子育てママのお悩み解決メディア
子どもに食べさせる野菜を作りたい! 農業経験ゼロの夫婦が人気オーガニック農家に【マイエシカルでいこう。12】

子どもに食べさせる野菜を作りたい! 農業経験ゼロの夫婦が人気オーガニック農家に【マイエシカルでいこう。12】

第12回 友人の出産を機に就農。YouTubeも活用して栽培を学ぶ~オーガニック農家・花島綾乃さん・隼さん夫妻

花島綾乃&隼夫妻

「雨あがりでぬかるんでいますから、気をつけて!」
自宅のすぐ近くにある畑に、花島綾乃さん(28)は案内してくれました。松戸駅から東へ約6km。綾善ファームの畑は、マンションや一戸建てが建ち並ぶ住宅地の一画にあります。玉ねぎ、ニンニク、ニンジン、コマツナ、キャベツ、カーボロネロ(黒キャベツ)、ブロッコリー……。少量ずつ、たくさんの品目が育っていました。野菜はネット通販でセット販売するほか、自宅に設けた直売所でも販売しています(前回記事参照)。

花島家の自宅に設けられた直売所

調理を工夫して、毎日野菜たっぷりのメニュー

長男の威風ちゃん(3)、長女の美風ちゃん(2)の2児の子育てをしながら、夫の隼さん(37)と営農する綾乃さん。日中は子どもを保育園に預けて仕事をしていますが、この日は休園。美風ちゃんをおんぶして畑に入った綾乃さんは、ニンジンを収穫して見せてくれました。

「農家ですから、葉っぱをつけたまま売ります。じゃこ炒めとかチヂミ、かき揚げにするとおいしいし、ふりかけにしてもいいですね。ペットのウサギに食べさせているというお客様もいますよ」

結婚前から料理が好きだったという綾乃さんは、毎日の食事の他、パンやケーキも手づくりします。子どもが食べやすいように、調理法やレシピを毎日工夫しているそうです。

「長女は野菜が好きなんですけど、長男はあんまり食べないんです。ニンジンだとパンに入れて焼いたり、カレーとか餃子、ハンバーグに刻んで入れたりもします。レタスはチャーハンにすると喜んで食べてくれますね。カボチャはスープやポタージュで食べることが多いです」

大手レシピサイトにも野菜料理を中心に30以上のレシピを投稿し、インスタグラムにもこまめに投稿しています。フォロワーは1万人。作物が育っていく様子や、収穫した野菜、料理のアイデア、出品したマルシェの様子、お気に入りのネイル、家族のイベントなど、公私にわたり幅広い話題を発信しています。農業だけでなく子育て関連のハッシュタグもつけるので、農業に縁がないママたちも関心を寄せてくれるそうです。

「わたし自身が子育てをしているからだと思いますが、小さい子どもがいるママたちが注文してくれるようになりましたね。今までスーパーで野菜を買うのが当たり前だった人が、うちの野菜を使うようになって『子どもが本当においしいって言って食べてくれます』と言ってくれることもあります」

長女に語りかけながら畑仕事をする綾乃さん
ニンジンを収穫

友人の出産を機に、経験ゼロから始めた農業

実家は父の代まで3代続く農家でしたが、綾乃さんは家業を継ぐ気持ちはなく、高校卒業後は東京都内の飲食店でアルバイトをしていました。その気持ちが変わったのは、23歳の時です。

「友達が結婚して出産を控えていた時、『最初に子ども食べさせる野菜は無農薬がいいな』と言ったんです。安心して食べさせてあげられる野菜を、わたしが作ってあげられたらと思いました。高校1年の時に父は他界しましたが、畑は残っていました。10年くらい使っていなかったから、草がぼうぼうです。でも肥料分がほとんど抜けていたので、これなら有機栽培ができるかなと」

交際中だった隼さんは当時、不動産会社に勤めていましたが、綾乃さんの誘いで一緒に農業を始めることを決意。2人とも農業経験はほとんどありませんでしたが、独学で栽培を習得しました。本や研修だけでなく、YouTubeでプロ農家の動画を見て勉強することもよくあったそうです。

隼さんが収穫してきた野菜。野菜セットは松戸市のふるさと納税の返礼品にもなっている
雪化粧かぼちゃ

独学で学び、進化させた有機農業

自宅では、午前中の農作業を終えた隼さんが戻って出荷作業をしていました。トラックの荷台には、畑から収穫してきたばかりの大根やカブ、ホウレンソウ、コマツナ、ターサイなどが山と積まれています。

