働くママのウェブマガジン

Papa​パパの子育てを応援するコラム&トピックス

指の流血、あなたの応援と笑顔。 これが私を次のステージに押し上げました【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2018.11.13

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

001-illust-01

くりわり君

180606-001

会場の皆様はくりわり君という器具をご存知でしょうか。
天津甘栗を買うとついてくる栗を剥くグッズで、先にギザギザがついた500円玉ほどの大きさの器具です。

1801109-001

娘へ。
今からだいぶ前、あなたがまだ幼稚園の頃、あなたは天津甘栗が大好きで、静岡の妻の実家へ行った際は必ず帰りの駅構内で売っている天津甘栗を買ってもらっていました。
しかし天津甘栗の殻は固く、幼いあなたには剥くことができませんでした。

そのため私に頼んでくるのですが、天津甘栗というものは炒ってすぐだと剥きやすいのに、時間が経つととても剥きづらく、割と骨の折れる作業なのです。

そこで登場するのがくりわり君です。
それを使うと爪でやるよりかは確かに剥きやすく効率的で、チープな作りの割になかなか使える憎いやつです。
しかしそれでもなお、時間が経った栗は綺麗に丸々と剥くことは困難でした。

その困難を見てとったかあなたは、また本気の応援を見せてくれました。

「がんばれ~!」と大きな声で。

1801109-002

100円ショップで買ったゲームを私にクリアして欲しくて応援したあの日から、まだ数ヶ月で、今度は綺麗な栗が食べたいからというストレートな欲求から生まれた、エゴ丸出しの2度目の応援でした。

しかしどんな理由であれ応援されるのはいいものです。
私は持てる集中力を極限まで高め、栗と向き合いました。

ただ、栗は手ごわかった。
力を入れすぎず抜きすぎず、半分に切れ目をつけた栗を、握力で押し割る。
そして割れ目から殻を指で少しずつ剥がしていくという作業の時、私は右手の人差し指から完全に流血していることに気づきました。

1801109-003

痛い。
仕事に支障をきたす痛みでした。
しかし私はやめられなかった。
丸々とした綺麗な栗を渡した時のあなたの目を見開いた笑顔を見たいから。

ところで人間とは時に圧倒的なスピードで進化するものです。
指の流血、あなたの応援、そして笑顔。
これらの材料が私を次のステージに押し上げました。

くりわり君の新たな使い方を生み出したのです。

それまで私はくりわり君を殻に割れ目を入れるためだけに使用していました。
実はその後の栗を剥く際にこそ、くりわり君はその本領を発揮したのです。

ちょっとみなさまにその時に気づいた使い方をお教えしましょう。
ぜひ、うちに帰ったら甘栗を買ってきて試してみてください。

まず栗にくりわり君を差し込めるだけの割れ目を作り出します。
そうしたらその割れ目に引っ掛けるよう、くりわり君の爪を入れ、勢いよく殻を引き剥がすのです。
ようするに、くりわり君を熊手のように使って、剥ぎ取るのです。

1801109-003-2

これがよく剥けました。勢いよく飛んでいく剥がれた殻で部屋はとても汚くなったけど。

あなたは進化を遂げたくりわり君で剥いた綺麗な一つを、まるで宝石を見るように見つめ。
そしてなんの躊躇もなく口へ入れました。

「おいちすぎ」

あなたの言ったこの言葉が耳に残っている私は、
今でも甘栗が上手に剥けると自分ではなくあなたにあげたくなってしまいます。

嫁入り道具にくりわり君を入れておくので使ってくださいね。

今日はおめでとう。

そして、くりわり君の説明をしたいがために、割れるなどの忌み言葉を連発してしまったことをここに謝ります。
ごめんなさい。

1801109-004

【続く】
________________________________________

心の披露宴は心の雅叙園の中、テーブル上にシャンパンとビール、赤ワインがあるのに、白ワインもいれて欲しいと思ってしまうがやっぱりちょっと躊躇したりしつつ、
まだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

「娘へ。」連載一覧