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人気急騰! ザンビアのオーガニックバナナから生まれた「バナナペーパー」【マイエシカルでいこう。 13】

人気急騰! ザンビアのオーガニックバナナから生まれた「バナナペーパー」【マイエシカルでいこう。 13】

オーガニックバナナを収穫するザンビアの農家。提供:山櫻

第13回 フェアトレードペーパーで、途上国の人々の生活と自立を支援~株式会社山櫻

その紙は、ベージュがかった地色で、茶色い細かな繊維が混じっていました。見かけの印象とは違い、指で触れてみると、さらっとしていてなめらかな感触。株式会社山櫻(東京都中央区)が製造販売するバナナペーパーです。

商品名は「ワンプラネット・ペーパー(R)」。持続可能なものづくりをめざす印刷会社や紙製品メーカー等28社が加盟する「ワンプラネット・ペーパー協議会」が主幹となり、普及を図っています。紙製品事業を主力とする山櫻も、その一員としてバナナペーパー事業を展開。名刺や封筒、カード、はがき、包装紙、賞状など、自社製品の多くにこの紙を使っています。

バナナペーパーの包装紙。提供:山櫻

適正価格で買い取り、バナナ農家を支援する

バナナペーパーの原料は、アフリカのザンビアで栽培されているオーガニックバナナの茎。現地で運営する工場で、茎から繊維を取り出して乾燥させ、日本の和紙工場で製紙しています。原料の栽培・調達・加工、そして製紙にいたるまでの各過程で、複数の社会課題解決に貢献するエシカルな紙として注目されていますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。同社マーケティング部マーケティンググループの岡田綾子さんが教えてくれました。

「バナナは多年草で、繰り返し実をつけます。ただ、1本の茎に1回しか実はつかないので、茎ごと切り落として収穫し、実を採ったあとの茎はすべて捨てられていました。この茎を紙の材料にすれば資源を有効活用できますし、茎は1年以内に再生します。材料は、地元の農家数軒と契約して仕入れます。持続可能な農法で栽培されていること、長時間労働や児童労働のない農場で生産されたものであることなど、一定の基準を満たす農家から買い取っています。バナナの実に加え、ごみとして廃棄していた茎も適正価格で販売することで、農家が収益を出せるよう支援しています」

紙の原料となるバナナの茎。提供:山櫻
工場では茎を細かく割いて乾燥させ、短くカットして日本へ送る。撮影:成見智子

命を守り、教育環境を整える役割を担う工場

バナナペーパーは2016年、紙業界では日本初となる国際フェアトレード認証(WFTO)を取得。「フェアトレード」とは、発展途上国で作られた原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、製品を作る人の健康と経済、環境保全、そして自立を支援する「公平な貿易」を実施する仕組みです。ザンビアは、国連が認定する「後発開発途上国」のひとつ。工場は多くの野生動物が生息する自然豊かな地域にありますが、同時にこの国の最貧困層が住むエリアでもあります。バナナペーパーは農家だけでなく、工場で働く人たちの生活改善にも貢献していると岡田さんは言います。

「安定した収入を得ることで、生活環境が良くなりますし、より多くの命が救われます。たとえば、ろうそくの灯りしかなかった家庭が、ソーラーランプを購入できるだけで変わるんです。以前は、ろうそくが倒れて家屋が全焼し、何人もの人が命を落とすことがよくありました。わたしも工場ができる前に現地に行きましたが、ザンビアではマラリアの蔓延が深刻で、当時は二度も三度もかかってしまっている人もいたんです。でも今は、マラリアを媒介する蚊に刺されないように蚊帳を買うこともできるし、たとえ発症してしまっても病院で診てもらえるようになりました」

工場は国立公園の近くに立地する。提供:山櫻

工場の広大な敷地には、朝食と昼食を無料で提供する食堂や、読み書き・計算・英語などを教えるセミナーハウスも併設されています。日本の技術で、塩分や不純物が混入しないように掘った井戸もあるそうです。この工場の存在自体が、約25人の従業員とその家族の生活向上に貢献できるよう作られているのです。

「井戸がなかった時は、遠く離れた川まで水汲みに行くためにお母さんが長時間いなかったり、子どもがそうした辛い仕事を担ったりすることもありました。今は時間的余裕ができ、家計も安定したおかげで、子どもを大学に行かせることができた、という話を聞くこともあります。うれしいですね」

