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「暗記じゃない、論理的な思考を!」そこまでやるか?のワケ【連載・ハワイとコトバ・6】

2018.02.02

「Hanakoママ」で「コドモのコトバ」を連載中、心理言語学の専門家、広瀬友紀さんによる、ハワイ滞在レポート。8カ月間の在外研究で、現在、ハワイ大学に滞在中です。現地での暮らしのこと、小2の息子さんのこと、コトバの話を綴ります!


アロハ〜!「ハワイとコトバ」、前回まで「コトバ」の話が続きましたが、次はいよいよ、子どもの通う小学校についてお話します。

自立した思考者であれ…ハードル高いぞ!

コータローは2年生。先生から伝えられる目標は常に、”Have a Growth Mindset”というスローガン。「自分を成長させるための考え方をしよう!」というかんじでしょうか。

手書きで大きく教室に貼られているのは「例えばこんなふうに考えよう」という表です。

「これは私にはできない」と考える代わりに「何が足りないからだろうか?」と考えよう、「無理だ」と考える代わりに「学校でならったstrategies(方略)がここで役に立たないだろうか」と考えよう… そうそう、この“strategies”というのがどうやら教育のキーであるようです。この下の「宿題エピソード」でまた触れますね。

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“Having a Growth Mindset Can Be Easy”教室に貼られています。

教室にはその他にも「わからないことにぶつかったら、常に仮説を立て、それを新たな観察により検証していこう」なポスターが貼られていて… 小2にそれ求める?と思わないでもないですが、いやいや小2でもそれはできるんだよ、目指そうよ、と、はっきりした理想が示されています。

やっぱり出ました!「暗記じゃない、論理的な思考を!」

さて、「日本では暗記型学習が典型。欧米では論理思考を養う学習が主流」ってまことしやかによく言われますよね。実際どうなの? … いやあ、笑っちゃうほどその通りでした。

子どもの宿題を覗いてみると、「5+7の答えは何ですか。ではどうしてそれが答えなのか説明しなさい」…って、禅問答の世界かと思いましたよ。何かにつけて「意地でも暗記では対応させない!」という執念を感じます。

日本で教育を受けた身として素直な感想を言うと、「そ、そこまでやるか?」。

禅問答にはstrategies(方略)で

それで、「5+7の答えがどうしてそうなるか説明しなさい」って一体、どんな答えが期待されているのでしょう。そこで出てくるのが、教室に貼られたスローガンにもあった”xx strategy”(ナントカ作戦、方略、みたいなかんじ?)というコンセプトです。算数の考え方も、いくつかのstrategiesからできているというわけです。

例えば5+7の答えを説明するのに使うことが想定されているらしいのが、”Make 10 Strategy” (「まず10を作ろう作戦」→ 5にあと5を足せば10になる。7から5を使ったら残りは2だからそれを10に足す)もしくは”Double strategy”(「何かを2倍にしてみる作戦」→ 5のdoubleは10である。以下同文)。まあ10が5と5から出来ていることは結局覚えることになってるんですが、覚えることが直接ゴール(答え)なのでなく、あくまで思考のためのツールの一部というわけです。

こうした“strategies”という考え方を導入して、それをどこでどう使うかということを考えさせるのが狙いなんだな。でもやっぱ、「5+7は12になるってもう覚えたから」のほうが早いんじゃないの?って思ってしまいますけどね。

正直アメリカ人だって「やりすぎ」と思うこともあるらしい(笑)

そんな不謹慎な感想を持ってしまうのは私が日本人だから?いやいや、アメリカ人の子どもたちもあながちそう思わないわけではないようで…ネットにはこんな正直な爆笑回答がシェアされていました。

ネットでウケてるってことは大人だって共感してるわけですよねえ。

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設問「180と158の違いは何ですか。その答えをどうやって得たか説明しなさい」→ 解答「math(計算した)」(http://www.giveitlove.com/hilarious-kid-answers-to-test-questions/18/ より)
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設問「2+2の答えより6 多い数は何ですか。答えをどうやって得たか説明しなさい」→ 解答「考えたら答えが浮かんだ」(こちらも http://www.giveitlove.com/hilarious-kid-answers-to-test-questions/58/ より)

だけど、よく考えてみたら、「大げさだろ」と最初は思えた「ナントカ作戦」のひとつひとつって、実は私たちも本当は思考の過程で無意識に使っているものかもしれません。地味すぎて気づかないだけで。

だけどそれをあえて意識的に拾い上げて言語化する訓練は大切なことなんじゃないの?って問いかけられているような気もします。

直感でわかって当たり前、暗記したほうが明らかに早いだろうと思えることから、あえてわざわざ論理的に整理するという練習の結果が、いつか将来直感や暗記で手に負えない複雑な問題に出会ったときに発揮されるんだろうな、というふうにも思えました。

超簡単なことから道具立てを訓練するからこそ、問題が難しくなっても使える。だってそりゃ、高校生や大学生になってからはじめて「もっと論理的な思考をしなさい」っていきなり言われても困るわなあ。「ナントカ作戦」侮れないぞ!

それにしても「説明しなさい」なんて宿題を毎日出していたら、採点の負担もけっこうなものですよね(絶対「暴投」「斜め上」的な解答も多々あるだろうし)。先生ありがとうございます。

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「授業で習った”make 10 strategy”を、学校をお休みしたお友達にどうやっておしえてあげますか?」 という宿題。そういえば、欠席した同級生のためにノートを作ってあげるのって自分自身の理解にものすごく役立ったなあという経験を思い出しました。

えっ?九九も覚えない?大丈夫!?

というわけで、まさかのまさか、こちらの小学校では「九九を覚える」という単元自体が存在しないとききました。

九九の暗記は日本の低学年の算数におけるビッグイベントなんですが、それをやらないってどういうこと?そもそもかけ算は3年生以降らしいので、その概念がどのように導入され、どのような問題として問われるかは見る機会はないのですが、(暗記させないんだとしたら)さあどう出る?いったいどんなstrategiesで乗り切るのでしょう…うーん、気になる!?!?

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【ハワイとコトバ】連載一覧

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広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小2男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

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子どもの言葉について考察! 広瀬先生の【コドモのコトバ】も連載中!