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「英語力をつけさせてあげたい」と思うなら、まずやるべきは【小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て・7】

2018.12.17

話題の書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』を
ウェブで一部公開します!

発売3か月で4刷の書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』が話題です。著者は、慶應義塾大学医学部小児科で医師、教授として活躍され、日本小児学会の会長も務める高橋孝雄先生です。

Hanakoママウェブでは、この書籍の出版を記念して、本の一部をウェブで公開することになりました。

子どもとお母さんの「代弁者」である高橋先生の言葉は、きっと子育てに迷いを感じたときに、寄り添ってくれるものになるはず。遺伝子が持つ神秘的なエピソードは、子育てにプレッシャーを感じているママの気持ちを軽くしてくれそうです。

高橋先生のインタビューはこちら:https://hanakomama.jp/topics/58740/


(書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』 第二章より)

英会話の勉強は誰のため? 親の自分が始めてみてもいいんですよ。

Little girl learning the alphabet with wooden blocks

グローバルな世の中を渡っていけるように、国際的な舞台でも活躍できるように。

謳い文句はたくさんありますが、英会話を子どもに習わせたいのは、実は親が英語をしゃべれないからだったりしませんか。
 
英会話ができなくて海外で悔しい思いをしたり、職場で急に英語研修が義務づけられたり、英語には苦々しいコンプレックスを抱いているひとも少なくないかもしれません。

「自分たちが話せなくて苦労したから、子どもには英会話をマスターさせたい」
 
まだ日本語もおぼつかないうちから英語の歌詞のCDをそろえたり、ネイティブスピーカーのいる英会話教室の幼児クラスに通わせたり。子どもの英会話習得のために、たくさんの投資をしていませんか。
 
せっかくですが、それはたいていうまくいかないようです。なぜなら英会話は、子どものころに習っても日常的に使わなければ忘れられてしまうものだからです。
 
英会話のレッスンはいつから始めるのがいいかは、さまざまな意見があるでしょう。個人的には日本語をきちんと話せるようになってからだと思います。

「英語が話せたら、たぶん有利だろう」
「ママ友の子どもが英会話を習っていてネイティブ並みの発音にびっくり、うちの子だって」
「オリンピックも東京にくるし、そのときまでには」
 などと、英会話レッスンの機運が高まっているようですね。

でも、ほんとうに今、必要なことでしょうか。まわりに流されていないか、考えてみてもいいと思います。

実はぼくにも英会話にまつわるほろ苦い思い出があります。あれは中学に進学する前だったかな。当時きびしい家計をやりくりして、母が千駄ヶ谷にあった英会話学校に通わせてくれました。「中学に入学して英語で苦労させたくない」と。

授業に全くついていけなかったぼくは、クラスに行くふりをして、そのまま千葉方面に電車で行き過ぎる。時間をつぶす。月謝だけ払いこんでほとんど行かないままでした。せっかく母がなけなしの生活費の中から工面してくれたのに、ひどい息子です。学校での英語の成績は決して悪くはなかったのですが、小児科医になってからも英語はしゃべれないまま。英会話の苦手意識はずっと続きました。

すでに海外駐在がきまっていて英会話が必要とされているご家族にとっては、英語力の不足はたしかに切実な問題でしょう。かつて、妻と娘を連れてアメリカへ留学したときのことを振りかえって思うのですが、英会話よりもっとたいせつなことがありました。それは家族が団結すること。外国で暮らすという決意でした。それさえあれば、英語が話せなくても生きていける、ということにすぐ気づくはずです。

生活費もままならず、資金不足で子どもを現地のナーサリー(保育園)に入れることができませんでした。長女は渡米後3年以上、一日中、母親と過ごします。5歳になって義務教育が始まり、やっと学校(キンダー)に通うことになりました。当然、英語はまったくダメ。それでも、身振り手振りで友だちと遊び、毎日「たのしかった!」と帰ってきました。

妻は渡米後しばらくして、英会話も片言のまま現地の病院で二女を出産しました。アメリカ生活に不可欠と言われるクルマの免許すら持たず、夏休みも冬休みもなく、そしてついに一度も一時帰国することなく、育児をし、家族の生活を支え続けました。まるまる6年のボストン生活を終え帰国の途についたとき、飛行機の窓から外の景色を見つめ、静かに涙を流していました。機上から、それは美しいボストンの街が一望できたのです。

おかあさん、おとうさん、「英語がぺらぺらとしゃべれるようになりたかった」と、子どもに夢を託すぐらいなら、今からでも遅くないです。時間をやりくりして、基礎からもう一度、やり直してみませんか。子どもに「英語力をつけさせてあげたい」と思うなら、まずはご自身から。

【次回に続く】

高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。1957年、8月生まれ。1982年慶応義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も勤める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。
2018-9784838730131-1-2

『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』
高橋孝雄 著
マガジンハウス
定価:1,404円 (税込)

https://magazineworld.jp/books/paper/3013/


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