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Education教育

20年後の教育はこうなっている!?教育格差を是正する!?アメリカで自動車産業よりも大きくなると期待されるEdTech

2019.07.12

第2回 10年先取り?アメリカのEdTech事情

EdTech

はじめまして! EdTechで日本の教育を草の根から変えていこうと奔走する、二児のパパ&スーパー銭湯大好きな高山智司です。

前回は、これからの教育は、テクノロジーを駆使して、個別最適型の“アダプティブラーニング”に変わって行くだろう(というか、そうあるべき)という話をしました。

世界の先進国、とくに北米ではかなりアダプティブラーニングが進んでいて、それに比べれば日本の教育は、5年から10年は遅れているというのが私の実感です。
5年の遅れというと、たとえば5年前のスマートフォンと今のスマートフォンを比べてみればわかるように、ITの世界では致命的なほどの遅れです。

このままでは日本の教育はかなりヤバイと、私は本気で心配しています。

アメリカでは4兆ドル産業と期待されるEdTech

アメリカで、EdTech が注目されるようになったのは、2011年のオバマ大統領(当時)の一般教書演説がきっかけです(EdTechって何?と思った人は前回の記事をご参照のことhttps://hanakomama.jp/topics/74506/)。この演説の中でオバマ大統領は、貧困層と富裕層の教育格差の是正・生徒の成績向上のために教育改革を行う、そのためにEdTechを中心とした教育産業に投資すると明言しています。

アメリカでは、EdTechは4兆ドル産業といわれ(4兆ドルと言われてもピンとこないかもしれませんが、これは自動車産業よりも大きい)、Google、Amazon、Facebook、Apple(GAFA)といったITの大企業も参入し、大変な活況を呈しています。

教育格差是正の目的で発達してきたアメリカのEdTech

アメリカでは貧富の差による教育格差が長年の社会問題になっていいました。様々な事情で学校に来られない子どもたちにも平等に教育機会を与えるための手段として、オンライン教育は20年も前から行われてきました。

オンライン教育で有名なのが、2006年に開講されたカーンアカデミー(https://ja.khanacademy.org)です。これは、世界中から無料で授業を受けられるオンライン上の学校で、もともとは、サイマル・カーンというインド人の青年が、遠隔地の親戚にスカイプで数学を教えていたのが始まりです。そのうちYouTubeが普及して、彼は自分の授業を動画で撮って親戚に送るようになりました。これがわかりやすいし好きな時に何度も繰り返してみられて便利だと評判になり、全世界に広がっていったのです。運営はいまも寄付によって支えられています。

注目すべきは、サルマン・カーンは教育者でも何でもなく、IT企業に投資するベンチャーキャピタルの一人だったこと。この頃から、学校や教育関係者ではなく、全く別の業界から、全く新しい発想で教育サービスを提供する企業が増えていきました。

無料で一流大学の講義が受けられるのに、学校に行く意味はある?

大学では、前回も少し話しましたが、2012年頃からにMOOC(Massive open online course)と呼ばれる、オンラインで大学の講義を公開する動きがでてきました。スタンフォード大学が行うCoursera(コーセラ)と、ハーバード大学&MIT(マサチューセッツ工科大学)が行うedxがMOOCの双璧です。

MOOCは、インターネットで登録しさえすれば、世界中のどこからでも、一流大学の看板講義を無料で受けられるのが最大の魅力。修了すれば大学による公式の修了書(ディプロマ)がもらえます(ただし有料)。

苦労して大学に入り、高額な授業料を払っても将来が保障されるわけではないという不安感はアメリカでも広がっています。オンラインで、無料で質の高い教育が受けられるとなると、従来の学校の在り方自体が問い直されることになります。実際、アメリカの公教育では、EdTechを活用した大改革が行われようとしています。

ALTスクール、ミネルバ大学……IT企業が相次いで新しい学校を開校

これまで述べた例は、経済的弱者にも学ぶ機会を広げ、教育格差を是正するためのEdTechの動きでした。
アメリカにはもう一つのEdTechの流れがあります。富裕層に向けて、最先端のより高度な教育環境を与えようとするEdTechの動きです。

そのうちの一つ、ALTスクールは、元Googleのエンジニアのマックス・ヴェンティラが創業した学校で、保育園児から中学生までが対象。ビッグデータ分析によって生徒ひとりひとりに合ったアダプティブラーニングを提供しています。決まったカリキュラムはなく、生徒が自分の興味のあることから課題を見つけ、調べ、発表するというプロジェクト型学習が特徴。FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグが巨額の投資をしたことも話題になりました。

2014年に開校したミネルバ大学は、完全オンラインと体験型プロジェクト学習のハイブリッド大学です。サンフランシスコを拠点とし、4年間でソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北の世界7都市に移り住みながらオンラインで受講します。授業は企業との協働プロジェクトなど、アクティブな学びが特徴。最初は学生数29人でスタートしましたが、今では世界各国から約2万人が集まる人気校となり、合格率も約2%という狭き門に。年間の授業料は寮費込で約3万3000ドル。決して安くはありませんが、ハーバード大学の学費が年間約8万ドルであることを考えると良心的とも言えます。ハーバード大学やスタンフォード大学といった一流大学を蹴ってミネルバ大学に行く人もいるというのもうなずけます。

何十年も変わらなかった日本の教育現場もようやく大きく変わるのか?!

ところで、ALTスクールができたのは、創設者のマックス・ヴェンティラが、わが子のプリスクールを探していたときに、学校現場が30年前の自分の時代と全く変わっていないことに衝撃を受けたことがきっかけと言われています。

じゃあ、日本にもマックス・ヴェンティラのような人はいないのか。次回は、日本のEdTech事情についてお話ししようと思います。

高山智司(EdTechJapan リサーチアナリスト・公共政策シンクタンク代表理事)

高山智司(EdTechJapan リサーチアナリスト・公共政策シンクタンク代表理事)

衆議院議員3期10年の経験を生かし公共政策シンクタンク設立。公共政策ファシリテーターとしてセミナー講演多数。本業はシブヤの大企業役員と社会人大学院生。中学生と小学生の父親。
好きなこと:スーパー銭湯とマラソン

取材・構成○石井栄子



第1回 20年後、どんな力を身につけなければならないか

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