
藤田あみいの「懺悔日記」・20 インターネットから得た余計な知識。どれも燃やして捨てたい【懺悔日記・20】
妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。
この連載は……
出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。
第20回 わかってないの?

2014年10月20日
人にとても親切にしてもらい、飛行機という難所を無事クリアして北海道に帰ってきた。
こんな落ち込んだ気分ははじめてだが。それでも父の顔を見たらなんだか元気がでてきたし、北海道ってやっぱでっかいどうだなと思った。
大地に抱かれる感じというか……なんか元気になってきた気がする。
そしていまさら人見知りと後追いをするてーたん。いまかーい!
慣れない場所だという感覚がでてきたのか。なんだ……するんじゃない……とひと安心。
でもどこかビクビクしながら娘に接している自分に気付く瞬間があり、落ち込む。
前みたいに天真爛漫に愛したいのだが、この不安はどこからやってくるのだろう。
インターネットをみると同じように発達の不安を抱えて悩んでいるママはたくさんいるようだ。
そういう人たちが集まれる場所があればいいのだが、なかなか口に出すのは勇気がいると思う。
2014年10月30日
てーたんはチョーだい、どうぞといいながら物の受け渡しができるようになり、渡すときにはしっかり「どうじょ」と言うようになった。
人が多いとすごく成長するのだな。
最近8秒くらい立ったり、木琴を叩いて喜んでこっち見て笑ったりと、すさまじい成長をみせている。
そして上記のように、私へのまとわりつきがすごい。
後追いが大変で大変でもういや……なんて声も見かけるが、私にとってみたら天にも昇るとはこのことよ、というくらいの嬉しさだ。
なぜだか一度生まれた不安が消えないままなのだが、日々成長していくわが子をみて、幸せってこういう感じだったな、と少しずつ何かを取り戻しつつある。
一方で心臓がどきどきしたり胸がざわつく瞬間もあるのだが、もう少ししたら普通に戻れるであろう……きっときっと。
今日はおばあちゃんの三味線の発表会……という名のお食事会についていった。
てーたんはお利口に座っていられたので私も本当にほっとした。
しかし、どこぞのばあさんの「はァ~どすこい」という掛け声に驚き、ギャン泣きであった。
2014年11月5日
昼におばあちゃんがてーたんをみててくれるというので、一人で近所のパスタ屋さんに食事に行った。
帰ってきても無反応なてーたん。私がいたのかどうかなぜ気にしない……!? なぜ!? 普通に遊んでいる……!?
もうそろそろいろんなことがわかっててもいい時期なのではないか、とか色々考えてしまってまたブルーな気持ちに。
しかし、寝る前にアイス食べてたら、てーたんがアイスを指さししていた。これが指さしなのかな!?
インターネットの見すぎで余計な知識をたくさんつけてしまったのだが、どれもこれも燃やして捨てたい。
近代技術で無くしたい箇所の知識だけ消せないものなのか?
知識というにはあまりにもお粗末だが……。文字面だけでみると、すべてあてはまるような気がしてしまう。苦しい。
何も考えないで目の前のわが子だけをただ愛でてあげたいのに、どうしてそれができなくなってしまったのだろうか。
(次号に続く)
これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第6回「お腹の中でお星様になった子のこと」
第7回「どーでもいい細かいことがいちいち気になってしまう」
第15回「知らないおばさんに「子どもは希望」と言われて、泣きそうになる」
第16回「自閉症。発達障害。検索結果が頭の中から消えてくれない」
第17回「ごめんね、ごめんね、どうしてこんな母親なんだろう」
第18回「障害や病気は医者が見つけるから、お母さんはこの子を可愛がってあげて」
第19回「強いお母さんになりたい。不安で震えが止まらない」
第20回「インターネットから得た余計な知識。どれも燃やして捨てたい」
第21回「これは母親の勘なのか、それとも私が異常なのか」
第22回「悲しいことにわたしは、娘を色々と試すようになっていた」
第23回「ただひたすらに「助けて助けて」と頭が悲鳴をあげていた」
第24回「この子に何か問題があってもいいじゃないか」
第25回「断乳した翌日、信じられないことが起きた」
「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい
イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。
「懺悔日記」読者へのメッセージ
妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい