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日本の木材を、もっと身近に。 木製ブロック「もくロック」【マイエシカルでいこう。8】

日本の木材を、もっと身近に。 木製ブロック「もくロック」【マイエシカルでいこう。8】

第8回 「自然から喜ばれる商品でありたい」 ~株式会社ニューテックシンセイ代表取締役 桒原晃さん

色、硬さ、手触り、木目。ピースは1つ1つ違うのに、どれもしっくりとはまります。2012年、山形県の森林から生まれた「もくロック(MOKULOCK)」。1/100ミリ単位で計算された精密な技術を駆使した木製ブロックです(前回記事参照)。1つの商品に使われている木材は5種類以上。反ったり割れたりすることがなく、ぴたりとはまるのは、それぞれの木の特性や性質を見極めて製造されているからです。

サクラ、カエデ、シデ、ホオノキなどの広葉樹から作るもくロック

わくわくしながら仕事をしたい

製造元は、山形県米沢市に本社を置く (株)ニューテックシンセイ。精密機械の製造が主業ですが、未知の素材である木材を扱うことは簡単ではありませんでした。大学や研究機関からも「できない」と言われたブロックの製造にあえて挑戦したのは、「楽しいこと」を大事にしたからだと、代表取締役の桒原晃さんは振り返ります。

「子どもたちに遊んでもらえるものを作れたら、わくわくしながら仕事ができると思ったんです。同じ木製玩具でも、積み木なら比較的簡単です。でもそれならうちの技術を生かさなくてもできてしまうから、より精密さが要求されるブロックにしました。仕事って、何をやってもどうせたいへんじゃないですか(笑)。つらい中でもやる気を保ち、長く続けられそうな製品を選びました」

SDGsが国連で採択されたのは2015年ですが、同社では商品開発を始めた2010年から、すでに持続可能性を意識していたそうです。

「自分たちの中では、『自然から喜ばれる商品やサービスでありたいね』という言葉で語り合っていました。もくロックの開発により、自然に負荷をかけるのではなく、自然にとっても喜ばしい商品になれば、先々もずっと持続しやすいだろうなと感じていました」

子どもたち、そして自然からも喜ばれる商品をめざす
もくロックは、一般的な木材としては使えない「未利用材」を有効活用して作られる

子どもたちの学びの場「もくロックの森」

取り組んできたのは、商品化だけではありません。消費するだけでなく、生産する側にも立ってみようという考えで参画したのが、山形県の「やまがた絆の森プロジェクト」。南陽市十分一山(じゅうぶいちやま)の景観の保全と、広葉樹の森の再生を目的に、社員と地域が連携して森づくりをしています。

「毎年春から秋にかけて300本から400本くらい植林をします。植林作業も大事ですが、その準備作業も大事だとわかりました。幼木をただ植えても周りの草に負けてしまうので、下刈りをするんです。そっちのほうがたいへんです(笑)。でもこの活動が、地域の人たちと当社との接点になればいいなと思っています」

「もくロックの森」と名付けた森林の一画で実施するのは、小学生の環境学習や職業体験、高校生のフィールドワークや木育です。木の手触りや香りなどに関心を持ってくれる子どもたちがいることに、桒原さんは手ごたえを感じています。

「もくロックを使った遊び体験をすると、湿度の多い時期と乾燥している時期とでは遊びやすさが違うとか、はめる時の音が変わったとか言ってくれる子たちがいるんです。そんな繊細なことまでわかるのかと、嬉しくなりますね。この活動が、自然に対する気づきや体感のきっかけになればいいなと思います」

木を使うだけでなく、自ら育てる活動にも力を入れる
植樹の前に、生い茂る雑草を草刈り機で下刈りする

今いる場所は、ずっと住みたかった場所

桒原さんは高校卒業後、1999年に父親が経営していたニューテックシンセイに入社しました。大学に進学したのは2011年。MOT(技術経営)の取得をめざす一方で、もくロックの製品化を推進しました。その過程でおこなったのが、ベテラン社員からのヒアリングです。

「うちの会社はどういうことをやってきたのか、どんな技術を持っているのか教わりました。ないものねだりではなく、今あるものを生かすために、“技術の棚卸し”をしたんです」

