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液体ミルクを考える乳児用液体ミルクプロジェクト代表、末永恵理さんインタビュー・前編【特集・液体ミルクを考える・3】

2018.08.31

特集:液体ミルクを考える 

【液体ミルクVo.3】乳児用液体ミルクプロジェクト代表の末永恵理さんに聞きました

今月8日、乳児用液体ミルク(液体ミルク)の製造・販売がついに解禁となりました。

この動きの大きなきっかけを作ったと言えるのが「乳児用液体ミルクプロジェクト(一般社団法人 乳児用液体ミルク研究会)」の存在です。

その始まりは、ひとりのママの行動からでした。 このプロジェクトを立ち上げた、代表の末永恵理さんにお話をうかがいました!

きっかけは自身の大変さから

―――まず、そもそも乳児用液体ミルクを知ったきっかけというのは何ですか?

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(液体ミルクを飲む赤ちゃん:写真提供「乳児用液体ミルクプロジェクト」)

子どもが今4歳なので4年前の出産直前ですね。

臨月になると出歩けなくなるので、出産準備するものをネットなどで調べているなかで、調乳作業が実は大変で、回数が多いから負担も大きいというのを知って。その流れで「液体ミルク」というのが、海外にはあるけど日本にはまだないということを知りました。

生まれてみると、夜も昼も頻繁に飲む子で、ちょっと大変だったんです。母乳の出もはじめは良くなくて、ミルクをあげる大変さを実感しました。

そこから半年後、はじめの大変さがちょっと落ち着いてきた頃に「液体ミルクがあったら欲しいと思う人は自分以外にもたくさんいるんだろうな」と思って、オンラインの署名を始めました。以前の職場に海外で子育てした人が何人かいて、聞いてみると、液体ミルクを使っていた、便利だよ、という声もあったので、そんなに便利なら、という思いもありました。

―――末永さんのお子さんはすでにミルクの期間が終わっていたんですよね? それでも熱心に署名活動などをされた理由はなんでしょうか?

署名を始めた時はけっこう軽い気持ちで、 Facebookで自分の周りの100人くらいが署名してくれたら、ひとりでコールセンターとかに電話するよりは良いかなぁという……それくらいの気持ちだったんです。でも、実際には1か月で1万件くらい、ダーッと集まって。

「これは、ちょっとすごいぞ! 需要がすごくありそうだぞ!」と。

署名と一緒に書かれたコメントを読むと、自分以上にすごく大変な思いをしている人がたくさんいたし、液体ミルクのことを知らなかったけれど、よく考えたらなんで今までなかったんだろう、という声も多くて、これはぜひとも日本にもあった方が良いなと思いました。

始めた時点では、ずっと続けるというイメージはなかったのですが、コメントを読んだら「もう少しできるところまでやってみようかな」という気持ちになり、そこから活動を続けています。

乳児用液体ミルクプロジェクトの活動とは?

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(ママセミナーにて話をする末永恵理さん:写真提供「乳児用液体ミルクプロジェクト」 )

―――プロジェクトでは具体的にはどういった活動をされているのでしょうか?

主には署名活動と普及活動です。まだまだ液体ミルクって知られていないものなので、どういうものですか?と聞かれれば、伝えるという活動をしています。

あとは企業に行ってセミナーを行ったり、メーカーに作ってくださいとお願いにいくことも。ただ、メーカーさんに作ってくださいとお願いするだけではメーカー側も動きづらいということもあるので、行政にお願いする活動も多いです。

なぜこれまで日本に液体ミルクがなかったかというと、法律がなかったからというのが大きいんです。なので「法律を作ってください! そうすればメーカーさんが動きやすくなります!」という、いわゆるロビー活動などもしています。政治家さんや行政にお話を聞きに行ったり、お願いしに行ったりという活動です。

―――それまでのメーカー側、行政の動きはどうだったのでしょうか。

2009年にメーカー側から国に、製造のための許可、法改正を頼みに行っています。中越地震の影響が大きかったようですが、災害時には液体ミルクがあった方が良いという思いと、法律がないと商品を作れないからまずは法律を作って欲しいということを行政にお願いしたそうです。

そうすると、行政はメーカーに「まずはサンプルを持ってきて欲しい」と。

メーカー側としては、いつ販売できるかもわからず、需要もわからない液体ミルクのサンプル作りに労力や資金をかけるのをためらっていた……ということで時間がかかっていたと思います。

署名が4万件に! いざ、ミルクメーカーへ!

