働くママのウェブマガジン

Mama子育てママを元気にするコラム&トピックス

メリークリスマスとメレカリキマカ……似てないじゃん?【連載・ハワイとコトバ・4】

2017.12.19

新しい連載が始まりました!

「Hanakoママ」で連載「コドモのコトバ」をスタートした、心理言語学の専門家、広瀬友紀さんによる、ハワイ滞在レポート。8カ月間の在外研究で、現在、ハワイ大学に滞在中です。現地での暮らしのこと、小2の息子さんのこと、コトバの話を綴ります!


ハワイ語でメリークリスマスってなんて言う?

IMG_4720

アロハー、そしてMele Kalikimaka!

東京の街はクリスマス気分も盛り上がっていることでしょう。うちの近所でもクリスマスイルミネーションを飾ったお家がちらほら見られます。

玄関のすぐ奥にで〜んとツリーを飾り、外からでも見えるようにドアを開けておく、なんてハワイならではのクリスマスの楽しみ方かもしれません。

先週は地元のクリスマスパレードに参加してきました。といっても沿道の人々にお菓子を配りながら歩くだけなんですけどね。しかしサンタさん役は暑そうでちょっと気の毒。

1
クリスマスパレードの準備。サンタ暑そう!

さて、冒頭のMele Kalikimakaとは、ハワイの言葉でMerry Christmas です。正確には、英語のMerry Christmas というフレーズをハワイ語に輸入したらこういう発音になったというものです。

というわけで、このクリスマスのご挨拶をきっかけに、今回は「ハワイ語」について、次回は「ハワイ・クレオール」にいついてお話します。

いわゆるハワイ語

「ハワイの言葉」というと、ハワイ語のこと?というのがまず思い浮かびますね。ハワイ諸島先住民の先祖代々の言語で、英語とも日本語とも全く異なる系統に属する言語です。

英語とともにハワイ州の公用語ですが、事実上は英語に席巻されており、現在ハワイ語は消滅危機にある言語と認識されています。

近年では、ハワイ語の学校や、また英語との二言語併用教育プログラムなどに行政や民間の力が積極的に注がれていて、こうしたハワイ語の言語文化を保存するための努力により、ハワイ語を話す人口は徐々に復活しているそうです。

ハワイ大学にはハワイ学を専門に研究する学術研究センターも設けられています。

4
ハワイ大学にあるハワイ学の拠点Kamakaūokalani Center for Hawaiian Studies(写真はKamakaūokalani Center for Hawaiian Studiesのwebsiteより転載)

Mele Kalikimaka…なんでこうなるの!?

さて、一体どうしてMerry Christmas がMele Kalikimakaになるのでしょう?

まず、ハワイ語には、「s」の音がありません。なので、英語など外来語の「s」は「k」として発音されます。Christmasに入っている「s」もすべて「k」に置き換わるのです。(最初の「k」については、「ch」の音は英語でも最初から「k」の発音)

次に、日本語と同じく、「r」と「l」の区別がありません。英語の「r」と「l」はどちらも「l」で発音されます。うーんちょっと親近感。

日本人としてさらに仲間意識がわくのは、「母音をぶっこむ!」ところ。子音が並んだり(christmasの最初のkrの部分や、その次の「s」と「m」の音が並ぶ部分)、子音で終わったり(christmas最後は「s」で終わっている)というのは英語ではOKですが、ハワイ語ではNGです。

母音(ここでは「a」)を片っ端から差し挟んでいます。日本語でも同様に、外来語としての英語由来の語は、ku ri su ma suというように母音の「u」をいちいち入れてますね(俗にいうカタカナ英語)。うん、ハワイ人とは気が合いそうだ!

ハワイ語の音は少ない!

ちなみにハワイ語の音の体系は、世界の言語の中でも、けっこう変わり者とされている点が多いです。

まず、音の種類がとても少ない! 母音は日本語と同じ、a,i,u,e,o の5つ。世界の言語の中では、どちらかというと少ない方です。そして、子音に至っては、たったの8つ(p, k, m, n, w, l, h, ʻ)、これは世界の言語の中でも特異的に少ないです。(最後の「ʻ」は、喉の奥をいちど閉鎖するという特殊な子音で、聴覚的にははっきり聞こえるものではないので、実際に感覚として聞こえる子音は7つ、とも言えるでしょう)。

しかも、ただ少ないだけでなく、「s」、 「t 」といった、どんな言語でも定番中の定番といえるような子音がないというのは極めて例外的なのです。

Merry Christmas とMele Kalikimaka…似てないじゃん!

だから、「s」が「k」に置き換わるって、「全然似てないじゃん!」と言いたくなるのですが、そもそも音のレパートリーが少なくて、代用する選択肢があまりないんだもん、というわけです。

ハワイ語の地名

観光でハワイに来てみても、巷でハワイ語が話されているという状況はなかなか体験できないとは思います。

だけど、ちょっと観光マップを広げるだけで、例えばなじみ深い通りの名前(有名なKamehamehaやKalakaua通り、ホノルルマラソンのゴールとしても知られるKapiolani公園など、かつての王族の名前にちなんでいるものが多い)を眺めながら、このちょっと不思議な、いや、むしろ日本人にとってはなんだか心地いいハワイ語の響きを想像してみることができます。

カタカナにしても違和感がないことうなずけますよね。それにしてもやたらに長いなあ。音のレパートリーが少ないから長くなるのかしら、なんていろいろ想像しながら、この記事で紹介した「ハワイ語にある音、ない音」を確かめてみるのも楽しいかも。

フラダンスは唄が主役

また、音声としてのハワイ語は、伝統的なフラダンスとともに唄われる唄の詞として聴く機会ならきっとあると思います。

文字を持たなかったハワイ人は、その昔、唄の形で祖先から伝わる伝統や伝説、そして神様へのメッセージを語り継いで来ました。あの美しいフラダンスの伴奏(添え物)として唄があるのでなく、もともと唄にのせたコトバが主役ということなのです。

6
(こちらもKamakaūokalani Center for Hawaiian Studiesのwebsiteより転載)

それでは改めて、皆様よいクリスマスをお過ごしください。Mele Kalikimaka!

3
近所のお家もハワイアン・クリスマス仕様

こちらも読んでね!
ハワイの公立校に入学。英語の壁はどうするの?
にほんご教室でクラスメイトと立場が逆転! そこから学べること
子どもの成長を感じた、今年のハロウィン

【ハワイとコトバ】連載一覧

prof2

広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小2男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

syoei


子どもの言葉について考察! 広瀬先生の【コドモのコトバ】も連載中!