働くママのウェブマガジン

Papa​パパの子育てを応援するコラム&トピックス

次女へ、結局ホラーマンとギュッとする機会をとれずにごめんね。【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2019.10.01

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

001-illust-01

「ホラーマンにギュってしてもらわなかった君」【第30通目】

180606-001

娘へ。(次女)

あなたが生まれたとき、正確にはあなたと妹のちひろが生まれたとき、私は病院であなたたちを祈りながら待っていました。
2人が入っていた妻のお腹は、夕方のニュースの途中で出てくる、激安スーパーの袋詰めの達人が、
いやもう無理だろ、というところから、とうもろこしを3本詰めたくらい、パンパンに膨らんでいて、私は日々、何かあったらどうしようというような不安を抱えていたので、出産の際もとてもハラハラと待っていたことを覚えています。

幸い無事に生まれてくれた、あなたたち2人を初めて見たときは、ホッとしたのと、知ってはいたけどやっぱり二人いる!という驚嘆を含んだ事実確認のような気持ちを感じました。

それからはもう、嵐のような日々の連続で、当時仕事も忙しかった私は、心ここにあらずだったことも多々ありました。
3人の娘の父へと、数年前からずいぶんと「キャラ変」した私は、とにかくみんなに平等に接しようと、そのことにずいぶん心をとらわれていたように思います。

この平等というのが曲者で、あなたたちには不憫な思いをさせてしまったような気もします。
本当は一人一人、君は特別なんだよ!とエコひいきしたい気持ちがあるのに、なかなかそれを表現できないもどかしさを抱える日々でした。
特別というのは、もちろん姉妹の中で誰が一番という意味ではなく、私にとってそれぞれがこの世界で一番特別だということです。

幼少の頃のあなたは特に、その平等という囲いに不満を抱いていたのではないかと、わたしは思うのです。

2歳のころ、歩いて2分のところにあるスーパーにただ牛乳を買いに行くだけでも、あなたは私と二人だけで行くことに、とても嬉しそうにして、ニコニコしながらついてきました。
そして店内の天井に吊るしてある亀などの人形や、ちょっとした発見をするたびに、私に「あーカメだ~!」「かほちゃん見たことあるよ!」などとテンション高く教えてくれました。

私も嬉しくなって、「亀~?ホントだ~よく知ってるね~」などと大げさに驚いたり褒め称えたりして、そんなちょっとしたことが、今思い出しても、顔が勝手にほころんでしまう大切なあなたとの思い出です。

次女

あの当時、わたしはあなたのことを本当に愛おしく思っていたことが、伝わっていたでしょうか。
もちろん生まれた時からずっと今まで、そう思っています。
と、いうようなことを言うと、どうもほかの娘たちが、わたしはどうなんだ!と思いそうな気がしてしまうのはなんとなく今もかわりませんが、
今日はあなたの結婚式ですから、思いっきりエコひいきしましょう。

あなたはとても可愛かったです。
ちひろの玩具を強奪しては、握力計を握る筋肉自慢のように、全パワーを相手の腕を握ることに注ぎ込むような攻撃をするあなたでしたが、嬉しいことがあると顔をくしゃくしゃにして全身で喜びを表現して、お風呂でやる泡風船をとても愛していたあなたを
お父さんは、とろけるほど、可愛いなと思っていました。
なんとなく真面目で遠慮がちなところがあったあなたが笑うと誰もが嬉しくなったものです。

2歳のころ、みんなで行ったアンパンマンミュージアムで大はしゃぎだったあなたは、パン工場でノリノリでパンをこねる真似をして、遠慮がちにドキンちゃんにギュっと抱きしめてもらい嬉しそうでした。
近くにいたホラーマン(骸骨の顔のキャラ)は怖くて近寄らなかったあなたですが、後日、ホラーマンが良い奴だということをテレビで知って、

「あおちゃん(当時自分のことをあおちゃんと言っていた)ホラーマンギュッとしてない…したかったー」

とそれから1ヶ月くらいずーっと言い続けていたのもよく覚えています。
結局ホラーマンとギュッとする機会をとれずに、ごめんね。
そのことが影響して、ホラーマンみたいな人が好みになったらどうしようと思ったけど、相手がとても素敵な好青年で安心しました。

あなたが大きくなってからは、全員同じ平等というのは薄れていき、それぞれがそれぞれの持ち味を活かせるように応援するようになりましたが、
生まれた当初同じところから始まったあなたたち姉妹が、少しづつ自分の道を歩み、今こうしてあなただけの道を歩み始めたことをわたしは心より応援します。

結婚おめでとう。
とても賑やかだった、あの頃をありがとう。
あなたの歩む道の横には、私たち家族の道もあるからいつだって寄り道しにおいで。
あの頃できなかったホラーマンに変わってギュッとしてあげるから。

ホラーマン

【続く】

________________________________________

心の披露宴は心の雅叙園の中、シャンパンを入れるグラスってほっそいよな~。机の角にコンって当てたらすぐシャンって割れそうだな~と思いながらまだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

「娘へ。」連載一覧