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(雪印ビーンスタークを訪問:写真提供「乳児用液体ミルクプロジェクト」)

―――今では4万2,675人分の署名が集まっているそうですね(2018年7月9日現在)。署名が4万件を超えた頃に、ミルクメーカーさんに署名を提出されました。その後、メーカーさん側で販売に向けて進展はあるのでしょうか。

実際に欲しいという声も署名でたくさん集まりましたし、法律の方も、2016年に初めて政府の会議で液体ミルクのことが取り上げられてから、意外なくらいのスピードで話が進み出しました。メーカー各社も技術的な研究はどんどん進めているようです。

ただ、作るのも売るのも、在庫を抱えるのも結局はメーカーさん側……となると、原価がいくらになるか、どれだけ売れば良いか、1日どれくらい需要があるかなど、研究とはまた違った、ビジネス上の問題も出てきます。それで、発売などについては各社ともなかなか明言はされていないようです。

一歩ずつ販売へ向けて

そして、こちらのインタビューのあと、8月8日に乳児用液体ミルクが国内で製造・販売することが可能になりました。さらに、メーカー側の動きが注目されるところです。

―――メーカーさんの動きはいかがでしょうか?

各社の研究が進むなかでも、さまざまな問題が出ているようです。

たとえば、液体ミルクは高温で滅菌をして進めるので、その関係で粉ミルクを作る時よりも色味がどうしても茶色くなるんですね。液体ミルクが茶色くなるのは、ミルクの中の糖分がキャラメルを作るときのように熱を加えることで変化すること、また鉄分を加えていることから、で悪いことではない。でも、ミルクは白いもの、というイメージを持つ日本人の消費者に拒否感が強いんじゃないかな?というメーカー側の懸念があるようです。

これを真っ白にするにはまたひと段階上の技術がいるらしく、さらに時間がかかってしまいます。

これはイメージの問題なので、報道などで、茶色がかった色でも安全だということを伝えて、消費者の感覚が変わればと思います。

また、賞味期限の問題もあります。災害用に備蓄をするためにも、できるだけ賞味期限は長めに設定したいところですが、そのためには賞味期限の1.3倍〜1.5倍ほどの間、いろんな状況下で保存試験をして、それでも大丈夫だということを確認した上で販売をしなければいけないので、そういう意味でも、まだしばらく時間がかかる、ということがあると思います。海外のものは、短いと5か月くらい、長いと1年くらいの賞味期限のものが多いのですが、メーカー団体によると、日本で作るとしたら半年から9か月くらいになるのかなということでした。

―――そうするとまだ1年以上は時間がかかりそうですね。 

海外製品はすぐにでも販売される?

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―――法整備が完了すれば、海外のものはすぐに輸入販売することが可能なんでしょうか。

今の法整備は製造をどうすれば市場に出して良いものになるかということなんです。

海外のものも、輸入するとしたら輸入者が製造責任を負うかたちになるので、日本の法律と同じかたちでつくられていれば輸入は可能になりますが、実際は難しいと思います。

ほかにも輸入だと国内生産よりもハードルが上がる可能性があって。その理由のひとつがまず関税の問題で、すごく値段が高くなることです。

もうひとつは、海外の人工乳の基準と日本の人工乳の基準が違うことです。海外の方が必須成分が多く、国際的に決められているものと比べて日本は必須成分が少なくなっています。

―――どちらかの基準が厳しいということですか?

