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1/100ミリを究める精密木工技術!  木製ブロック「もくロック」【マイエシカルでいこう。7】

1/100ミリを究める精密木工技術!  木製ブロック「もくロック」【マイエシカルでいこう。7】

第7回 「山形の自然を表現したい」~株式会社ニューテックシンセイ代表取締役 桒原晃さん

山形県産の広葉樹の木材を使用し、精密機械メーカーの技術を結集して開発された「もくロック」

みずみずしい木々の写真が印刷された紙箱には、「MADE IN JAPAN」「100% NATURAL」の文字。中には、24ピースの木製ブロックが入っていました。

白っぽいもの、赤っぽいもの、黒ずんでいるもの。木目の粗いもの、細かいもの。ざらざらした感触のもの、なめらかなもの。色も、硬さも、手触りも、そして香りも、一つ一つが違っています。

「薄めのピンク色は、カエデです。サクラはそれより少し濃いめの色ですね。ホオノキは白いのもあるし、黒っぽいのもあります。同じ木でも、辺材と心材とで色が違うんですよ」

そう教えてくれたのは、株式会社ニューテックシンセイ(本社:山形県米沢市)代表取締役の桒原晃(くわばら・あきら)さん。同社は2012年から、「もくロック(MOKULOCK)」という商品名で木製ブロックを販売しています。原料となるのは、山形県南部の置賜地方の森林から切り出した広葉樹。未利用材と呼ばれる、製材用や合板用には使えない木材を有効活用しています。

(株)ニューテックシンセイ代表取締役・桒原晃さん
県土の約7割を森林が占める山形県。家具などには使えないような未利用材を有効活用し、もくロックは創られる

手間がかかっても、複数種類の木を使う理由

一つとして同じものがないピース。実は大きさも違っているのです。といっても、それは1/100ミリ単位の違いなので、見た目で判別はできません。でもこの違いが重要なのだと桒原さんは言います。

「自然のものですから、柔らかい木と硬い木があります。それを全部同じ寸法で造ると、ピースのはまり方が緩すぎたり硬すぎたりということが起きてしまうんです。なので、硬い木は小さ目に、柔らかい木は大きめにカットしてあるんです」

硬いのはカエデやシデなどで、柔らかいのはホオノキ。その中間ぐらいでいちばん扱いやすいのはサクラだそうです。使用する木材は、年間をとおして8種類。伐採する山や季節によって調達できる木材が異なりますが、商品1箱につき5種類以上の木が入っています。木の種類によって性質や含水量が違うため、扱いもそれぞれ異なるとか。その手間をかけても多種類の木を組み合わせる理由は、「自然を表現したかったから」と桒原さんは話します。

「たしかに、1種類にすれば楽ですよね。でも、自然界には多様な生物や植物が生きていて、そのなかにいるといろんなことを感じるし、それが面白いんだと思います。自然の中にいる楽しさを子どもたちに少しでも感じてもらいたい。だからたくさんの種類の木を使おうと思ったんです」

動物や鳥、怪獣、木など、自由な発想で造形を楽しむ子どもたち
もくロックを組み立てて作った家

会社のピンチから生まれた「もくロック」

 ニューテックシンセイの本業は、電子機器や産業用機器の製造です。機械を専門とする会社が、新規事業として木製玩具の製造を選んだのはなぜでしょうか。

 きっかけは、社業のピンチです。同社は1980年に創業し、90年代まではテレビやFAX、PHSなどの製造、2000年頃からはパソコンなどの情報機器の受注製造が主業でした。ところが2010年、取引先の大手メーカーが海外メーカーとPC事業を統合。その影響で大口の受注を失いました。

中国や東南アジアで作られる安価な製品との競合も厳しくなるなか、自社の事業モデルに行き詰まりを感じていた桒原さんは、研修で県内の他業界を視察する機会を得ました。“山形イタリアン”として親しまれている鶴岡市のレストランと、寒河江市にある創業200年の繊維会社です。

