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企業も注目。タンザニアのオーガニックコットンペーパー【マイエシカルでいこう 14】

企業も注目。タンザニアのオーガニックコットンペーパー【マイエシカルでいこう 14】

第14回 環境、社会、地域に配慮した製品を作り、“脱炭素”をめざす~株式会社山櫻

綿花を収穫するタンザニアの農家

ナチュラルな白色で、優しい風合いと素材感がある一枚の名刺サンプル。右下には綿花をモチーフにしたかわいらしいロゴが印刷されていました。

「コットンペーパーです」

株式会社山櫻のマーケティング部の岡田綾子さんが教えてくれました。

「タンザニアのオーガニックコットンを使っています。エシカルな商品であることに加え、肌触りや質感が好評で、最近取り扱いが増えているんですよ」

タンザニアコットンペーパーで作った名刺 提供:山櫻

優しい肌触りと高級感が人気

前回記事で紹介したザンビアのバナナペーパーに続き、2018年に製品化されたコットンペーパー。スイスのREMEI社が中心となってオーガニックコットンを栽培する「bioRe PROJECT(ビオリプロジェクト)」との提携で生まれました。

きっかけは取引先企業からの要望からでした。マーケティング部の神田京輔さんは振り返ります。

「バナナペーパーには、素材そのものの色があります。ただ、企業イメージを表現するため、名刺はどうしても白い紙じゃないと、という場合もあります。そうしたニーズにも応えられるエシカルな素材として開発しました。コットンペーパーは、ヨーロッパでは高級紙として知られているんですよ」

バナナの繊維(右)とコットン。エシカルペーパーには素材そのものの色が生かされる 撮影:成見智子

捨てるところがないオーガニックコットン

ただ調べてみると、コットン栽培には大量の農薬が使われることが多いとわかりました。オーガニックの素材を入手できないかと探している時、取引先から紹介されたのが、オーガニックコットン100%の糸と原綿を輸入している商社です。山櫻はその商社をとおして「ビオリプロジェクト」に参入しました。

タンザニアもザンビアと同じく、国連が認定する「後発開発途上国」のひとつ。同プロジェクトは、農薬や化学肥料を使用しない有機栽培により、生産地の環境負荷や農家の健康被害の低減だけでなく、農家の自立支援や、児童労働の禁止、フェアトレードなど、包括的なアプローチで持続可能な農業をめざしています。山櫻が使用するのは「落ち綿」といって、衣料用に製糸をする過程で出る繊維の短い綿。コットンペーパーは落ち綿と森林認証パルプで生産されます。「ちょうどいい形で参入できた」と神田さんは言います。

「ちょっと使いにくい部分ですから、定期的に購入しているところは少なく、売れ残って廃棄することもあったようです。それを買い取れば無駄がなくなるし、お金になるので、産地の応援になると思います」

ビオリプロジェクトは、その全プロセスが第三者認証機関に検査・認証されている

企業社会も注目するエシカルペーパー

山櫻は1990年から、業界に先駆けて古紙を使った再生紙製品の販売をスタートし、その後も非木材紙、間伐材紙、国産材紙、森林認証紙(※)など、環境に配慮した素材を使った製品を開発してきました。そして近年は、バナナペーパーやタンザニアコットンペーパーのように、地球環境だけでなく、社会や地域にも配慮した原紙を積極的に使用し、製品化しています。

同社の紙製品は約4000アイテムありますが、2025年までには既製品の95%をエシカル対応製品とすることが目標だそうです。「選択してもエシカル、選択しなくてもエシカル」というスローガンがあると、神田さんは教えてくれました。

「消費者がエシカルに興味があってもなくても、当社を選んでいただいた時点でエシカルな製品を選んでいる、という状態を作ろうと。今はまだ40%弱ですが、100%に近づけることによって、環境や社会へ貢献できるのではないかと考えています」