日本の赤ちゃんと海外の赤ちゃんの不足する栄養分が違うためです。
例えば海外の赤ちゃんは母乳に微量に含まれるミネラルが不足する可能性が高いようで、海外のミルクにはミネラルが栄養分として入っています。

日本の法律上、栄養分も添加物として登録しないといけなくて、海外のミルクに入っている栄養分が日本で登録されていない場合、新たに登録が必要になるので、解禁になったからといって輸入品がすぐに販売されるというわけにはいかない理由はその点にあります。

被災地に液体ミルクを!

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(写真提供「乳児用液体ミルクプロジェクト」)

―――都知事の小池さんをはじめ議員さん方にも液体ミルクに関心が高い方は多くいらっしゃいますね。

そうですね。新潟が地元の金子めぐみ元議員はお子様も小さいことや、中越地震などで当事者としても関心が高いとおっしゃっていました。法整備の部分でもすごく動いて進めてくださいました。 また、金子議員の後に自民党の議員勉強会を引き継いでくれたのが、自見はなこ参議院議員です。小児科のお医者さまでもあり、赤ちゃんの健康面や防災の面からも重要性を訴えてくれています。野田聖子大臣も当初から関心を寄せてくださり、呼びかけ人を務めてくれています。

―――東京都とイオンからは「災害時における物資の調達支援協力に関する協定(※)」についても発表されましたね。
※東京都とイオンは、災害時に都の要請でイオンが被災者らに乳児用液体ミルクなどを海外から調達して送るという仕組みをつくりました。先日の西日本豪雨でもさっそく機能し、液体ミルクが岡山県に送られました。

法整備がされて発売までに1年半くらい空白期間ができるために、法律的には使っても良いのに液体ミルクそのものがないという状況が生じてしまうので、その間に災害などがあった場合にも海外からすぐに持って来ることができるように、イオンと東京都の協定が結ばれたようです。

将来的には日本のメーカーさんだけではなくて、海外の液体ミルクも店頭で並ぶようになれば良いなと思います。

―――今回イオンさんに問い合わせたところ、「この提携での海外メーカーはまだ未定ですが、将来的に販売が始まったら各メーカーとのやりとりも国内外問わず考えています(2018年6月現在)」とのことでした。

頑張って欲しいですね。やっぱり液体ミルクって赤ちゃんが飲むものなので、災害時にいきなりいつもと違うものを飲ませようと思っても、赤ちゃんもお母さんも戸惑ってしまうと思います。

普段から使いたいときに使えて、かつ災害時にも役立つという環境が一番だなと思いますね。

お母さんのお出かけを楽しいものに!

―――災害時に役立つというのが印象的ですが、やはり皆さんの声もそうでしょうか。

災害時に使いたいという声はたくさんあってもちろんなのですが、お出かけのときや夜中の授乳、預ける際にも使いたいという声がとても多いんです。

―――枕元に置いておくだけで安心感もありますね。パパやおじいちゃんおばあちゃんに預けるときにも便利で安心ですね。

そうですね。誰かにお任せするときは調乳などに関してはとくに心配な部分が強いと思います。

ほかにも、粉ミルクだと作ってからあげるまでに時間がかかりますよね。特に生まれて3か月くらいまでは本当に大変だと思うので、「その間は液体ミルクをあげる!」と決めてしまえば、調乳にかかるその10分をお世話の時間にあてられたり、体力温存になったりしますよね。

―――粉ミルクだと外出にもたくさんの荷物が必要になったりも。
ポットを持って、哺乳ビンや湯冷ましを持って、粉ミルクを小分けして……。 荷物が多くなってしまうのが大変という声もアンケートでは多くありました。お母さんになってお出かけが苦痛になってしまうのは悲しいですよね。

災害時はもちろん、ママ以外が簡単にミルクをあげられるということでも便利な液体ミルク。プロジェクトやメーカー、行政の動きで、製造販売への大きく動きはじめたようです。
今後、末永さんの活動が目指すところは? 続きは次回に。

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文・写真/木村一実
Hanakoママ

Hanakoママ (はなこ・まま)編集部

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