
なにこの最高な状況!【連載・室木おすしの「娘へ。」】
この連載は……
イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。「娘への想い」を毎回アツく綴ります。
私、イラストレーターを主にしております、室木おすしと名乗る者です。
3歳の娘と1歳の双子の娘の父でして、今回こちらにコラムを書かせてもらうことになりました。
娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことに今の段階で恐れおののいておりまして、0歳のころから、何かするたび、ああ!今の瞬間を、娘の結婚式に思い出そう!と、結婚式の時に思い出す娘素材集を頭の中にコツコツと作っているのです。
この連載はその素材集の中から、よりすぐりの娘をチョイスして、せっかくなので娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りしようかと思っております。
どうぞみなさま祝福してください。
ああ…結婚式が始まる。
「川で飲んだ水」【第3通目】
先ほど二人がケーキカットしたケーキ是非食べてくださいね。
引き続きこんにちは新婦の父のさけるチーズさき造です。(適当に言ったボケがおもいっきり忌み言葉でだだ滑り)
続きを。

娘へ。
「今日はどこに行こうか? 公園? 川? 神社?」
2歳もある程度過ぎた頃、二人で外へ遊びに行った時にはよくこう聞いていましたね。
あなたはその時々の気分で、その三択に答えてくれました。
一番好きだったのは公園だったと思います。
でも私がわりと好きだったのは
「川」でした。
いろんな遊びに付き合わされる公園に対して、川の遊びは穏やかなものです。
まず川近くにある大きな丸いオブジェをぐるぐるとひたすら回っているあなたを10分ほど見守り、その後河川敷へ移動。
河川敷へ入る前に
私が「いきつけ」と呼んでいた自動販売機でペットボトルの水を一本買います。
ちなみにこういう無駄なペットボトルの買い方を妻はよく、もったいない!と言っておりましたが、私はやたら買っておりました。(会場の妻をちらりと見ると怒ったような小芝居をしていて笑いそうになる)
そうして川のヘリに二人で腰をかけると大きな空が目の前に広がりました。
すぐ前には川。左手に電車が通る高架がありまして、何分かに1本そこへ電車が通ります。ときおり魚が飛び跳ねて、向かいの自動車教習所からは聞き取れないほどの音量で何かしらのアナウンスが流れていました。
穏やかがのんべんだらりと広がっている。いつでもそんな環境でした。

そこへ娘と二人。
至福の時でした。
そしてしばらくするとあなたはこう言うのです。
「水飲みたい」と。
私はスマートに先ほど買ったペットボトルの蓋を外しあなたへ渡しますと、あなたは嬉しそうにただの水をごくごくと両手で飲みました。
そして目を細めて、私が大好きなくしゃっとした笑顔を見せてくるのです。

なにこの最高な状況!
と心の中で思ったものです。
今でも川を見ると、座って水を飲む二人の後ろ姿をわたしは見てしまいます。
あなたの笑顔を思い出してしまいます。
最高の思い出です。
ところで今では水を飲んでも全然笑ってくれませんね。
なんでなんですか。
あの頃の水のありがたさを思い出してください。
今度またいきつけで一杯どうでしょう。
奢らせてください。
【続く】
心の披露宴は心の雅叙園の中
まだまだつづく。

室木おすし
イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。