研究機関にも不可能と言われた木製ブロックを、なぜ製品化できたのか。それは、一企業としての技術の裏付けがあったからだけでなく、それを事業として応用できるという、経営者としての判断と確信があったからでしょう。

地域資源と、技術。そしてもうひとつ、桒原さんが信頼を置いていたのが「人材」です。

「山形県には、すごくコツコツと頑張れる人たちがたくさんいるんです。自分が前に出るというより、人を陰で支えるのが得意な人も多いかもしれないです。2012年、32歳で会社の代表になりましたが、そのおかげであまり苦労しませんでした。若いから、できなくて当たり前だと思ってくれたのでしょう。周りの人にたくさん助けてもらいました」

桒原さんは生まれも育ちも米沢市ですが、カナダに1年間住んだこともあるそうです。好きな場所は? と尋ねると、桒原さんからはこんな答えが返ってきました。

「自分の家の裏庭です。全部林なんですよ。秋に紅葉しているのを見るだけで、ああいいなと思いますね。カナダも同じような感じでした。山に囲まれていて、カエデの木が身近にあって…。そういうところが好きなんでしょうね。最近は、ずっと住みたいと思っていたところに今自分は住んでいるんだな、と思う瞬間があります」

桒原晃さん。32歳の若さで3代目社長に就任し、新事業を牽引してきた
もくロックの製造現場。ブロックを作るための機械も自社で開発した

インテリアの一部になる木製玩具を

一時は海外40か国にまで販路を伸ばしたもくロックですが、目下の課題は、「国内での認知度」だといいます。日本で売られている木製玩具のうち、日本の木で作られているものはほんの数パーセント。ほとんどが外国産です。コロナ禍で、家で過ごす時間が増えたことは追い風のように見えますが、実際には売上が落ち込んでいたそうです。

「日本はこれだけ自然が豊かなのに、海外製を買う人が多い。ブロック玩具としては、やっぱりLEGOなどの知名度が高く、まだ認知してもらえていないんだなあとあらためて感じました。我々は作ることは得意でも、売ることや伝えることに慣れていないんです。日本の木で遊ぶという気運が高まり、日本の木のおもちゃといえばもくロック、と言ってもらえるように、国内でのPRをがんばります。誰に対してもちゃんと伝えていく、ということを大事にしていきたいです」

公式販売サイトを新設し、インスタグラムなどSNSでの発信も強化しているという桒原さん。子どもにはもちろん、大人に対してもアプローチしていきたいそうです。

「木製玩具って、本当にいいものであれば大人も子供も関係なく遊べますよね。そういう視点から見ると、日本では子どもにしか遊べないものが圧倒的に多い気がします。大人が書斎の机の上に置いておきたくなるような上質の玩具も作っていきたいですね」

日本の木材を、もっと身近に。資源、技術、そして人の力で、その願いをかなえていきたいと桒原さんは語りました。

家族で楽しめる、もくロックを使った遊び体験
環境学習や自然体験を楽しむ親子連れ
環境学習やフィールドワークの場として活用されるもくロックの森

写真提供:(株)ニューテックシンセイ

もくロックはどこで買えるの?

もくロックは、ピースの大きさや数によって10種類以上の商品ラインナップがあります。 公式サイトやAmazonなどで購入可。インスタグラムでは、商品を販売している店舗や組み立て例なども紹介しています。

■もくロック公式販売サイト https://mokulock.com/?mode=f8
■もくロック Instagramm https://www.instagram.com/mokulock_jp/
■もくロック Facebook https://www.facebook.com/mokulock/
成見 智子

成見 智子ライター

東京都出身のジャーナリスト。農業と食を中心テーマに取材活動をしています。日本国内の畑や田んぼ、飲食店、直売所、加工所などを訪ね、生産者や作物の紹介、6次産業化、ローカルガストロノミーなどをリポート。農業には社会課題を解決できる糸口がたくさんあり、これからまだまだ伸びる業界です♡ 趣味は旅行、外遊び、ベランダ菜園、料理、読書。コロナをきっかけに、東京近郊の自然豊かな「トカイナカ」にも注目。地域の魅力ある人・コト・モノを発信しています。 tokainaka.jp

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