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Education教育

20年後の教育はこうなっている!?70年以上変わらない日本の教育システム。そんな時に出てきた全く新しいネットの学校「N高」とは!?

2019.07.25

第3回 開校3年目にして1万3千人の生徒を集める“N高”とは

20年後の教育

EdTechで日本の教育を草の根から変えていこうと奔走する、二児のパパ&スーパー銭湯大好きな高山智司です。

これまで、究極の教育は、個別最適型の“アダプティブラーニング”だという話をしてきました。今回は、日本で“アダプティブラーニング”を実践し、急成長中のN高の事例を紹介しましょう。

日本はICT後進国だ!

日本は先進国だと思っている人が多いのではないでしょうか。しかしICT環境においては、日本は後進国と言わざるをえません。

経済産業省は昨年「D X (デジタルトランスフォーメーション)レポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」というレポートを発表しました(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf?fbclid=IwAR0rAAZuuAmkfnsMvllJcJtNog917mrIO33tuvkGfTPCSsKLJQlLhqQfT4Y)。

この中で経済産業省は、日本は既存のレガシーシステムが足かせとなり、革新的なICT化を進めることができず、2025年を境に、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる(2025年の崖)だろうと予測しています。

70年以上変わらない教育システムが、学校のICT化を阻んでいる

EdTechの分野も例外ではありません。これまでも述べてきたように、日本の教育におけるICT活用は先進諸国の中で大きく立ち遅れています。

EdTechにおけるレガシーとは何か。

それは言うまでもなく、第2次世界大戦後、1947年にできた学校教育法に基づく6・3・3・4年の学校体系、国定教科書を使って同じ教室で一斉に同じことを教えるという、70年以上ほとんど変わっていない学校教育システムです。

このレガシーのために、日本の学校は変わることができず、時代の変化に対応することができていないのです。

従来の教育システムに適応できない生徒たちが増えている

文部科学省の調査によると、日本には約19万人もの不登校の児童・生徒がいます。中学生にいたっては、31人に1人が不登校です(編集部注:不登校についてはこちらの記事もご参照ください⇒https://hanakomama.jp/topics/74695/)。

つまり、今の学校の制度になじめない子が31人に1人もいるということです。

しかも、少子化で生徒の数は減っているのに、不登校の子どもの数は増えています。これからも増えていくかもしれません。この子たちの学習をどうサポートするのか。この子たちが社会的に将来自立できるよう、どう教育していけばいいのか。今こそEdTechを使った、アダプティブラーニングの仕組みを考えるべきではないでしょうか。

カドカワとドワンゴがタッグを組んで、全く新しいネットの学校が誕生した

2016年に開講したN高は、まさにEdTech時代を先取りする、全く新しいタイプの学校です。

正式名称は学校法人角川ドワンゴ学園。株式会社KADOKAWAとニコニコ動画などで知られるIT企業、株式会社ドワンゴが出資して設立した通信制の私立学校です。校舎は沖縄にありますが、生徒はオンラインで授業に参加しほぼ通学することなく卒業することができます。

開校1年目は1500人だった生徒数は、わずか3年間で急増し、2019年4月の入学者数は1万3000人を超えました。2019年3月に初めての卒業生を出しましたが、早慶を始め、有名大学に多くの合格者を出しています(https://nnn.ed.jp/about/results/results_university/)。

開校当初は、不登校などで学校に行けなくなったなど何等かの問題を抱えた生徒が多かったそうですが、今では積極的にN高で学ぶことを選択した生徒たちが増えているそうです。フィギアスケートの紀平梨花選手もその一人。忙しい練習の合間や移動中など、いつでもどこでも勉強できることからN高を選択し、学生生活と選手生活を両立しています。

