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先生おしえて「大坂城建てたのは? 大工さんで~す!」が、くだらなくないワケ【コドモのコトバ】

2018.08.08

気になってはいるけれど、実のところよく分かってない…。 そんなアレコレについて、ずばり教えてもらう「先生おしえて」のコーナー。

心理言語学の研究者、広瀬友紀さんによる子どもの言葉の話、今回は語用論についてです。


その言い間違えには理由がある!
「大坂城建てたのは? 大工さんで~す!」が、くだらなくないワケ

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大坂城を建てたのは? ……常識的な答えは「豊臣秀吉」です。

「大工さん」は、事実として間違ってないけれど、ここで求められている情報ではない、ですよね? 

言葉を実際に使ってやりとりするうえでの決まりごとを語用論といいます。前々回は、会話において通常は、その場の会話の内容に適切に関連があることを言おうとするはずだ、という了解が、聞き手と話し手の間で共有されていることをご紹介しました。そして、それに一見明らかに違反することによって、言外の意を効率的に伝えることができるということも。

さて「大坂城を建てた」というと、実際に石垣を積んだり柱を立てたりという建築作業に従事したという意味だけでなく、権力者が資金を出して建築を命じたという意味もあり、通常は後者の方が話題に関連しているはず。ここではそうした了解を逆手にとって、あえて関連のない方の意味を引っ張ってきているのがミソ。「大工さんで〜す!」って勝ち誇っている子は、語用論の決まりを操作して、思ったより高度なことをやっているんですよ。

 こうした語用論的な約束事に限らず、音の決まり、類似性、文法的な構造や語順……、そうした「ことばの決まり」を客観的に捉え、気づき、さらにイジり、遊んでみることのできる力のことをメタ言語能力・メタ言語知識といいます。

「ポコポコ」より「ボコボコ」、「ぺったり」より「べったり」のほうがダメージの程度が大きいことが伝わるけど何が共通している? でも「ホコホコ」「へったり」とは言わないのはなぜ? とか、大人はスルーしてしまうような「気づき」の機会が子ども達に訪れたら、大人もぜひ一緒にその不思議を共有してあげてください。また、まさにメタ言語能力を駆使した遊びが「しりとり」「だじゃれ」などの言葉遊びです。オヤジ予備軍、と嘆くことなくぜひつきあってあげてください。

この流れで次回は「しりとり」を話題にしたいと思います。

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広瀬友紀

ひろせ ゆき〇東京大学大学院総合文化研究科教授。
心理言語学、特に人間が言語を理解するしくみを研究。
2017年8月より8カ月間の在外研究で、ハワイ大学に滞在中。
小3男子の母。著作に『ちいさい言語学者の冒険-子どもに学ぶことばの秘密』(岩波書店)。

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