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遺伝子の総合力を活用してお子さんに接する。それが「最強の育児」に【小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て・2】

2018.11.12

話題の書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』を
ウェブで一部公開します!

発売1か月で早くも3刷の書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』が話題です。著者は、慶應義塾大学医学部小児科で医師、教授として活躍され、日本小児学会の会長も務める高橋孝雄先生です。

Hanakoママウェブでは、この書籍の出版を記念して、本の一部をウェブで公開することになりました。

子どもとお母さんの「代弁者」である高橋先生の言葉は、きっと子育てに迷いを感じたときに、寄り添ってくれるものになるはず。遺伝子が持つ神秘的なエピソードは、子育てにプレッシャーを感じているママの気持ちを軽くしてくれそうです。

高橋先生のインタビューはこちら:https://hanakomama.jp/topics/58740/


(書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』 第一章より)

遺伝子は変わらないけれど、進化のための「余白」はあります。

happy baby learning to walk with mother help

遺伝子のもっとも重要な仕事とはなんでしょう。それは「変わらないこと」「長く維持すること」。人類の歴史を何億年もさかのぼってみても、遺伝子そのものは驚くほど変化していません。遺伝子は、厳重に鍵がかかった秘密の部屋で、わたしたちの誕生から死までをずっと見守り続けているかのようです。本来ヒトにはどんなに劣悪な環境のもとでもきちんと育ってゆく力が、あたえられているのです。進化の過程で自然淘汰を繰り返すなかでも、大事な遺伝子は「変えてはいけない枠組み」としてしっかり保存されます。

いっぽう、遺伝子は精巧なコピー機のように変化をまったく許さないわけではないのです。遺伝子が書くシナリオには余白があって、そのわずかな“ゆとり”があるからこそ、わたしたちは進化することができるのです。一足飛びに変化することはせず、かぎりなく時間をかけて、少しずつ少しずつ変わっていく。進化を遂げる。これも遺伝子の仕事なのです。

遺伝子は、たいせつなものを確実に守りながら、個性という“ゆとり”を許容します。すべての正常なものには、ばらつきがあります。ゆとりがあって少しずつ異なるから〝個性〞が生まれるのです。父と母、お互いの遺伝子をクロスさせることで、親とは異なる遺伝子のシナリオが子どもへと受け継がれてゆく。ここにも、遺伝子の神秘的な強さが隠されているのです。

個々の遺伝子にはスイッチが付いていて、ONとOFFを切り替えることが可能です。専門用語では、遺伝子のスイッチがONになることを「遺伝子が発現する」と呼びます。遺伝子が仕事をするためには、発現することが必要です。睡眠によっても、季節によっても、年齢によっても、遺伝子の発現パターンは変化します。つまり、遺伝子が決めた設計図そのものは変わらなくても、遺伝子の働きは日々、あるいは季節ごとに、あるいは成長するとともに変わっていくのです。

遺伝子の働きにON/OFFがあること、つまり働きが柔軟にコントロールされていることで、わたしたちは環境に順応していくことができるのです。また、長年の生活環境や習慣、教育などが、わたしたちの心身の健康のみならず考え方や行動パターンにまで影響を与えるのは、遺伝子の発現に“揺らぎ”があるからなのです。

遺伝子が本来持っている「変わらない力」、一人ひとりの個性を演出する「ゆとり」、そして環境への順応や努力による進歩を可能にする「揺らぎ」。遺伝子の総合力を信じ、活用してお子さんに接すれば、それが最強の育児になると思うのです。

【次回に続く】

高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。1957年、8月生まれ。1982年慶応義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も勤める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。
2018-9784838730131-1-2

『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』
高橋孝雄 著
マガジンハウス
定価:1,404円 (税込)
https://magazineworld.jp/books/paper/3013/


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