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最終的にはうまく出来ず全員泣いている。知育菓子こと「ややこし菓子」【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2019.05.24

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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「ややこし菓子」【第26通目】

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娘へ。

あなたが子供の頃、あなたの大好きなものは私もだいたい好きだったし、いつだってあなたが喜ぶことをしてあげたいと思っていましたが、どうしてもと受け入れられないものが1つありました。

それは知育菓子と呼ばれるもので、私の中では「ややこし菓子」と呼んでいたお菓子のことです。

ややこし菓子とは、とにかく作る工程が非常にややこしく、説明書をさっと読んだだけでは何がなんだかさっぱりわからない、しかも妙に体にも悪そうな菓子のことです。(個人的なイメージです)

代表的なものに、だいぶ昔、魔法使いのおばあさんが宣伝していた、やたら練る菓子などがあります。

練ればいいその菓子は全然序の口なのですが、中には8個くらいの小さいパレットに水をいれて、そこへひとつずつ粉をいれ、さらに別の液体を入れると、つぶつぶのお菓子が出来るというような、思わず「クッキー食ってろ!」と叫びたくなるようなものもありました。

お菓子

そしてあなたはこの「ややこし菓子」がとても好きでした。

パッケージを見つけると「これ食べたい!」と叫び、目をキラキラと輝かせながら「開けて!」と私にねだってくるのです。
そのあまりのワクワク顔にしぶしぶパッケージを開けると、中からややこしいセットが現れ、うんざりするわけです。

しかし正直なところ、幼稚園の娘一人だけなら、そこまで嫌なものでもなかったと思います。
私がこの「ややこし菓子」を嫌がる、いや、恐れる大きな理由の1つは双子の妹たちです。

姉が食べているお菓子を自分たちも食べたいし、自分たちもやりたいと言うのは当然の流れです。
ご多分に漏れず、妹たちもやりたがりました。
そこから一気に平和の崩壊は始まります。

「かほちゃんも!」
「ちひろちゃんも!」
と連呼する妹たち。
2歳の娘たちに小さいスポイトで水を吸って粉にかける等の行為ができるわけがありません。当然うまくいかずに、次第にキレはじめます。

「ジブン!ジブン!」
とやれもしないのに一人でやらせろと騒ぎ出す次女。溢れるカラフルな液体。舞い上がる粉。いつの間にか高周波数で泣き出している三女。自分の菓子が取られたと激昂する長女。

食べる前は歌でも歌わん勢いで浮かれていた3姉妹たちは、あっという間に阿鼻叫喚を極めた状態へ様変わりです。

ずいぶん前に見た「シビル・ウォー」というマーベル映画の、空港でのバトルシーンとほぼ一緒だったと思います。

泣く

最終的には全員泣いて、テーブルと各自の洋服がぐしゃぐしゃに汚れ、床や手や顔がベッタベタになるバッドエンド。
私はその状態になるのが嫌だったのです。

しかしその未来が見えていても、やる前の楽しそう~なあなた経ちの顔を見てしまうと、またややこしいキッドを出してしまう、愚かな私なのでした。

あれからだいぶ時が経ち、あのややこし菓子をあなたたち姉妹が食べることもなくなりました。

たまにスーパーで買い物をしていると、時折ふとそれを見かけ、手にとってしまうことがあります。

そしてつくり方の説明を見て、
ややこし~と
苦笑いしてしまうのです。

でも不思議なものです。
あんなに嫌だったのに、どういうわけかもう一度あのややこしさを味わいたくなっている自分がいるのですから。

思えばたくさんややこしいことがありました。
思い返してみるとそれらがどれも貴重な宝物に感じます。

結婚おめでとう。
ややこしい人生をどうぞ楽しんでください。

【続く】

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心の披露宴は心の雅叙園の中、新郎新婦はいつまで中島みゆきの糸で、縦の糸と横の糸になり続けるのだろうと思いながらまだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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