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子どもが同じ言い間違いを何度もする理由【コドモのコトバ】

先生おしえて 子どもが同じ言い間違いを何度もする理由【コドモのコトバ】

気になってはいるけれど、実のところよく分かってない…。 そんなアレコレについて、ずばり教えてもらう「先生おしえて」のコーナー。

心理言語学の研究者、広瀬友紀さんによる子どもの言葉の話、今回は子どもの間違った言葉を正しく直しても、直らない、という話です。


その言い間違えには理由がある!
今月のテーマ /間違いを何度なおしてもなおりません

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子どもが間違った言葉の使い方をするのを聞いたら、大人として、正しい言い方になおしてあげるのが使命だと思いますよね。

「テベリじゃなくてテレビだよ」「き(来)ない、じゃなくて、こない、だよ」「死む、じゃなくて、死ぬ、だよ」。

その場では「うん♡」と可愛くうなずくくせに、次の瞬間全く同じ間違いを繰り返すんですよね。言語習得の研究での定説は、「肯定証拠からは学べても、否定証拠からは学ばない」です。

肯定証拠とは、ああいう表現があるんだ、この単語はああいうふうに使えるんだ、という事例に触れたり、自分の発した表現がちゃんと意図通りに受け取ってもらえたりする経験です。

一方、否定証拠とは、「その言い方はしない」という直接的な修正です。そもそも常に大人が横で逐一修正してくれると限らない時点で確実性は低いし、例えちゃんと教えても取り入れられない、というのは日本語に限らず極めて普通のことです。

平気で同じ「間違い」をするのは、反抗期でも躾の問題でもありません。言葉の決まりについて子ども自身で試行錯誤を繰り返し、いつかそのときがきたら「あれ、もしかしてこっちの言い方が正しいのかな?」と自分で発見しますので、放っておいて大丈夫。

うちの子も6歳くらいのとき、「誰々くん、僕に対して『死め』って言うんだよ」と言うなり、違和感あるなと思ったらしく、『死ね』と言い直しました。それまでずっと「死む、死まない、死め」だったのですが。貴重な瞬間を目撃できました。

より間接的な否定証拠として「こういう言い方はしないから、実際大人の発話にはでてこない」という事実もあげられます。

でも、「出てこない」事実を見いだすことは普通不可能ですよね。ならばどうして子どもは自力で、大人からの指導に頼らず正しい規則に迫ることができるのでしょう。

これ、言語習得研究の最大の謎、同時に最大の魅力なのです。

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広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小2男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

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