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妹思いになったね。お菓子が大好きだったあなた【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2019.02.25

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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「お菓子をあげる娯楽」【第22通目】

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娘へ。

あなたは、とにかく本当に、心の底から、何の迷いもなくお菓子が大好きでした。

3、4歳の頃は中でもグミ、チョコレート、棒付きキャンディが大好物で、何かあれば「グミ食べたい!」というセリフを口にしていました。
あの頃のあなたにもし「あなたの夢を叶えます」というようなテレビ番組のインタビューがきたとしたら、きっとあなたは、「グミ食べたい」と言って、その場でスタッフがくれて終わる夢を語ったことでしょう。
また「グミ食べたい」の台詞よりさらに多く口にしていたセリフはストレートに「おかち食べていい?」でした。
こちらが隙を見せると、即座にお菓子の要求をくりだし、遊びが一旦おちつくと、ふーそろそろかというような感じで、さも当たり前のように「おかち?」と聞いてきたり、タバコを吸うことを喫煙といいますが、その当時のあなたは喫菓していたといってもよいほどの中毒ぶりでした。
時には「わー3時になったー!」と心底嬉しがっていて、ちがうよ12時15分だよと諭すのが忍びない気持ちになったこともあります。

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そんなあなたにお菓子をあげることの、私たち両親の高揚感といったら、ほかに類を見ない娯楽でした。

ユーチューブでよく見かける外国の子供?というくらいの、目を見開いた嬉しそうな顔。
その娯楽性は歌舞伎とほぼ同じといっても過言ではありませんでした。(歌舞伎を見たことはないのですが)
わが娘にお菓子を与えるだけがこんな娯楽になるとは。

しかしやはりそんなうまい話はないものです。
お菓子をあげればすごく喜ぶ顔を見られるというのに、お菓子ばかりあげてはいけないという、とんでもない理りがこの世にはあったのです。

お菓子ばかり食べると、普通の食事を食べない。
お菓子ばかり食べると虫歯になりやすい。
お菓子ばかりあげると、お菓子をもらえることが普通だと思い出す。

世の中厳しいものです。
こんなに目の前に娯楽があるのに、チケットが買えない。
劇団四季?娘は劇団四季なのですか?当時はそう思ったものです。

ところが私たち両親はある日とんでもないものを発見してしまったのです。
この世の理りをするりと抜けた、魔法のようなお菓子。あえて脱法お菓子と言ってもよい気がするお菓子。

その名をしまじろうお菓子といいました。
知らない方も多いとは思いますが、説明しますとロッテからでているキシリトールタブレットで、パッケージにしまじろうが描かれたもののことです。

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なんとこのタブレットは歯磨きの後に食べることを推奨しているほど、虫歯になりづらいどころか虫歯の予防になるという、優等生ぶりで、それなのに子供にしたらめちゃくちゃ美味しいという、天下無双のタブレットであります。
もちろんそれも大量に食べてはダメなのですが、我が家では夜の歯磨き後に一粒だけ食べられるというルールを徹底して、そういうものだと思い込ませていたので、3姉妹だれも文句を言わず、しまじろうお菓子を食べるためせっせと歯磨きをしていました。

そして恩着せがましく、はいどうぞと渡す瞬間のあの娯楽を毎日のように楽しめたのです。

そんな折、ある事件が起きました。

その日の夜もしまじろうお菓子を食べようと思っていたところ、なんと2つしか残っていないことに気づきました。
当然ひとつ足りないわけですから、ここは平等に全員なしということにしようと通達しました。

するとあなたはこう言ったのです。

「じゃあ、ノノちゃん我慢するから、アオちゃんと、マイロちゃんにあげればいいじゃん」
と。
自分は我慢して妹たちにしまじろう菓子をあげると、たしかにあなたは言ったのです。あんなに大好きなしまじろうお菓子を!
私たち夫婦は驚きました。妻を見たら完全に泣いていました。

妹思いになったね。と。

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私も当然とっても嬉しかったです。しかしもしかすると、
全員食べられないくらいなら、誰かが食べているところを見たいという、恐ろしい食い意地からの行動だったのではとも思いましたが、
妹たちに喜んでもらおうとしたことは間違いないと思います。

それにしてもあなたたち娘にお菓子や甘いものをあげた時の嬉しそうな顔を、
わたしは一生忘れないと思います。(次女は塩辛い方が好きだけど)

そしてその顔を思い出すと、お父さんはいつだってじーんとしてしまうのです。

結婚おめでとう。
これから夫婦であの時の嬉しそうな顔をたくさんしてください。

【続く】
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心の披露宴は心の雅叙園の中、余興ってなんだかんだ言って結局、新婦側の親戚のおっさんとかが歌を歌うくらいが一番いいよなと思いつつ、
まだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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