子どもたちの健康や教育をめぐる環境も整ってきた。提供:山櫻

機械化で従業員の負担も軽減

山櫻がバナナの茎から繊維を取り出す試みを始めたのは、2012年頃からだといいます。当初は櫛のような道具を使って、手作業で茎を裂いていました。岡田さんも現地で体験したそうです。

「1時間もやると、もう腰と腕がバキバキになりますよ(笑)。それぐらい重労働でした」

どうすれば楽にできるか、いろいろな道具を使って工夫を続け、14年にクラウドファンディングなどを利用して工場が設立された時から少しずつ機械化が始まりました。エシカルやSDGsの気運の高まりとともに、近年バナナペーパーの需要は年々増加。工場の経営が軌道に乗るにつれて設備も徐々に充実し、従業員の負担は大幅に軽減されているそうです。

価格や品質、デザインだけでなく、どこで誰がどのようにつくった製品であるかもモノを選ぶ基準になりつつある時代。バナナペーパーは、工場の製造過程においてもさまざまな配慮がされていると、山櫻のマーケティンググループ・マネージャーの神田京輔さんは言います。

「ザンビアは電気事情があまり良くないので、自前の電源を整備する必要がありました。ソーラーパネルを設置し、100%グリーン電力でエネルギーを賄えるようになっています。機械の騒音による健康被害を防ぐため、従業員は防音ヘッドフォンを着けて作業します。バナナペーパーは今、生産が間に合わないほど需要が増えています。人や環境に配慮しながら生産性を上げられるような形で、設備を増強していきたいと思っています」

現場では徐々に機械化が進んでいる。提供:山櫻
需要増で従業員の労働環境が整い、楽しく健康に働ける。提供:山櫻

日本の伝統産業とのコラボレーション

ザンビアから送られてきたバナナ繊維は、越前和紙の製紙工場で古紙や森林認証パルプを加えて紙に加工されます。和紙は一般的な紙と比べると、高価なこともあって需要は減少していると話す神田さん。バナナペーパーの普及が、日本の伝統産業を守ることにつながればいいと願っています。

「コロナ禍の経費節減で、和紙の需要がさらに減ったと聞いています。その一方で、バナナペーパーの売上はかなり伸びてきていますので、委託先の工場からは『非常に助かっている』と言っていただいています」

山櫻では、用紙を選んで名刺を作成できるウェブサイト「TSUTAFU」を運営しています。たとえば名刺を100枚作る場合、バナナペーパーだと普通紙より数百円高くなります。その差を単なる数字で考えるか、環境・社会・地域へ配慮したエシカルなものづくりへの対価と考えるのかは、選ぶ人の意識次第です。

同社は業界他社に先駆け、1990年から再生紙を使った製品づくりに取り組んできました。バナナペーパー製品化のきっかけは、元NGO環境団体のリーダーでジャーナリストだったスウェーデン人のペオ・エクベリ氏からの提案だったといいます。エクベリ氏のアイデアに賛同した社長の市瀬豊和さんは、すぐに事業化を決断したそうです。

次回は、バナナペーパーに続いて製品化されたタンザニアコットンペーパーなど、同社のエシカルな取組と今後の展望について紹介します。

バナナペーパーで作った名刺サンプル。提供:山櫻
マーケティンググループの岡田さん(中央)、西井さん(左)、神田さんにお話をうかがいました。撮影:成見智子
山櫻ウェブサイト:https://www.yamazakura.co.jp/
名刺作成サイト「TSUTAFU」:
https://tsutafu.yamazakura.jp/shop/
紙製品販売サイト「SOREAL」:
https://www.yamazakura.jp/shop/
成見 智子

成見 智子ライター

東京都出身のジャーナリスト。農業と食を中心テーマに取材活動をしています。日本国内の畑や田んぼ、飲食店、直売所、加工所などを訪ね、生産者や作物の紹介、6次産業化、ローカルガストロノミーなどをリポート。農業には社会課題を解決できる糸口がたくさんあり、これからまだまだ伸びる業界です♡ 趣味は旅行、外遊び、ベランダ菜園、料理、読書。コロナをきっかけに、東京近郊の自然豊かな「トカイナカ」にも注目。地域の魅力ある人・コト・モノを発信しています。 tokainaka.jp

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