「最初は本当に難しかったですね」と、隼さんは就農当時を振り返ります。

「芽が出なかったり、長雨や日照り、寒さにやられて育たなかったり。土づくりも含め、思い通りになりませんでしたね」

失敗するたび、うまくいかない理由を考え、別の方法や作物を試してきました。だんだんとデータが蓄積され、雑草や害虫の被害を少なくするノウハウや、無農薬でも育てやすい作物がわかってきたといいます。

「たとえば、コンパニオンプランツ(共生植物)の働きを利用するのも一つの知恵ですね。トマトとバジルなんかがそうですが、一緒に植えると成長を助けあったり害虫が減ったりすると言われています。土づくりでは、化学肥料の代わりに米ぬかや鶏糞を入れたり、肥料分になる麦などを育てて緑肥として土に鋤きこんだりしています。年に数回は土壌診断もしていますよ。今はあまり大きなトラブルもなく野菜が育ってくれていますね」

収穫後はガレージで 出荷作業。美風ちゃんも、両親のすぐそばでお手伝い?

お金には代えられない価値が生まれる

最初は20アールというごく狭い作付け面積から始めましたが、農業を始めて5年ほどで1.4ヘクタールまで増えました。自宅から少し離れた場所にも畑を借りています。そうなると、夫妻2人での手作業だけでは限界が出てきます。機械を買う予算もありませんが、多くの人の力を借りながら営農が成り立っていると、綾乃さんは言います。

「関西地方の農家さんが、使わない耕運機を譲ってくれることになりました。車を運転して、自分たちで取りに行ったんですよ。収穫作業など人手が必要な時は、援農ボランティアさんがたくさん来てくれます。昨年12月にも、サトイモの収穫がありました。掘り取り器を持っていないから、うちは全部手掘り。人数が必要なので、みなさんにLINEを送ったら、直前のお願いにもかかわらず、集まってくれました」

住宅地の中にある綾善ファームの畑

綾善ファームの野菜を買って農業に興味を持ち、援農ボランティアになる人もいて、多い時は10人以上集まるそうです。「お金じゃ買えない農家」というのが、ファームのコンセプト。それは、農業を通じて綾乃さんが日々感じていることでもあります。

「お金と引き換えに何を得るか、というのは仕事や人生における大事なポイントですよね。生きていくうえで経済力は大切ですが、自分たちで食べ物を作るようになり、子育てをとおして今までとは違う人たちと付き合うようになって、お金には代えられないものがあると感じるようになりました。周りの人の心遣いとか優しさ、お客様からかけてもらう温かい声などに支えられて自分は農業をしているんだなと思っています」

配送用の野菜セットの箱に、綾乃さんは商品を丁寧に詰めていきます。Sサイズは4~6品、Mサイズは8~19品、Lサイズは10~12品。その上に、野菜の名前と説明、調理法を書いた「本日のお野菜メニュー」とレシピを乗せます。たとえ直接顔を合わせなくても、消費者とのリアルなつながりをたいせつにしてきた綾乃さん。1つ1つの箱にお礼の言葉と一言メッセージを書き込み、封をしました。

配送用の野菜セットの箱に は「お野菜メニュー」を添付
ふたの裏にも箱の表にもメッセージを書いて送る
綾善ファーム
直売所:千葉県松戸市五香西5-3-3
ウェブサイト:https://www.h-ayazen.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ayazen05/?hl=ja
Facebook:https://www.facebook.com/ayazen.h
「ポケットマルシェ」「食べチョク」などの産直サイトでも野菜セットを販売中。
成見 智子

成見 智子ライター

東京都出身のジャーナリスト。農業と食を中心テーマに取材活動をしています。日本国内の畑や田んぼ、飲食店、直売所、加工所などを訪ね、生産者や作物の紹介、6次産業化、ローカルガストロノミーなどをリポート。農業には社会課題を解決できる糸口がたくさんあり、これからまだまだ伸びる業界です♡ 趣味は旅行、外遊び、ベランダ菜園、料理、読書。コロナをきっかけに、東京近郊の自然豊かな「トカイナカ」にも注目。地域の魅力ある人・コト・モノを発信しています。 tokainaka.jp

成見 智子さんの記事一覧 →