働くママのウェブマガジン

Mama子育てママを元気にするコラム&トピックス

毎週水曜日はバレエの日。大好きな先生と成長していく娘【おつかれ手帳】

2019.07.25

懺悔日記連載・出版から数年、すっかり元気な著者藤田あみいですが、それでも育児や生活は誰だって一筋縄ではいかないもの。日々必死で生きているお母さんたちのために懺悔日記では触れてこなかった楽しき思い出にフューチャーしていこうという試みそれがおつかれ日記です!


毎週水曜日はバレエの日。仕事がどんなに忙しくても早めに切り上げ、娘をバレエに連れていっています。娘が通っているバレエ教室は、いわゆるプリマドンナを育成するような目的のものではなく、スポーツクラブのカルチャー教室的なバレエでありまして、ほどほどに気の抜けた仲間たちと楽しく愉快にやっています。もう三年になりますでしょうか、三歳の時からやっているので、三年目ですね。入れ替わりも激しいので、もうだいぶ古株になっています。このバレエですが、娘が所望して所望してどうしてもということなので参加しました。踊ること、そしてレオタードにとても憧れがあったようです。

他のバレエ教室に見学に行ったこともありましたが、担当の先生がとても「静…」という雰囲気の方で、親でもビビってしまいました。レッスン前に着替えなどの準備をしている時ですら静かで、シーンとした張り詰めた雰囲気の中、娘が「ちんちん・まんまん・ちん・ちん・ち・まんまん」とどこで覚えたのか卑猥な言葉をサンバのリズムに乗せて刻み出したので、冷や汗をかきました。これが三歳の時ですね。忘れられません。

そしていまのスポーツクラブ内のバレエ教室に落ち着いたわけなのですが、先生がとても良くて、幼児のどうしようもない落ち着きのなさなどをほどよく諦めてくれる方でいらっしゃいます。みんな言うことを聞いたり聞かなかったりと気がそぞろですが、時には怒り、時には同調し笑い、時には無視し、和やかな雰囲気の中で進めてくれる先生なので、みんな先生が大好きで、レッスン中に突然先生に抱きつく時間がはじまったりしていて、うちの娘にはここがとても合っているなあと思っています。娘も私もこのバレエ教室が大好きです。

月に一回ほど親が自由にレッスンを見学できる日があるのですが、基本的にみんなレッスン中はとても真剣に真面目にやっていて、それは先生の指導の賜物だなあと思っています。そんな中、鏡に映る自分の姿に見とれているものが約1名。娘です。我が娘です。先生の話を聞いていません。みんな別の場所に移動しているのにひとり、鏡に向かってポーズをとっています。そういった場面を一時間のレッスン中のうち、3、4回ほど見た私は、「あれはダメだよ、先生の話をちゃんときこうね」と話をしますが、ひと月後の見学の日にもまたやってる…その次の見学日にもまたやってる…娘はバレエをしにきているのか?それとも自分の姿を鏡に写しにきているのか?

そんなことが続き、ある日の見学日の帰りに娘に対してすこしきついことをいいました。「バレエやる気ないんだったら辞めようか?」娘がチャイルドシートの上で身を固くしたのを感じました。時は夕刻、車のヘッドライトが私と娘の頬を順になぞっていきました。「いやだ」。と娘はいいました。
「だけど何回言ってもレッスン中遊んでしまうじゃない?あれはどうしてなの?」と聞くと「だって…プリンセスの心が出てきてしまうんだよ…」

プリンセスの心…バレエにおいてとても大切な心構えのように思いますが、やはり授業態度としては思わしくないのではないでしょうか。レッスンを中断するような迷惑をかけているわけではないですが、親としてはどうしても和を乱す姿を見るとそわそわしてしまうのであります…いわば、恥をかきたくないだけの親のエゴでございましょう。こういう時、娘のあるがままを認めてあげる聖母のような心持ちだといいのでしょうが、私はただの人間ですのでこういった自分のゲスな心の内を娘にぶつけてしまったのはやはりまだ親として未熟だと認めざるをえません。娘はとても悲しそうです。
などと、色々考えすぎて何も言えなくなった私。なんて言ったらいいのだろうか。静まり返る車内。しばしの空白のあと、突然、静寂を切り裂くように響き渡る「ブッ!」という破裂音がしました。放屁です。娘が放屁をしたのです。一転してあの静まり返るバレエ教室で繰り広げられたサンバのリズムを思い出し、笑いをグッとこらえました。娘は追い討ちをかけるように、静かな面持ちで「くさいでしょ…ママ…おならしたよ…」と言いました。知っています。おならをしたことは知っています。この時点でもうダメになり、笑ってしまいました。

このころ娘は4歳でしたでしょうか。これも忘れられない思い出です。
それからはあれこれとレッスンに口を出すのはやめました。5歳になった娘は「今遊ぶ時間じゃないよ!」と小さい子に注意を促すまでになりました。レッスンでは先輩として見本となるように心がけているようで、小さい子たちが入ってきてからだいぶ様子が変わったように思います。あれこれ言わなくても自分で理解してできるようになっていくものなのですねえ。これまた側から見ていて偉そうにしないでーっっ!と多少ハラハラしてしまうのですが、おせっかいすぎますね…。楽しい楽しいバレエの時間、これからもあるがままにですね。

新しく入ってきた三歳の子が、レッスンは毎回お母さんが付き添わないとダメだと言い張っており、まるでうちの娘のようですが、「うちもそんな感じでしたから大丈夫です」と言ったらお母さんがとても安心していました。きっとそのうちお姉さんたちのように翼を広げて踊るようになるのでありましょう。

バレエ
profile

藤田あみい(ふじた・あみい)

漫画家・イラストレーター・エッセイスト。 「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。晋遊舎LDKにて漫画も連載中。 趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。