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にほんご教室でクラスメイトと立場が逆転! そこから学べること【連載・ハワイとコトバ・2】
2017.10.05

にほんご教室でクラスメイトと立場が逆転! そこから学べること【連載・ハワイとコトバ・2】

新しい連載が始まりました!

「Hanakoママ」で連載「コドモのコトバ」をスタートした、心理言語学の専門家、広瀬友紀さんによる、ハワイ滞在レポート。8カ月間の在外研究で、現在、ハワイ大学に滞在中です。現地での暮らしのこと、小2の息子さんのこと、コトバの話を綴ります!


「にほんご教室」に通ってます。な、なんで?

アロハ〜 「ハワイとコトバ」第二回、今日は小2の息子の放課後についてお話します。ハワイの小学校のいわゆる「学童保育」事情も少しご紹介しますね。

ホノルルの公立小学校では、たいてい放課後はそのまま学校の敷地内で、学童保育を実施してくれています。

このプログラムはA+(エイ プラス)と呼ばれるもので、A+担当教員の他に、大学生など地元の青年たちがリーダーとして子どもたちを見守ってくれています。

そのほか、地域の教会等で提供されるアフタースクールプログラムもありますが、コータローが学童がわりに行っているのは、歩いてすぐのところにある、「Manoa Japanese Language School (MJLS) (マノア日本語学校)」。

「日本人学校」じゃなくて、日本語を教える学校です。

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3年生クラスの担任はMs. Nakamura 。かわいがっていただき感謝です。
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校長先生のMs. Oshiroです。彼女に限らず沖縄の苗字の方多いですね。日本語は少しだけ。昨日は、鬼のお面とおかめのお面を持って、ハロウィーンどっちにしようかしらと迷っておられました。

優等生になれる最初で最後のチャンス!? それもある!(笑)

放課後この学校には、日本語を全く知らない、そもそも日系でない子どもたち、それから、お父さんまたはお母さんは日本人なので家庭内で簡単なやりとりはするけれど、ふだんは英語を使って生活していて、年齢が上がるとともに複雑化する思考に日本語が徐々に追いつかなくなっていく傾向のある子どもたちが来ています。

後者のパターンはこのような環境では極めて自然なことなのですが、こうしたご家庭のママさんとお話すると、共通して気にかけておられるのが、子どもたちの日本語をどうキープするかという課題なんです。

特に、読み・書きは切実な問題。(このあたりの話題はまた改めて…)

しかし、日本で普通に小学生をやっていて、日本語できるにきまってんじゃん!というコータローをこの放課後プログラムに入れた訳は……?

日本ではいつもお勉強苦手だったけど、ここなら優等生になれる一生で一度のチャンスだから? それもある(笑)! でも、あえて「日本語を外国語として教わる」という体験を通して、気がついてほしいことがありました。今日はそれをお話します。

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なんと創立107年!

さてこのマノア日本語学校(MJLS)の創立はなんと1910年、明治時代に遡ります。

ハワイがアメリカの州とされるよりも前のことです。1800年代後半に日本からの多くの移民がハワイで生活を始めました。

その後、時代は彼らの子どもの世代に移り、この地に根付いてハワイの住民として活躍しながら、日本の文化や言語をこの先の世代にしっかり継承していく必要性が強く自覚され始めた頃なのでしょうね。

というわけでこの学校の教育コンテンツには、ところどころに少し、いやかなりレトロな香りが漂い、なんとも風情のある様子。

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午後2時半、学校が終わったら、子供達はMJLSのスタッフと一緒にまとまって小学校からMJLSに移動します(徒歩5分)。

学年ごとに分かれ、1時間日本語の授業を受け、それ以外の時間は自由です。

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敷地内に公文式、ダンス、武道の教室が間借りしているので、習い事にも便利です。

コータローは小学校では2年生ですが、さすがにただ一人日本から来た日本語母語話者ということで、ひとつ上の3年生のクラスに入ることになりました。

カタカナや簡単な漢字も書く練習をしているようで、これらはだいたい日本の小学校1年生くらいに相当します。で、案の定コータローときたら、先生にチヤホヤされることされること!

「日本語話せる子がクラスにいてくれると助かるわ〜!先生のこと手伝ってね!みんなにも教えてあげてね!」

んなもん日本から来たんだからできて当たり前なんですが、本人はまんざらでもありません。調子に乗って、自宅に来たお客さんにも「日本語を教えてあげる」とレクチャーを始める始末です。

日本語だって英語だって誰かにとっては外国語

思い起こせばノエラニ小学校の初日、クラスのみんなが自己紹介していくなか一人だけ何が起こっているかひとつもわからなかった(本人談)あの日。

午後そのままMJLSでも初日を迎えましたが、そこでは日本語で自己紹介。この様子は私も見学させていただけたのですが、多くの子、しかも上級生、がどうにもたどたどしい口調で、さっきまで生き生きリーダー格だった子もかなり苦戦しています。

中にはどうしていいかわからず固まる子も。

要するにコータローにとっては、立場が完全に逆転しているのです。それは彼にはどのように感じられたことでしょう。

さっき惨めな思いをさせられたぶん溜飲を下げた?生まれて初めてクラスで一番デキる子になって自分に自信が持てた? それもいいでしょう。

だけどそのうちきっと気づいてくれると思うのです。

「自分だけ日本から来たんだから当たり前じゃん…」そして「みんなは日本語で生活してないぶん、日本語はボクよりできないの当たり前じゃん!」….ん?ということは….

小学校で自分一人だけ英語がわからないのもこれと同じこと。

決して人として能力が劣っているからではない。使ったことのない言語、誰だって同じように苦労する。自分にとって英語がそうであるように、日本語だって誰かにとっては外国語。

このことは、これからも、自然に当たり前のこととして持っておいてもらいたい感覚なんです。

さて、その後もしばらくMJLSの授業を見学させていただいたのですが、我が息子、さてさてどれだけダントツ優等生でいられるかと思ったら、そこには壁が!

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「答えはわかるけど問い(英語)がわからない〜〜(笑)」あ〜それ盲点だったわ!ま〜とにかくガンバレ(笑笑)!

こちらも読んでね!
第1回「ハワイの公立校に入学。英語の壁はどうするの?」

【ハワイとコトバ】連載一覧

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広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小2男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

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子どもの言葉について考察! 広瀬先生の【コドモのコトバ】も連載中!