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大人の都合でしょうもない嘘をついたことも。月が見たいと言っていた娘へ【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2018.08.06

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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月が見たいと言っていた頃

昔からずっと思っていたんですけど引き出物を入れる紙袋って四角いですよね~
どうもこんにちは毎度新婦の父をやっております室木おすしです。
続きの手紙を読みます。

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娘へ。

先日夜空を見上げると綺麗に白く光った満月がありました。
綺麗だなと思うと同時にあなたの顔が浮かびました。

お父さんはいつも月を見るとあなたを思い出します。
小さい頃あなはたとても月が好きでした。

まだろくに喋れなかった頃からあなたは月を指差し、
「き…!き…!」
と言う熱心な月見幼児。

すこし大きくなってからは、
「今日はお月様出るかな」
などと、ちょっとした風流人のような振る舞いをみせ、こりゃあゆくゆくは文豪か、などと思っていたものです。

それだけ聞くと良き思い出、良き家族のように響くかもしれませんが、
現実ではそうそうそんな呑気なことも言っていられず、あなたが月を見たいと言っても、ベランダに出て空を見上げることすらままならない忙しい状態もよくありました。

「今日は月が出てるかなぁ」という問いに対し、
「出てないよ 昨日出過ぎたから」 などと大人の都合でしょうもない嘘をついたことも多々あります。

でもね。
少し経って後悔しました。

なんで、月が見たいと言ったら、言った分だけ見せてやれなかったのか。
ゲームを買ってと言っているわけじゃない。ケーキ食べたいと言ってるわけでもないのに。

ただ月が見たい。
そんな気持ちにさえ100%で応えられないなんて。ちょっとケチですよね。

大人はすぐ飽きます。
月の姿はだいたい想像したとおりです。
だから見たいと言われても、見る気が起きなかったのです。

でもその頃のあなたが思う月は 私の月とまったく違ったのかもしれない。
月を一回見るのが、ドラマの「仁」の1話分くらいの楽しさがあったかもしれない。

まわりを見ればたくさんの娯楽が溢れている中、
月が見たいという言葉は、なんて純朴な言葉だったのだろう。
思えば決して長くなかったその貴重な時間をもっと丁寧に扱えばよかった。
そう思うのです。

月を見ただけで喜ぶあなたと、また月が見たい。
十五夜の満月に願っても叶わぬ思いです。

なのであなたにもし、子どもができ、月が見たいとその子が言ったら、
できるかぎり一緒に見るといい思う。
それはなによりあなたの思い出になるでしょう。

そして、
「え~月~? めんどくせぇ~」という気持もぜひ味わってほしいのです。

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【続く】
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心の披露宴は心の雅叙園の中、要領の悪いホールスタッフのあたふたぶりを見ながら
まだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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