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自分で決めさせる。子どもの人生を左右する「意思決定力」の育て方【小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て・11】

2019.01.14

話題の書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』を
ウェブで一部公開します!

発売3か月で4刷の書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』が話題です。著者は、慶應義塾大学医学部小児科で医師、教授として活躍され、日本小児学会の会長も務める高橋孝雄先生です。

Hanakoママウェブでは、この書籍の出版を記念して、本の一部をウェブで公開することになりました。

子どもとお母さんの「代弁者」である高橋先生の言葉は、きっと子育てに迷いを感じたときに、寄り添ってくれるものになるはず。遺伝子が持つ神秘的なエピソードは、子育てにプレッシャーを感じているママの気持ちを軽くしてくれそうです。

高橋先生のインタビューはこちら:https://hanakomama.jp/topics/58740/


(書籍『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』 第三章より)

意思決定の始まりは2歳から。どんなことでも尊重してあげましょう

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生まれて初めて自分の意思で選ぶものはどんなものでしょう。何色のクレヨンでお絵かきしたいか、くまのぬいぐるみとうさぎの人形ならどっちがいいか、折り紙を選んだときかもしれない。

おそらくまだ物心がつく前のことなので、記憶をたどっても思いだせないでしょうね。では、子どもは何歳ごろから、自分の意思でなにかを選びとることができるのでしよう。これは心理発達の分野なのですが、おおむね2歳のころには2つの選択肢のなかから、1つを選択することができるようになります。「オレンジジュースがいい? りんごジュースにする?」と聞いたら、「りんごジュースちょうだい」と自分が飲みたいほうを選びます。
 
2語文が3語文になり、会話も上手になってきますが、2歳代ではまだ二者択一できるだけ。4歳代になると4つの選択肢のなかから1つを選べるように成長します。逆に言うと、この年齢になるまでは、はっきりとした意思決定能力が育ちきっていないのです。

意思を決める力がすくすくと育っていけば、ゆくゆくはどんなことでも自分の意思で決めて、それを実行に移していく能力が身についてくるはずです。強い意思決定力を育むことは、その後の人生を左右すると言っても過言ではないのです。

「えっ、好きなお人形やジュースを自分で選ぶことがそんなにたいせつなことなんですか?」と驚かれるかもしれませんね。

「みんながやるから、うちの子にも英語を習わせなきゃ」では逆効果ですね。意思決定力を伸ばしてあげたいと思うなら、「あなたはどちらがいいと思う?」「自分で決めていいよ」と声をかけて、“自分で決める”という作業の楽しさを実感できるような環境を用意してあげることです。そして子どもが選んだことに「なんで……そんなの……」という顔をしないこと。おかあさんの考えや嗜好とちがっていたとしても「へええ、そうきたか」とうなずくことがたいせつです。

日常生活でも、意思決定力を育むチャンスはいくらでもあります。みなさんもよくしていることは、夕ごはんのおかずを決めさせること、でしょうか。ぼくも子どものころ、母から「今夜なに食べたい?」と聞かれて、決まって「マカロニグラタン!」と答えたものです。このようなやり取りを子どもは大人になっても憶えているものです。ほかにも、たとえば幼稚園か小学校低学年ぐらいなら、毎朝の洋服を自分で選ばせるとか。

最近、レストランで注文を決められない男子が増えている、という話を聞いたことがあります。「失敗するのが怖くて選べない」「あとで後悔したくないから決められない」と言うのです。女子ではそのようなことはあまり聞かないのですが、こういうところにも性差が現れるのでしょうか。

お出かけのときに、電車で行くか、歩いてみるか、子どもに決めさせてみるのはいかがでしょうか。「歩く!」と言ったくせに、途中で「だっこ!」となることもありそうですね。それも子どもにとってはいい経験では。そういえば、電車の中で子どもが自らの意思で席を誰かにゆずったりしたら、親としても誇らしく、幸せな気分になれそうですね。意思決定力を発揮した勇気ある行動です。

少し、おおきめな決断としては、部活の選択もいい機会ですね。なにを選ぼうが親は口出ししないことです。そして、高校選びは重大な意思決定です。ぜひ、お子さんに選択権をあずけてもらいたいと思います。ところで、高校選びは、親の同意がなければできないことをご存じですか? 中学三年生には自己決定権があたえられていないのです。それでも、お子さんの意思を尊重して、自分で決めさせるべき場面です。

長女の話です。勝手気ままな彼女ですが、高い自己肯定感と意思決定力には親としても感服しています。幼いころに特にほめた記憶はないのですが……。

長女は遺伝子的にもっとも父親似です。ちなみに、顔だちも似ています。ひとの助言に耳を貸さず、すべて自分で決めます。中学、高校のときは、勉強もろくにせずに遊んでばかりでした(だったと思います、妻によれば)。

希望の高校に合格したときに母親と抱き合って喜んでいたことも、その後、大学受験で浪人したことも、なんとなくしか記憶にありません。自ら希望して理工学部で生命科学を専攻したのに、なぜか就職先は銀行だったことも気にもかけませんでした。銀行では着実に昇進していったようです。しかし、銀行の職場で婚約者に出逢います。結婚により経済基盤を確保できると考えた娘は、給料大幅減を覚悟で、さっさと以前からやりたかった人材開発の会社に転職します。

婚約の報告に来たときに、婚約者の前でひとつだけ約束させました。頭に浮かんだことを口にする前に、3秒だけでいいから考えること。思ったことを単刀直入に投げつける彼女が穏やかな彼と幸せになるには、これだけは欠かせまい、と父親としてはじめてまじめに話しました。それから1年、まったく守れていないようです。遺伝子の力は本当に強いな、と実感します。間違いなく、父譲りの遺伝子です。自分でも守れないことを娘に説教するとは、ぼくの身勝手遺伝子は誰から受け継いだものなのでしょうか。

【次回に続く】

高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。1957年、8月生まれ。1982年慶応義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も勤める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。
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『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』
高橋孝雄 著
マガジンハウス
定価:1,404円 (税込)

https://magazineworld.jp/books/paper/3013/


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