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男女、どちらでもない。「無理に分類されたくない」という性別【LGBT・トランスジェンダーを生きる・1】
2018.05.31

男女、どちらでもない。「無理に分類されたくない」という性別【LGBT・トランスジェンダーを生きる・1】

【集中連載】インタビュー/LGBT・トランスジェンダーを生きる・1

心理言語学の専門家、広瀬友紀さんによる集中連載。LGBT・トランスジェンダーをテーマに、5回にわたってお届けします。


こんにちは! 「おしえて先生」「ハワイとコトバ」などの連載を通じて自分自身Hanakoママの熱心な読者にもなりました広瀬友紀です。

このたびは、ハワイでの滞在中に縁あって仲良くなったハワイ大学大学院生(つい先日めでたく修士課程修了)のリンさんとの交流をとおして考えたこと・気づいたことを書かせていただくことになりました。


(リンさんについてはまずこちらの記事を読んでいただければと思います。https://hanakomama.jp/topics/47881/
Group of friends with painted hands against green spring background

男・女の二つの選択の中に縛られない性もある

同性愛者(レズビアン、ゲイ)の人たちに男女カップルと同様の権利をどう確保するかという問題は日本でも近年議論されるようになりました。加えて、生まれた時の性別と逆の方の性別として自分を認識する性同一性障害の人たちについても、昨今ドラマなどで取り上げられています。(ちなみに、こうした場合「男性となることを望み悩む女性、演じるのはフェミニンで華奢な女優さん」ってパターンがたいてい中心ですね、と学ラン姿の上戸彩ちゃんを思い浮かべながら書いています)。

一方リンさんは、数年前まで女性として生きてきたけれど今は違う、という人ですが、必ずしも「男になりたい」というのも違うみたい。男・女の二つの選択の中に縛られてない、そんな性別もあるのですね。

さてさてリンさんはハワイ大学で多くの仲間とともに充実した学生生活を送ってきましたが、同じように自分の生まれた時の性別を受け入れられずにいるという人たちは私たちの周囲にもきっといるはずです。

日本では彼らはまだまだ生きにくいところがあるかもしれません。生きにくいから公表しない人もいるでしょう。でも当事者でなければどういう思いや不便を抱えているのか知る機会も少ないし、かといってそんなプライベートなこと普通はいきなり聞けないものです。だけど私たちはお互いをもっとわかりたい、尊重したいと思ってるはずですよね。

幸い、リンさんは「何でもきいてくれていいよ」というタイプだったので、これを機会にド直球インタビューしてみました。それをこれから数回にわたってみなさんとシェアしたいと思います。

「女性が好きなFTX」という自分

Q: リンさんの中で自分はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー の頭文字)の中のどういう位置づけになりますか。

A: 「高校・大学の時はレズビアンでカミングアウトしてましたが、社会人になり、色んなLGBT+の人と関わっていくうちに、自分は『女性が好きな女性』とはちょっとずれてるって思いました。自分の女としての認識が薄かったせいか、『女だよね』って言われても『ん?』って反応しか出せなかった。あとからFTM (Female to Maleの略、 つまり女から男)、 MTF(Male to Femaleの略、つまり男から女)の他に、FTXっていうアイデンティティを知って、『コレの方がしっくりする』と思って、日本語では『女性が好きなFTX』として自分を位置づけてます。XっていうのはX—ジェンダーで、中性・両性・無性の意味が含まれてます。自分はこの中の中性かな? 英語だとnonbinary(ノンバイナリー)を使います。男・女の二つの選択の中に縛られてないって意味が近いのかな?」(リンさん)

……そうか、そもそも正解は二択ではなかったのだ。最近はSNSのプロフィール欄でも「男・女・カスタム(それ以外を選択)」など、万人にとっての性別の認識は二択とは限らないらしい、ということに気づかされる機会も増えています。学術論文でも、「調査対象、女何名、男何名」というような記述の部分、nonbinaryという言い方を目にすることが確かにあります。

日本社会で暮らしてきた我々のほとんどは、性別ってずっと男か女かの二択オンリーに決まっていると思ってきたでしょうから、どちらかわからないという事態に接するとつい「どちらかに正しく分類しないと、間違ったら失礼にあたる」と考えがちですよね。「無理に分類されたくない」という気持ちを持った人もいるのでした。

悪気はない、むしろ失礼のないようにしたいと思っているのに思惑がずれてしまうということは、人間同士ままあること。だけどできればもっとわかりたい。

そういうわけで、ド当事者と、ド非当事者の間でのぶっちゃけQ&A、これからも引き続きお届けしますね!

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広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小3男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

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子どもの言葉について考察! 広瀬先生の【コドモのコトバ】、連載中。
ハワイ大学に滞在中の、現地での暮らし、小学生の息子さんのこと、コトバの話を綴った【ハワイとコトバ】はこちらから