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「無理だ、外に行けない」薬すらもらいに行けない私。そこで夫の上司が言った言葉とは…?【初めて尽くしのドイツ生活】

2019.06.21

この連載は、

ひょんなことから、25歳にドイツで駐在妻となったゆとり世代の筆者が初めての結婚生活・妊娠・出産・子育てを、初めての海外生活で、泥臭く奮闘した「初めて尽くしのドイツ生活」を記した体験談。

リアルなドイツ生活や子育てについてはもちろんのこと、「優雅」と言われがちな駐在という立場にいる苦悩や、外から見た日本の「本当にこれでいいの?」と感じる疑問や違和感を綴ります!

子どもだけじゃない、自分のキャリアやライフスタイルを見る視野が1度でも広がり、1mmでも深まるきっかけになれば幸いです。


「ワークライフバランス」なんて言葉が定着したけれど、「ワーク」がはじめに来るから、人生の優先順位は、仕事が頂点に立っているイメージ。
わたしが学生だった頃、働くママたちは職場の人たちに頭をさげながら家庭を切り盛りする印象でした。
だからか、家庭の事情を優先することって、なんなら「迷惑行為」くらいに捉えていたわたし。
けれど、トルコ系ドイツ人上司の出会いが、そんなマインドを変えるきっかけをくれました。

【ピンチ!】

ピンチ

つわり生活が続く毎日。
それに加えて、慣れないドイツ生活、家と病院の往復と、体調不良で主婦業がままならず、体を横たえることしかできない状態になり、思考もマイナス思考に。

週二回、点滴を打ちに病院通いをしていたのですが、
吐き気止めを投与していた副作用で足元がふらつき、自力では帰宅することができない状態に。なので、仕事終わりの主人に車をだしてもらっていました。

「申し訳ない。」
なにもできない自分に不甲斐なさを感じ、感謝よりも申し訳なさの方がつのりました。さらには、ドイツに来て間もないこともあり、まだ心を開ける友人もおらず、主人が帰宅するまで、誰とも会話をしないことも。

当時のメモ帳を開いてみると、こんなことが書いてありました。

「自身が決めたことだからってなると、うまく弱音も吐けないけれどひとり旦那の帰りを待つことを毎日過ごすと、なんとも言えない虚無感を感じることがある。」

「勝手に追い込まれているな(笑)」と今なら笑えてしまうのですが、当時は、苦しい辛い期間でした。

そんなある日、吐き気止め薬の処方箋を薬局にもっていくと「いまは在庫がないから、後日来てもらえる?」と薬剤師さんに説明を受けました。

当時は、栄養不足で日に日に体力がなくなっていたため、外出をするのも一苦労。いつ襲ってくるかわからない吐き気の為に、エチケット袋を持ち歩いていました。
でも、在庫がないなら仕方ない。まだ残りがあるから、明日までは大丈夫か。と日を改めて行くことに。

そして、翌日。
約束の薬を取りに行こうと立ち上がると、体の倦怠感と気持ち悪さを感じました。

「無理だ。外に行けない。」

頑張ることができない。
なんだ、たった薬ひとつも取りにいくこともできないのか。わたしはなんて惨めなのだろう。
でも、薬が無いとご飯が食べられない。
どうにかしないと…
そう思ったわたしは、申し訳なさを感じつつ、仕事中の主人に連絡。

「とても外にでられなくて、薬を取りにいってきてもらえない?」

「わかった。調整して、昼休みに取りに行ってくる」

と、返信があり、仕事をする主人に迷惑をかける負い目を感じながら体を休めていると、追加で連絡が。

「自宅で仕事をする許可がおりたので、今すぐ帰るね」

【一方、主人は…】

※ここから、主人サイドでお届けします。

主人

場所は、オフィス。
個人に割り当てられた仕事部屋で、パソコンと向かい合っていると携帯に妻からのLINE通知が。

「とても外にでられなくて、薬を取りにいってきてもらえない?」

時間は、午前11時くらい。
早めのランチを取らせてもらって、薬局に行って、自宅に帰って、急げば1時間で済ませられるな。幸いにも出張シーズンじゃないから仕事の調整はきく。彼に、1時間だけ職場を抜けることだけ共有しよう。

彼とは、駐在先での上司のSさん。
アラフォーのトルコ系ドイツ人男性で、日系企業を渡り歩いてきたやり手の営業マン。支社長からの信頼も厚い。そんな彼のもとで、ヨーロッパ営業のノウハウを学ぶ日々を送っている。

Sさんの仕事部屋の扉をノックする。
「Sさん、仕事中すみません。」
穏やかな表情のSさんは、手を止めて部下の入室を認めてくれた。妻がつわりで動けないこと、薬を取りに行くために昼休みに一度帰宅することを共有すると、Sさんはこう言った。

「もう家に帰りなさい。」

「…え?」

「仕事は家でもできる。今は、奥さんの近くにいなさい。」

思いがけない反応に、一瞬、面食らってしまった。
ただ、仕事の指示はSさんからもらっているが、勤怠に関しては本社から駐在できている支社長の許可が必要だ。

「でも、支社長はいま会議中で、許可がとれないかと…」

Sさんはすかさず
「わかった、僕が聞いてくるよ」
と、彼はそのまま自室を出て、支社長がいる会議室へ。
自分も後を追いかけた。

「会議中、失礼します。」
彼は、一言述べた後、支社長に事情を説明し、部下が自宅で仕事をする許可を求めると、支社長はただ一言「お大事にね」と。すんなり帰宅の許可がおりた。

…よかった。今から帰宅準備をして、そうだ、妻に連絡をいれよう。
「自宅で仕事をする許可がおりたので、今すぐ帰るね」

【ドイツ人マインドに触れる】

マインド

薬をもって帰宅した主人から、一連の話を聞いたとき
「まさか、そんなことを言ってくれる人がいるなんて」と、ただ驚き、そして感謝の気持ちでいっぱいになりました。

頼れる身寄りがないことや、わたしがドイツに来て間もないことを上司のSさんはよくご存知で、彼の粋な計らいに、わたし達夫婦はたくさん助けて頂きました。彼のキャラクターや価値観によった判断なのかもしれません。
ただ、折に触れてドイツに住む彼らの「家族やプライベートを充実させるための仕事」「なんなら、仕事をプライベートに合わせる」という価値観や文化を感じる場面が多くありました。

日本で働いていただけでは、感じることのできなかった、良い意味での「カルチャーショック」。
その後も、Sさんを含めドイツ人の同僚のみなさんに支えられて、わたし家族はドイツ生活を乗り切ることができたのです。

次回に続きます。

河井あやね

Hanako 新米ライター。国際色豊かな大学を卒業するも、在学中は留学せず、そのあと広告代理店に勤務。
25歳でドイツ駐在生活をスタートし、20代後半を国外で過ごす。本帰国後、ドイツと日本のギャップを感じつつ、それさえも楽しもう。をモットーに天真爛漫系2歳児(娘)を育児中。



第1回 25歳、新米駐在妻。陸の孤島で感じた孤独感
第2回 「主人からきたLINE」が決め手だった。ドイツ駐在についていくか、日本でキャリアを積むべきか。
第3回 はじめての苦難。まさかつわりで手の甲に点滴を打つことになるとは…

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