最前線で活躍するビジネスパーソンから、学びたいことを直接学べる

N高では何を教えているのでしょうか。

授業は、「必須授業」と「自分がやりたい勉強」に分かれていて、必修授業はオンラインで学び、通学コースは「自分のやりたい勉強」を学びます。

「必須授業」は高校卒業資格を取得するために必須の授業で、国語・数学・英語・理・社会といった教科をオンラインで学びます。
「自分がやりたい勉強」では、卒業資格には関係なく、プログラミングや、Webデザイン、小説創作、外国語、起業など、自分が好きなことを学ぶことができます。講師陣を見ると、すべて実際にビジネスの現場で活躍する各業界のプロばかり。KADOKAWA、ドワンゴという企業が運営する学校だからこその人選であり、1万3千人もの生徒がいるからこそ実現した豪華なプログラムです。もちろんこれらはオンラインでも学ぶことができます。

生徒一人ひとりに合った学習ができるようコーチがサポート

オンラインの通信制高校の場合、いつでもどこでも好きな時に学べるのが利点ではありますが、よほど自己管理ができる生徒でなければ継続は難しいものです。そこで、N高では、ユニークな担任制をとっています。

何がユニークかというと、N高の担任の先生は授業は担当しないで、代りにコーチとして、生徒が自分の理解度や能力、ライフスタイルに合わせて学習をできるよう、学習計画やスケジュール管理のサポートをします。この仕組みによって、一人ひとりの事情にあった、アダプティブラーニングが可能になっているのです。

ICTツールを駆使した、“大人な”学習環境

N高の通学コースは、代々木、御茶ノ水、横浜、大宮、立川、千葉、柏、心斎橋、江坂、京都、名古屋、仙台、福岡にキャンパスがあります。

通学ならではのカリキュラムとして、大学受験講座やプログラミングに特化したコースがあるほか、企業や地方自治体などと連携してPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング=生徒たちが自分で課題を設定し、グループで話し合ったり、調べたりして課題を解決し発表する)も行っています。実際のビジネスを疑似体験できるような、“大人”な学び環境なのです。

教材は、すべて動画コンテンツによる映像授業。先生との連絡はSlack(ビジネスユースの掲示板ツール)、授業で使うアプリケーションやメール、カレンダーなどのツールは、G Suite for Education(googleの提供するクラウドサービス)やAdbe Creative Cloudを使用。プログラミングにはビジネスでも使われているGitHubというツールを使用。

学校向けのアプリケーションをわざわざ開発するのではなく、すでにビジネスの現場で使われているツールを普通に使う。つまり、子ども扱いしないので、社会に出てからもスムーズに仕事に入っていくことができるのも、N高の優れている点だと思います。

N高には部活動もあります。起業部、投資部、囲碁部、将棋部、eスポーツ部など、リアルの場での活動をすることもありますが、ネット上で活動するのが基本。

学校行事もユニークです。「ドラゴンクエストX」を用いた「ネット遠足」では、自分のアバターを作ってドラゴンクエストの世界の中で、N高の先生や友達と旅に出ます。

古いレガシーを知らないからこそできた、革新的な学校

冒頭に述べたとおり、N高は大変な人気を集めており、今年の4月から、中等部も開校しました。

連載2回目で、アメリカのEdTechについて話しましたが、EdTechを駆使して新しい学校を作った人たちは、学校業界ではなくICT業界から出てきた人たちでした。

N高も同様で、学校法人角川ドワンゴ学園理事の川上量生氏は、ドワンゴを立ち上げた人物で、自分の子どもができたことから教育に関心を持ち始めましたが、教育については全くの素人です。だからこそ、レガシーにとらわれることなく、全く新しい発想の学校を作ることができたのでしょう。

20年後にはN高のような教育スタイルが、スタンダードになっていると私は見ています。

高山智司(EdTechJapan リサーチアナリスト・公共政策シンクタンク代表理事)

高山智司(EdTechJapan リサーチアナリスト・公共政策シンクタンク代表理事)

衆議院議員3期10年の経験を生かし公共政策シンクタンク設立。公共政策ファシリテーターとしてセミナー講演多数。本業はシブヤの大企業役員と社会人大学院生。中学生と小学生の父親。
好きなこと:スーパー銭湯とマラソン

取材・構成○石井栄子


第1回 20年後、どんな力を身につけなければならないか
第2回 10年先取り?アメリカのEdTech事情

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