父親ってちょろいなと思いました【連載・室木おすしの「娘へ。」】
この連載は……
イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。
娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。
この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。
室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!
はじめての父親参観日【第6通目】
引き出物のカタログギフトは背表紙のカドがすごい硬いのでお気を付けください。
どうもこんにちは新婦の父をやっております室木おすしです。
続きの手紙を読みます。
娘へ。
3歳の頃、幼稚園で父親参観日がありましたね。
あいにくの雨でしたが、あなたと二人で幼稚園に向かったあの時のことを昨日のことのように覚えています。
教室へ入るとぐるーっとサークル状に並べられた椅子に、お父さん方が座っておりその足の上に子どもらが座っていました。
狭い教室におじさんがサークル状に並んでいる姿は、何か嫌な儀式でも始まるのかな?と思わせる圧迫感がありましたが、自分もその一端を担っていると承知していたのでその思いは心の奥深くに押し込めました。
ひとりひとりは普通でも、集まると微塵も爽やかでなくなるのは一体どういう理なんでしょう。
さて授業では、その日のために練習したのであろう、すてきなパパという歌を歌ってくれました。
とってもよかったのですが、パパと呼ばれたことがなかったもので、どうも感情移入出来ず、歌詞もどうも自分とは違うような内容だったので、しっくりこなかったのですが、一生懸命歌っているあなたを見ていたら簡単に涙が出てきたので、父親ってちょろいなと思いました。
その後、一緒に手形をとったり、肝油を食べたりしましたが、ほとんど何かの順番待ちをしているだけで終わったような気がします。
あっという間だった父親参観日でしたが、結局一番うれしかったのは、
参観日の前日、
明日はお父さんと幼稚園行くんだよ。
と教えてあげると
「え~楽ちみ~!」と
目を輝かせて言っていたことです。
胸の奥でジーンという音が聞こえてきたようでした。
私があなたの楽しみのひとつにあることが嬉しかったです。
そして一体いつまで私はあなたの楽しみでいられるのだろう? そんなことを思ったりもしました。
まだ楽しみですよね?
ねえ?
あれ?
【続く】
心の披露宴は心の雅叙園の中、心のカタログギフトを引き出物に、心のSuperfly聞きながら
まだまだつづく。
室木おすし
イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。