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藤田あみいの「懺悔日記」・24この子に何か問題があってもいいじゃないか【懺悔日記・24】

2017.04.25

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第24回 鈴木さんありがとう

24

2014年12月13日

今日からまた三重に戻る。

久しぶりの東京の我が家はやはりなんとも言えなく心地よくて、そして自分がまともな人間に戻ったような気がした。

だけど、まだまだひとりでてーたんを見ていられる状態ではなかったため、お義母さんたちのところへ戻ることにしたのだった。

よく考えたらわたしを一人にしないということは、みんなわたしがてーたんに虐待をはたらくのでは?と思っていたのかもしれない。

誓ってそれはない。いまはとても苦しくて辛いが、この子を産まなければよかったとか、あやめてしまいたいなんて気持ちは微塵もない。

ただ可愛いのだ。可愛くて仕方がないのだ。

そして周りが見えなくなっている状態なのだと思う。こんなに大事な人が出来たことがないので、ほんとうにどう愛していいのやらわからないのである。

帰って早々、実は産後に同じ悩みを抱えていた人が近所にいるという話をお義母さんから聞いた。

わたしは早速その人に会いに行った。実家から徒歩五分ほどの家に住んでいる、鈴木さんという可愛らしい女の人だった。

5歳の女の子と、てーたんと数ヶ月差の女の子の二人を育てている。

わたしは鈴木さんに、自分が混乱していること、苦しんでいること、そんなことすべてを話した。

鈴木さんは、「実はわたしも一人目を産んだ時とてもおかしくなって、とても苦しかった」「毎日不安だらけでとても視野が狭く感じた」と打ち明けてくれた。

2014年12月17日 

鈴木さんは自分が出産をした病院の検診の時に、自分の状態を主治医に話したら、心が安定する漢方を出されたそうだ。

でも漢方がイマイチ効かず、いわゆる精神安定剤を処方してもらって、飲んでみたら30分で目の前がパアーっと明るくなって、すっかりなおっちゃった、と話してくれた。

藁にもすがる思いのわたしは、初対面の鈴木さんに懇願して、わたしもその病院に連れて行って欲しいと伝えた。

鈴木さんは子ども二人を本家に預けて、嫌な顔一つせずわたしを鈴鹿にあるその病院まで連れて行ってくれた。

待合室でもずっと隣に座って、話を聞いてくれた。

私たちは本当に昔からの友達のように、心を分かち合えていたように思う。(一方的にそう思っただけだが)

偶然にも鈴木さんと同じ先生にあたったらしく、話がスムーズにすすんだ。

処方されたのは、漢方と、授乳中にも飲める安定剤だった。

鈴木さんも診察室に入ってくれて、一緒に話をしてくれた。産後におかしくなるお母さんはとても多いという話を先生はしていた。

そうなのか…やはり多いのか…でもわたしほどに追い詰められてる人は他にもいるのだろうか?

もし自分がよくなったら、育児に不安を抱えている人を少しでも助けてあげたいなと感じた。

近くの薬局にて薬をもらった。もう真っ暗だった。本当に効くのだろうかと半信半疑であったが、鈴木さんに丁寧にお別れをいい、帰宅して薬を飲んだ。

そうしたらなんということか、30分後には元気なわたしに戻っていたのである。

何もかもが美しい世界だった。

こんなに効果があるものなのかと、お義母さんとお義父さんに伝えた。二人ともとてもびっくりして喜んでいた。

もちろん一番びっくりしていたのはわたしだ。そして娘も。

わたしは昔のように娘と遊べるようになっていた。

鈴木さんにLINEでたくさんの感謝を伝えた。連れて行ってくれてありがとう。大変なのに理解してくれてありがとう。本当に嬉しくて嬉しくて、このままなんでもできるような気になっていた。

なにより、娘。てーたんの可愛いこと可愛いこと。

この可愛らしさが常にそばにあったというのに、わたしはどういうわけか見えなくなっていた。

不安に押しつぶされて、何にも、見えなくなっていた。

この子に何か問題があってもいいじゃないか。何も怖くない。だいたい何かあったところで、わたしはこの子を愛している。とてもとても愛している。怖いことなど何もない。愛さえあれば何も怖くないのだ。

(次号に続く)

これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第15回「知らないおばさんに「子どもは希望」と言われて、泣きそうになる」
第16回「自閉症。発達障害。検索結果が頭の中から消えてくれない」
第17回「ごめんね、ごめんね、どうしてこんな母親なんだろう」
第18回「障害や病気は医者が見つけるから、お母さんはこの子を可愛がってあげて」
第19回「強いお母さんになりたい。不安で震えが止まらない」
第20回「インターネットから得た余計な知識。どれも燃やして捨てたい」
第21回「これは母親の勘なのか、それとも私が異常なのか」
第22回「悲しいことにわたしは、娘を色々と試すようになっていた」
第23回「ただひたすらに「助けて助けて」と頭が悲鳴をあげていた」
第24回「この子に何か問題があってもいいじゃないか」
第25回「断乳した翌日、信じられないことが起きた」
第26回「寒い寒い氷の町の丘の上にてーたんの保育園はあった」
第27回「昔は一人でいるのが大好きだったのに、今はとても不安でやりきれない」
第28回「育児ノイローゼというやつなのか? 本当に屈辱的で誰にも話したくない」
第29回「治療が必要なのは娘ではなく、100%お母さんの方だということになった」
第30回「私はこんなにめちゃくちゃな人間なのです、と泣けたらどんなに楽だろうか」
第31回「破壊へと道を進めているのは私そのもの。私だけが狂っている」
「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい

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