
お父たんには、おもちろい手紙を書いちゃうよ!【連載・室木おすしの「娘へ。」】
この連載は……
イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。
娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。
この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。
室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!
あなたからのお手紙

娘へ。
あなたが初めて私にお手紙を読んだ時のことを話したいと思います。
あなたが3歳の頃。
季節で言うと秋の始まりのことでした。
その頃は夜9時が就寝時間で、その時間になると電気を消して皆で布団に入りました。
お話が大好きなあなたは、暗い部屋で何やらお話をしていることがしょっちゅうでしたが、ある日あなたはお母さんにお手紙を読むと言いだしたのです。
あなたはその場で考えたお手紙を読み上げました。
たしか
「お母ちゃんへ お母ちゃん大好きだよ。いつも遊んでくれてありがとう。」
というような内容でした。
私はとなりで、その手紙をとても羨ましい気持ちで聞いていたのです。
次の日の夜です。
いつもの時間に布団の中に入ったあなたに、妻が
「今日はお父さんにお手紙を読んであげたら」
と素晴らしいアシストをしてくれました。なんと素晴らしい妻なのだろうと、改めて妻を尊敬したのはいうまでもありません。
あなたは「いいよ」と答え、
私はワクワクの中、あなたの手紙を待ちました。
するとあなたはこう言いました。
「お父たんには、おもちろい手紙を書いちゃうよ」と。
おもちろい手紙? 私の期待はさらに高まりました。
なんだか素敵な響きです。
「お、お、お、お父…プハハハハ」
娘は出だしから笑っています。
どうやらこれから読む自分の手紙が面白すぎて、すでに笑いがこみ上げてしまっているようです。

「お父アハハハ お父ププププ、」
なんだなんだ、どんだけ面白い手紙なんだ。
「お父さんへ 遊んで ンププププアハハハハ!」
笑ってしまって全然内容が見えてきません。
「じゃあ、いくよ…」
読む合図はいらないから早く読んでくれ。
「おもちろいよ…」
いいのかそんなハードルを上げて。
「お、お父さんへ あ、ププ…遊んでくれてありがとう…」
めちゃくちゃ普通の内容じゃないか。と思いきや、
「ブー」
なんと最後にオナラの真似をしてきたのです。
その後、あなたは大爆笑していました。私も釣られて思いっきり笑ってしまいました。
最後にオナラを言おうとしていたあなたは、それを想像して笑いをこらえきれなかったのでした。
私は笑いながら、私への手紙の部分は、最後のオナラを言いたいだけのフリに過ぎなかったことに気づきました。
それでもなんだか、そのこと自体が面白い良い思い出となり、私の頭の引き出しには常にそのお手紙が、
当時大好きだったうさぎのキャラクターの絵が書かれた封筒の中にしまってあるのです。
こうやって、あなたはいつだって私をとても楽しませてくれました。
私からも手紙を読ませてください。
「○○ちゃんへ ずっとありがとう。
結婚おめでとう。
…ブー。」
…ちょっと臭い話でしたかね。(笑いがあふれる会場)
【続く】
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心の披露宴は心の雅叙園の中、席次表の座る位置でその人たちの関係性を勝手に予想しながら、
まだまだつづく。

室木おすし
イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。