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先生おしえて「ば」からテンテンとったら「ぱ」!? 子どもにだけ見えている、日本語のルール【コドモのコトバ】

2017.12.07

気になってはいるけれど、実のところよく分かってない…。 そんなアレコレについて、ずばり教えてもらう「先生おしえて」のコーナー。

心理言語学の研究者、広瀬友紀さんによる子どもの言葉の話、前回に続き、「は」と「ば」、「ぱ」に関する話です。


その言い間違えには理由がある!
今月のテーマ /「ば」からテンテンとったらなんて言う?…「ぱ」(!?)

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前回の記事で、字を覚える前の子どもに、「テンテンつけたら何?」と尋ねたら、「た→だ」「さ→ざ」「か→が」は答えられるのに、「は」のテンテンだけ珍回答が続出するのはなぜ? という話題をとりあげました。

今回は「は」で表す音の特殊性をさらに掘り下げてみましょう。

テンテン有無のペアは、有声音と無声音のペア。発音の方法(口の中のどこをどう使うか)は共通しているはずなのですが、実は「は」行だけその関係が破綻していることを前回ご紹介しました。

「ば」は両唇をくっつけるけど、「は」は喉の奥のほうを空気が通る感じ、実際に発音してるとわかりますよね。「は」と「ば」は真の「テンテンありなしペア関係」にはないのです。

じゃあ、両唇をくっつける「ば」の本来のパートナーは? いるじゃないか、「ぱ」が!

実は、今の日本語でhと発音するものは、大昔はpだったということがわかっています。p-bが、(t-d、s-z、k-g 等と同様に)いわゆる清音・濁音(無声音・有声音)のペアだったのですね。

ピカピカという擬態語で表されるものは「ヒカリ」だし、ピヨピヨ鳴くのは「ヒヨコ」。昔は本当に「ピカリ」や「ピヨコ」だったのでしょう。長い歴史の中でpはhに取って代わられ、今では「半濁音(小さいマル)」という例外的な立場に。

だけど子どもは「テンテンがつくものとつかないものは何が違うのか」という規則を見いだし、「ば」の相方が「は」じゃおかしいですよね?ということを見抜いているのです。 

ならば、字を覚える前の子どもに「ば」からテンテンとったら何?って尋ねたら「ぱ」って答えるのでは!?

でも私自身はそれを確かめる機会を逸してしまったので残念、と思っていたら、『ちいさい言語学者の冒険』を読んでくださった複数の親御さんから、「本当にうちの子『ぱ』って答えました!」と報告が。

小さな子どもにだけ見えるもの、って座敷わらしだけじゃないんですねえ!

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広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小2男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

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広瀬先生のハワイ子連れ留学日記、【ハワイとコトバ】も連載中!

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