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藤田あみいの「懺悔日記」・35胸の奥から再びモヤモヤした黒いものが湧き上がってくる【懺悔日記・35】

2017.06.02

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第35回 てーたんの運動会

35

2015年9月19日

 
てーたんの保育園は小さいので、保育園の近所の小学校の体育館を貸してもらって運動会を催すようだ。

色々と当日までに練習を重ねてきたことは聞いていたが、まだまだ2歳前の小さい女の子だ。本番になってうまくできないこともあるだろう。

どんな風になっていたっていい、今日の日のてーたんをただ見ていたい。あわよくば、練習の成果を発揮できればいいね…。という気持ちで見に行った。

同じクラスのみんなと、先生が作ってくれたアヒルのお洋服を着てかわいらしいダンスを見せてくれた。かけっこも、遅いけれど一所懸命に取り組んでいた。

お友達との関わりの中で成長した娘の姿を見て、誇らしい気持ちでいっぱいになった。

運動会は午前中で終わり、午後は爆睡のてーたんであった。

相当疲れたんだと思う。だいぶ長いお昼寝をしていた。親は運動会のビデオを見ながら、余韻に浸る1日となった。

2015年10月15日 

てーたんの保育園にはWEBカメラというのがついていて、パスワードを知っている保護者であれば園内の様子を見ることができる。

今日は私の母が休みだったため、それを見ながら時間をつぶしていたようだ。

私を再び奈落の底に落としたのは、母の「今日てーたんは、自分で並べてた積み木をお友だちに壊されて泣いていた」という一言だった。

並べていた…壊されて…泣いた…なんら不思議のないことなのだが、その時、私の思考は完全に不安定な方向に流れていた。

積み木を並べる「こだわり」を友達に「壊された」から泣いたのでは? 胸の奥から再びモヤモヤした黒いものが湧き上がってくる。

必死に抗おうとしたが、うまく処理することができず、真夜中には再び不安の渦に飲み込まれてしまった。最悪、再びだ。

2015年11月4日

またこんな不安な考えがでてきてしまった! もう二度と戻りたくないのに、自分でも止められない! 先生どうしたらいいのでしょうか? 何もかも不安です!

文字通り大泣きしながら先生に訴えた。

先生は「最近調子が良くなっていたから少し油断しちゃったね。薬ももう飲んでなかったんだよね? 次で卒業なんて言ってしまったから気持ちが焦ってしまったのもあるね、ごめんね」といった。

あなたの症状は良くなったり悪くなったりを繰り返して必ず治るものだから、と先生は慰めてくれた。

再び不安の海に落ちた私は、ここ数週間パニックのような状態が続いていた。

てーたんの行動を見ては全てに意味を求め、インターネットで検索をした。

本当はこんなこともう二度としたくなかった。自分の不安な気持ちを否定したいのに、なにかがそれを阻んでいて、調べないでいるととんでもない焦燥感に襲われる。

ささいなことがきっかけでこうも暗転するものか。不安の波に飲まれていく途中の自分が哀れでしょうがなかった。

薬は以前飲んでいたMAXの量に大増量してしまった。母の一言で再びこうなってしまったのは事実だが、こんな不吉な状況になるにはあまりにも小さい出来事すぎる。

母の一言がなくても、いずれはこうなっていたのかもしれない。

幸せな時間はたった3ヶ月で幕を閉じ、再び私は娘の存在が怖くなってしまっていた。最低、最悪の気分だ。

(次号に続く)

これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第30回「私はこんなにめちゃくちゃな人間なのです、と泣けたらどんなに楽だろうか」
第31回「破壊へと道を進めているのは私そのもの。私だけが狂っている」
第32回「恐れていた一歳半検診。ついにこの日が来た」
第33回「わたしが暗闇の中を彷徨ってる間に、この子はこんなに喋れるようになった」
第34回「ああ嬉しい。もうちょっとで普通のお母さんになれる」
第35回「胸の奥から再びモヤモヤした黒いものが湧き上がってくる」
第36回「娘に「ママいなくなってもいい?」と聞いてしまった」
第37回「頭の中は娘に関する心配事ばかり。身も心も憔悴しきってしまった」
第38回「体重が激減した。ご飯が喉を通らないのだ」
第39回「悩んでいたことが口からこぼれ、初めて会った人の前で泣いていた」
第40回「もう終わらせたかった。なにもかもを終わらせて、消えたかった」
第41回「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた」
第42回「元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている」
第43回「愛情という文字を見た瞬間に、わたしは大きな声を上げて泣いていた」
第44回「「自分を責める必要はない」というのはわかったが、やっぱり辛いのだ」
第45回「娘を見ているのがつらいなんて変だ。私は家を出ることにした」
第46回「布団に入っても、夫の言葉が頭の中を巡った」
第47回「自分に発達障害の可能性があるとは、夢にも思わなかった」
第48回「私が発達障害を抱えているとしても、何も変わらないのではないか」
第49回「私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ」
第50回「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい

「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい