言うと途端にシャキーン! うちの子どもが遅刻しないワケ【連載・ハワイとコトバ・9】
「Hanakoママ」で「コドモのコトバ」を連載中、心理言語学の専門家、広瀬友紀さんによる、ハワイ滞在レポート。8カ月間の在外研究で、現在、ハワイ大学に滞在中です。現地での暮らしのこと、小2の息子さんのこと、コトバの話を綴ります!
アロハー! 日本は早くも桜が満開を迎えたそうですね。我々のハワイ生活も残りわずか。今回も引き続き子どもの通う小学校の様子をレポートします。
お送り渋滞・お迎え渋滞
息子コータローは家から歩いて数分のところにある公立小学校に通っています。一本道を歩いて数分なら、日本であれば子どもだけで登校するのが当たり前のように思えますが、アメリカでは保護者による学校への送り迎えは必須です。車社会なので、「朝のお送り渋滞」「午後のお迎え渋滞」なるものも発生するのがお悩みです。
小学校の駐車場は広く、送り迎えの時間帯は車の出入りが盛んなので、上級生の中には車の誘導のお手伝いをする係もいます。
そんなわけで朝の学校の敷地内は、付き添いの親たちでわさわさしています。朝送りに来るのはお父さんがけっこう多いですね。
ポリネシアの文化ではタトゥーを入れるのはごく自然なことなので、タンクトップ姿のお父さん方のタトゥー品評会みたいな光景もよく観られます(目の保養?)。
朝の登校でだいたい一緒になるのは、両足にところ狭しとポケモン(どんだけカジュアル!)のタトゥーを施したお父さんです。
学生も、教員も、公務員も、タトゥーしてる人普通なんですよ、とわざわざ書き記すのがむしろ恥ずかしくなるほどの「それがどうした?」感。
もしも遅刻したら…
8時に一回目のベル、8時5分に2回目のベルがなります。この2回目のベルが鳴り終わるまでに教室に入っていなければオフィシャルに遅刻。その場合は教室でなく、まず学校の事務室に出頭しなければなりません。事務室のスタッフに子どもが自分で遅れた理由を説明するのです。
事務室のスタッフはフンフンと真剣な顔をしてメモをとり(しばしば複数で)、所定の用紙に記入したうえで子どもに渡します。それがないと遅刻者は教室に入れないことになっているのです。
子どもは、伝えなければならない内容を全力で説明する、大人はそれに対等に耳を傾けてくれる、そして、遅刻の言い訳の内容の善し悪し判断は別としても、説明したという事実はちゃんと尊重してくれる、という体験を小さいころから積むのは大切だな、と感じます。
我が子もそのうち一度遅刻させてみたいものです 笑。
実際、コータローが朝の登校準備もせずにダラダラしているときは「じゃあ今日は遅刻だね。今から英語で何て説明するか練習しよ」と言うと途端にシャキーン!と身支度を始めます。そうか、そういう効用もあるのか。
説明・主張は日常の一部…
そもそも子どもたちも、普段身近に接しているわけではない大人に対して、事情や希望を説明することについてはかなり小さいときから経験値を積んでいます。
なので、ふだんのやりとりでも、まだ訊かれもしないうちから”Because…” と声を張り上げて「どうしてかっていうと、」の部分を一生懸命説明してくれます。
この子たち、「口答えするな!」とか言われたことないだろうなあ~。
おかげでコータローも、英語はまだまだおぼつかないながらも、Because…は連発してます。来て間もないころの”Because you is bad”(もちろんオカンを非難) は笑った。
Be independent
さて、「登下校時の保護者エスコートは必須」でありながら、教育観としては基本“Be independent!”ですから、学校の敷地内には見えない境界が存在するようです(少なくとも私の目には)。
問題は、さて親、どこで帰るか。
最初は知らずにのこのこ教室までついて行っていたのですが、先生からは微妙な「非歓迎オーラ」が。そのうち(さすがに空気読めたので)教室のある建物まで行ったら引き返すことにしましたが、甘えんぼ+慣れないアウェイ環境下のためか、しばらくは教室まで来て欲しいとだだをこねるコータロー。
だけどやがて友達を見つけるや否や、親を置いて走っていってしまうようになりました。しかも「いやあ、オレ一人で行けるんだけど、ママがついて来たがるんだよね~」的なその態度! まっいいか。
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【ハワイとコトバ】連載一覧
広瀬友紀
ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小2男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。
子どもの言葉について考察! 広瀬先生の【コドモのコトバ】も連載中!