これに関しては、すでに成功例があるそうです。

「当社の名刺を使っている取引先の大手メーカーさんが最近、SDGsへの取り組みを強化するために名刺を森林認証紙に変更したいと相談がありました。そこで営業担当が、『うちの紙はすでに森林認証になっていますよ』と言ったら、とても喜んでいただけました」

農家の自立支援やフェアトレードなど、包括的なアプローチにより栽培されるオーガニックコットン

めざすは「脱炭素経営」

山櫻は2019年から、太陽光などの再生可能エネルギーから発電されたグリーン電力を購入し、生産した製品を「グリーン電力紙」として販売。法人向け名刺のオンデマンド印刷でも、グリーン電力を使っています。将来的には、すべての業務をとおしてCO2排出をゼロにする「脱炭素経営」をめざしていると、神田さんは会社の展望を語りました。

「まだ業務で使う電力のごく一部で始めたばかりですし、本来は、お金で解決する前に自分たちの努力によってCO2排出を減らしていくべきだと考えています。今は、CO2削減の必要性を社員一人一人が理解し、各部署でそのために何をやるかを話し合っている準備段階。2030年までに達成しようということになっていますが、長いようで短いですね。最近はいろいろな企業から、『御社はどのようにCO2削減に取り組んでいますか』と聞かれるようになりました。その取組内容を参考に購買先を決める企業もあると思うので、脱炭素経営は営業面でも大切な要素になっていくと思います」

岡田さんの名刺裏面にはSDGsの17のゴールと、森林認証マークが印刷されていた 撮影:成見智子

「紙」で発信するメッセージ

30年以上前から幅広い視野を持って製品づくりを進めてきた山櫻の取り組みが、社会に理解され、歓迎されていることに岡田さんも手ごたえを感じています。

「人々の暮らしも、社会の繁栄も、地球環境も、すべてつながっているということが、SDGsの広がりによって理解されてきましたね。昔は『エコ』という言い方しかありませんでしたが、『エシカル』という言葉も普及しました。地球環境さえ守っていればいいという意識の人はだいぶ減ったのかなという感じがしますね」

2009年のリーマンショック以降、厳しいコスト削減を迫られた企業はこぞって名刺の単価を下げたそうです。けれど、3年ほど前からはバナナペーパーやオーガニックコットンペーパーなどのエシカル名刺を採用し、逆に単価を上げる企業も出てきているといいます。

名刺は単なるカードではなく、その組織や個人の世界観やメッセージを発信できるツールでもあります。これからは、デザインや色だけでなく、どこでどのように作られた紙を使っているのかも注目されるようになるかもしれません。

(注)

(※)森林認証紙…対象の森林が環境保全の点から適切で社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な管理を行っているかを第三者機関によって審査され、その認証を取得した製品のこと。

ウェブサイトでは月別のイベントカレンダーを掲載。インスタグラムではイベントの模様や、店舗や商品などを紹介しています。
山櫻ウェブサイト:https://www.yamazakura.co.jp/
個人向け名刺作成サイト「TSUTAFU」: https://tsutafu.yamazakura.jp/shop/
「TSUTAFU」インスタグラム:https://instagram.com/tsutafu?utm_medium=copy_link
紙製品販売サイト「SOREAL」:https://www.yamazakura.jp/shop/
成見 智子

成見 智子ライター

東京都出身のジャーナリスト。農業と食を中心テーマに取材活動をしています。日本国内の畑や田んぼ、飲食店、直売所、加工所などを訪ね、生産者や作物の紹介、6次産業化、ローカルガストロノミーなどをリポート。農業には社会課題を解決できる糸口がたくさんあり、これからまだまだ伸びる業界です♡ 趣味は旅行、外遊び、ベランダ菜園、料理、読書。コロナをきっかけに、東京近郊の自然豊かな「トカイナカ」にも注目。地域の魅力ある人・コト・モノを発信しています。 tokainaka.jp

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