レストランの周りには観光地は何もありませんが、シェフの料理を食べるためだけに、日本中から毎日大勢の人が訪れています。繊維会社にはこれといった新しい設備はありませんでしたが、だれもが知るヨーロッパの一流ブランドと取引があり、“斜陽産業”と呼ばれる繊維業界にあって、この会社だけは別格です。実際に訪れてみて、桒原さんはその理由がわかったといいます。

「『山形には特色のある野菜が多いんです。それを生かすことを考えるようになってから、たくさんの人が来てくれるようになりました』というシェフの言葉が印象的でした。繊維会社は昔ながらの機械を自分たちで改造し、特殊な糸を編み出していました。地域や自社の資源を生かせば特色ある商品やサービスができるんだと、その時気づきました」

 寒暖差の大きな庄内平野で育ち、甘みや旨みが凝縮されたおいしい野菜。庄内浜から水揚げされる、年間130種類以上の新鮮な魚介類。最新の機械に頼らずとも、付加価値の高い製品を生み出すことができる技術。それらはすべて、地域の風土が育んできたものや、その企業が長年培ってきたものです。

自社で開発した切削機で丁寧に削り出す。4ピースを削るのに40分ほどかかるという
社内に木材の専門家はいない。技術者が木材ごとの性質やくせを一から学び、技術とノウハウを積み上げてきた

「できない」を「できる」に変える、技術の力

あらためて周りを見渡すと、手つかずの豊かな森林がある。そして自社には、情報通信機器を作ってきたノウハウと生産技術がある。もくロックは、その両方を生かすことで開発された製品です。製作過程でいちばん苦労したのは、加工よりも素材づくりだったと桒原さんは振り返ります。

「もし最初から木材に関する知識を持っていたら、ブロックは作らなかったでしょうね(笑)。やる前から無理だと思ってしまったと思います。大学の研究機関に行っても、『できないですよ』とよく言われましたから。でも実際にやってみると、技術者の感覚としては『できそうだな』と思うことも多かったんです」

金属や化学物質と違い、木は生き物です。温度や湿度によって伸びたり縮んだりするため、ブロック同士がうまくはまらなかったり、割れてしまったりする不具合が出ました。それでも製造現場はあきらめることなく、木材の性質や状態に応じた最適な乾燥期間や手法、適性な寸法を見つけ出すための試作を繰り返しました。

木材への知識を深め、技術を結集し、2年の歳月をかけて製品化されたもくロック。一つ一つ表情の異なるピースの感触を楽しみながら組み立てていると、パチッと小気味良い音を立ててはまることもあれば、シュッと空気が抜けるように静かに合体することも。木材どうしの相性や、指の使い方、力の入れ具合、はめる時の角度などによって、一回一回異なる感覚を味わえます。それは、プラスチックのブロックにはない楽しさ。優しくて懐の深い、自然のぬくもりです。

ブロックの大小、個数などに応じて10種類以上の商品を販売している
もくロックの発売を機に、ニューテックシンセイは森づくりの活動も始めた

次回は、もくロックを開発した時の桒原さんの思い、ニューテックシンセイの環境保護活動や、子どもたちとの関わりなどについてご紹介します。(写真提供:(株)ニューテックシンセイ)

もくロックはどこで買えるの?
もくロックは、ピースの大きさや数によって10種類以上の商品ラインナップがあります。
公式サイトやAmazonなどで購入可。インスタグラムでは、商品を販売している店舗や組み立て例なども紹介しています。
■もくロック公式販売サイト
https://mokulock.com/?mode=f8
■もくロック Instagramm
https://www.instagram.com/mokulock_jp/
■もくロック Facebook
https://www.facebook.com/mokulock/

成見 智子

成見 智子ライター

東京都出身のジャーナリスト。農業と食を中心テーマに取材活動をしています。日本国内の畑や田んぼ、飲食店、直売所、加工所などを訪ね、生産者や作物の紹介、6次産業化、ローカルガストロノミーなどをリポート。農業には社会課題を解決できる糸口がたくさんあり、これからまだまだ伸びる業界です♡ 趣味は旅行、外遊び、ベランダ菜園、料理、読書。コロナをきっかけに、東京近郊の自然豊かな「トカイナカ」にも注目。地域の魅力ある人・コト・モノを発信しています。 tokainaka.jp

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