とされているのは、大気中にある二酸化炭素(CO2)やメタン、フロンなどの温室効果ガス。地球を温めて、多様な生物が住みやすい環境を作ってくれるガスですが、増え過ぎると熱が地表にたまって気温が上昇したり、地球全体の気候が変化したりする「地球温暖化」を引き起こすと言われています。

産業の発展にともなってより多くのエネルギーが必要となり、石炭や石油などの化石燃料を大量に燃やした結果、大気中に排出されるCO2は急速に増加しました。そのCO2を吸収してくれるはずの森林も、大幅に減っています。2016年に国連食糧農業機関(FAO)が公表した世界森林資源評価(FRA)によると、1990年に41.28億haあった森林面積は、2015年には39.99億haに減少。25年間で失われた1.29億haは、なんと南アフリカ共和国の国土面積に匹敵する広さなのです。

もっとたくさん、もっと効率よく、もっと安く。先進国の企業が、さらなる利益を求めて競争を続けた結果、大量生産、大量消費、大量廃棄が当たり前になり、莫大な天然資源が消費されました。これを続けることは、洪水・熱波・干ばつ・山火事・生物多様性の損失といった自然環境の破壊が進むだけではありません。人権侵害・児童労働・貧困もいっそう深刻化します。一部の国の人々が、電気をたくさん使い、大量の使い捨て製品や安いファストファッションなどを消費する陰で、立場の弱い途上国の人々がコスト削減の犠牲となっているからです。児童労働や、不当に安い賃金での労働などを余儀なくされている人々のことは、世界中のメディアでたびたび報じられてきました。

「マイ・エシカル」で、楽しく、気持ちよく。

現在、5歳と2歳の二児の子育て中という竹地さん。公私共にエシカルを実践するうち、無駄なものは買わなくなり、代わりに、少し高くても長く使えるものや、誰かに譲っても使ってもらえるものを買うようになったそうです。エシカル消費を長く続けていくためのポイントは、「楽しく、気持ちよく」を心がけること、そして「マイ・エシカル」を実践することだと、竹地さんは教えてくれました。

「エシカル消費は、これがいちばん、とか、これで完璧、というものではないので、いろんな選択肢があるなかで、自分の関心のあることから気軽に始めてほしいですね。大切なのは、モノの背景にある社会問題に気づき、自分の視点を持ってその解決に貢献することだと思います。たとえば、児童労働や人権侵害に関心があるならフェアトレード製品を買う。住んでいる地域に貢献したいなら地産地消を心がける。被災地を応援したいなら、そこで作られたものを購入したり、被災地への寄付ができる商品を買ったりという応援消費ができますね。一人の100歩より、100人の一歩です。一人一人が小さな一歩を踏み出すことが、社会を大きく変え、前進させる。そんな力を持っているのが、エシカル消費だと思います」

自分がどんなことに興味を持って、何を大切に生きているのか。そして、どんな未来を望むのか。その意思表示をすることがエシカル消費だと、竹地さんは言います。自然環境に配慮したエシカルを続けるうち、地域に配慮したエシカルにも興味を持つなど、視野を広げていく人がとても多いそうです。

その過程で、問題解決に貢献できると思っていたものに疑問を感じたり、また新たな問題意識が生まれたりするかもしれません。そうしたことにも一つずつ向き合い、考えながら、エシカル消費を続ける。それは、自分の目で社会をしっかり見る目を養い、その知見を子どもたちに伝えていくことでもあるのです。

次回は、エシカル協会の創立メンバーである竹地さんに、ご自身の子育てについてうかがいます。日常生活にエシカルをどう取り入れているか、その教育効果も含めてご紹介します!

【教えてくれた人】

竹地由佳 (たけち・ゆか)さん 

宮城県仙台市出身。大学卒業後、銀行に就職し、個人営業を主に担当。行員向けの環境ボランティア企画にも携わる。2011年の東日本大震災をきっかけに、エシカルな仕事をしたいと決意。東北地方の復興事業やアメリカでのボランティア活動などを経て、2015年に一般社団法人エシカル協会の立ち上げから従事。エシカル消費の普及啓発の活動をしている。二児(5歳と2歳)の子育て中。

成見 智子

成見 智子ライター

東京都出身のジャーナリスト。農業と食を中心テーマに取材活動をしています。日本国内の畑や田んぼ、飲食店、直売所、加工所などを訪ね、生産者や作物の紹介、6次産業化、ローカルガストロノミーなどをリポート。農業には社会課題を解決できる糸口がたくさんあり、これからまだまだ伸びる業界です♡ 趣味は旅行、外遊び、ベランダ菜園、料理、読書。コロナをきっかけに、東京近郊の自然豊かな「トカイナカ」にも注目。地域の魅力ある人・コト・モノを発信しています。 tokainaka.jp

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