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添い寝も夜泣きもない自由時間には、小さな淋しさもはりついている。【ママの読書】

2019.01.24

こんにちは、ライターの藤沢です。
本の中で見つけた、「これはほかのママと共有したい!」と思うフレーズを紹介する「ママの読書」。

今回は、作家・エッセイストの大平一枝さんの「新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく」(大和書房)です。

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「すぐ大きくなっちゃうから、大変なのは今だけよ」「今が一番かわいい時だから楽しんで」。
子育てを終えた年長者から、こんなふうに声をかけられたことって、一度や二度ではないのではありませんか。

でも、出かけようとすればいつもオムツや着替えで大荷物、イヤイヤ時期には所構わず泣き叫ぶし、足元に絡みつかれて料理も掃除もままならず。
必死で作った料理は、食べるのではなくなぜかぶちまける。マキビシのごとく散らばったレゴを避けるようにリビングを歩きながら、やっとの思いで寝かしつけ。自分の寝落ちを白目むきつつ回避し、あぁやっと寝た……と思ったら今度は夜泣きで振り出しにもどる……(涙)。

先輩らの言葉は頭では理解できるけど、「あー、でも今が!今が大変なんだよー!」と、心の中の私が叫びます。渦中にいると出口も見えず、育児に終わりがくることなんて、もはや異次元の話のよう。

そんな状況を経て、「母業23年」、一男一女を育ててきた作者の大平さんは、この本の「まえがき」でこう記しています。

自転車の補助輪が外れる年齢の頃、不意に私に小さな自由がおとずれる。仕事と育児と家事の間に、名前のないすきま時間ができるのだ。
(中略)
送迎しなくても子どもは勝手に小学校に行ってくれる。とたんに、ぽっかりと仕事を始めるまでの時間が空く。
夜は、添い寝も夜泣きもない。
そんな名前のない自由時間は同時に、小さな淋しさもはりついている。
(中略)
一生終わらないんじゃないかと思う子育ての日々は、けっこう早く、するりとその手からすり抜けてしまう。
だから、あんまりがんばりすぎず、正しいお母さんを目指しすぎないでいい。

『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』p2より引用

これは、大平さん自身が忙しく働きながら子育てに奮闘してきた、その日常を飾らない言葉で綴った日記のようなエッセイ集。

「子どもたちの赤ちゃん時代に活躍した家具をリサイクルショップに引き取ってもらった話」とか、「弁当のおかずで子どもにダメ出しをされたこと」「どちらが皿を洗うかで夫と喧嘩をした」など、どんな家庭にもありそうなエピソードが連なります。
そしてその中に、そのときの必死な思いやリアルさが詰まっていて、読んでいる私たちは、気持ちを手に取るように感じ、自分の状況に重ね合わせてしまうのです。
「読者のみなさんが自身の家族に照らし合わせ、仮に今、先が見えなくて途方に暮れていたとしても、新しい日々を楽しみにできるよう」と、子どもの年齢順の構成になっているのも嬉しいところ。

先輩ママによる子育て記録は、「かわいくてかわいくてたまらない」と「辛くてしんどくてどうしようもない」が、交互にやってくる「今」が「有限」であると教えてくれます。

そういえば私も、6歳の女の子と1歳の男の子を追いかけるように毎日を過ごしながら、「あ〜!たまにはひとりでゆっくりお風呂に浸からせてくれ〜〜〜!」って思うんです。
でも、お姉ちゃんはすでに自分で髪を洗うようになっているし、一緒にお風呂に入ってくれるのなんて、きっとあとわずかでしょう。すっぽんぽんの体を私に預けて、全身を拭かせてくれるなんて、もうあと何回あるかわかりません。この本にもあるように、脱衣所に鍵をかけられる日も、そう遠くない気がしてきました。

−−それは長男が小五のときだった。
自分が、十八歳で進学のために長野の実家を離れたことを思い出したのである。
(中略)
それまで、自分がどのへんを走っているかわからない長距離走のように思えていた育児に、突然「残りわずか」という電光掲示板が点灯したのである。私は慌てた。

『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』p249より引用

ひとつひとつのエッセイはとても短いので、たとえば子どもがちょっと遊びに夢中になっているときや、火にかけたやかんを見守りながらの5分間、ほんの少しの時間で読み切れるものばかりです。

育児や家事のあいまに、パッと開いたところを一編、二編。
それだけで、いつもの子どものイヤイヤにちょっぴりかわいさを見つけられたり、「今日の夕飯はお惣菜でも、まいっか!」とたまには力を抜いてみたり。そんな気持ちになれるかもしれません。


『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』
大平一枝・著
大和書房 1500円(税別)
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藤沢 あかり(ふじさわ・あかり)

パンとたまごと少女漫画が好きな、フリーの編集・ライター。住宅・インテリアや雑貨、子育てなど暮らしまわりを中心に手がけています。一姫二太郎の母。『Hanakoママ』本誌では「働くママを悩ませる100の事象」を担当中。


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