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20年後の教育はこうなっている!?日本の教育は早い段階でカンボジアに追い抜かれる!?新興国が先進国を一気に追い抜くわけとは

2019.08.14

第4回 新興国のリープフロッグで、日本の教育は追い抜かれる

EdTechで日本の教育を草の根から変えていこうと奔走する、二児のパパ&スーパー銭湯大好きな高山智司です。

今回は、新興国の教育事情についてお伝えしたいと思います。

昨年夏と冬、そして今年の7月上旬にカンボジアの小学校を視察してきました。そこで感じたのは、日本の教育は、20年後、いや、10年後かもっと早い段階で、カンボジアに追い抜かれるだろうということ。

それはなぜか。その理由を説明する前に「リープフロッグ現象」について説明しましょう。

新興国が、先進国を一気に追い抜くわけ

リープフロッグ(Leapfrog)とは Leap(跳ぶ)frog(カエル)のことで、新興国が、先進国を抜いてカエル跳びに一気に成長する様子を表す経済用語です。これまで先進国が、成長に向かって一歩一歩進めてきた段階をすっ飛ばして、いきなりトップに躍り出ることが、リープフロッグ現象の特徴です。

例を挙げてみましょう。
10年ほど前、インドでスマートフォンが急速に普及し、電子マネーなど、フィンテック(金融サービスのICT化)の進化も相まってスマホ決済が一気に進みました。今やインドは日本よりもはるかにキャッシュレス経済が進んだ国になっています。10年ほど前のインドでは、地方には銀行支店がなく銀行口座を持っている国民もほとんどいませんでした。だからこそ、スマートフォンの広がりとともに、リアルな銀行に口座を持つという段階を飛ばして一気にスマホ決済が広がったのです。中国も同様です。

エストニア共和国は、人口わずか132万人ほどの小国ながら、最先端の電子国家として知られています。世界で初めてインターネット選挙を行った国でもあり、様々な手続きはすべてデジタル化され、キャッシュレス化も進んでいます。1991年にソ連から独立した際に、古いシステムをリセットしたことで、急速なICT化が進んだと言われています。

この二つの国の共通点は、もともとはICTの後進国であったがゆえに、古いシステムの縛りがなかったということ。そのため、リープフロッグ現象が起こったのです。

かつての日本も、リープフロッグ現象で先進国の仲間入りを果たす

日本にも、大きくは過去に2回、リープフロッグ現象が起こったことがありました。
1度目は明治維新後のこと。幕府が倒れ明治政府がスタートしたとき、イギリスやフランスの最先端の政治・経済の仕組みを取り入れて、一気に近代化が進みました。2度目は1945年の終戦です。戦争で焼け野原になって全てのインフラが一度リセットされてしまったあと、北米の最新のシステムを導入して高度経済成長を成し遂げました。

古いレガシーの縛りが変革のチャンスを奪う

古いシステムやテクノロジーの縛りがあって時代の変化に対応できない先進国は、後続の新興国にリープフロッグで追い越されてしまいます。

今の日本の教育が、まさにその危機に瀕しています。
前回にでも述べたように、70年以上も前にできた学校教育法に縛られている日本の教育は、時代の変化に対応できず、ICT化においては世界的に大きく立ち遅れています。

これまで日本の教育のレベルは高いと世界から評価されてきただけに、古いレガシーを打ち壊すのは簡単ではありません。

内戦後、急成長を続けるカンボジアのリープフロッグ現象

それに対し、カンボジアはどうでしょうか。

カンボジアは1990年代まで内戦が続き、1970年代のポルポト政権時代に多くの知識人が虐殺されました。1998年にフン・セン首相が政権をとり内線は終結。2004年にはシハモニ国王が即位して新しい王政がスタート。ASEAN諸国の中ではまだまだ最貧国ですが、年に7%の勢いで急速に経済成長を続けています。

国の発展のためには教育が最重要事項です。しかし、カンボジアでは学校が圧倒的に足りない。ポルポト政権時代による知識人の大虐殺によって教員の数も足りない。小学校は、学校不足解消のために、午前・午後の二部制で運用されているほどです。地方には、中学校や高校がなく、小学校には90%の子ども達が通っていますが、中学への進学率は約50%、高校、大学へと進むのは一握りのトップエリートだけです。

一方、国民のスマートフォンの普及は著しく、全人口1600万人に対して、1800万台のスマートフォンが、SIMカードは2000万枚が出回っています。首都プノンペンでは、電子マネーWingを使ったスマホ決済がスタンダードになり、かつては主要な交通機関だったトゥクトゥク(三輪タクシー)は、急速にgrabタクシー(Ubarと同様の配車サービス)に取って代わられています。

キャッシュレス化やシェアエコノミーの普及については、カンボジアのほうが日本よりもずっと進んでいるのです。

この波は、教育現場にも押し寄せてきています。

現在のカンボジアのハン・チュンナロン教育青少年スポーツ大臣は、昨年、すべての学校に パソコンを配備すると決定するなど、教育改革を熱心に進めています。
カンボジアの教育の発展のために、日本企業も貢献しています。150カ国、100万人のユーザーを持つThink!Think!(シンクシンク)という教育アプリで知られる株式会社 花まるラボは、JICAの資金でカンボジア小学校にiPadとThink!Think!を提供。ICTを使った場合と使わない場合で子ども達の学習意欲がどう違うかを実証実験しています。

学習意欲

この学校を私も視察したのですが、子ども達の食いつき方はすごいものです。紙の教科書とノートと鉛筆という従来型の学習の段階を飛ばして、いきなりEdTechを活用した学習にすんなり入っていける。世界には、優れた教育アプリがたくさん出回っていますから、iPad一つあれば、いつでもどこでも、好きなことが学べます。内戦時代が長く続き教育制度も崩壊していていたので、改革の縛りとなる古いレガシーもない。教育の場でもリープフロッグ現象が起こるのは必至です。

最先端

最先端の環境で学んだカンボジアの子ども達に、日本の子ども達は20年後、勝つことができるのでしょうか。食い入るようにiPadをのぞき込み、熱心に学習をしているカンボジアの子ども達の笑顔を見ると、複雑な気持ちにならざるをえません。

子ども
高山智司(EdTechJapan リサーチアナリスト・公共政策シンクタンク代表理事)

高山智司(EdTechJapan リサーチアナリスト・公共政策シンクタンク代表理事)

衆議院議員3期10年の経験を生かし公共政策シンクタンク設立。公共政策ファシリテーターとしてセミナー講演多数。本業はシブヤの大企業役員と社会人大学院生。中学生と小学生の父親。
好きなこと:スーパー銭湯とマラソン

取材・構成○石井栄子

第1回 20年後、どんな力を身につけなければならないか
第2回 10年先取り?アメリカのEdTech事情
第3回 開校3年目にして1万3千人の生徒を集める“N高”とは

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