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一杯のゼリー。【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2019.11.22

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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「一杯のゼリー」【第31通目】

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娘へ。

あなたは母親のお腹の中にいたときから、双子の姉の陣地(そんな決まりはないとは思いますが)に踏み込み、幅を利かせ、ゆったりと過ごしていました。
その時、追いやられた姉は、特に気にせずぼんやり狭いスペースで過ごしていたようです。
このように、お腹の中の頃からすでに、二人の性格には差があったような気がします。

小さな頃、あなたは自由気ままで、いつもだいたい
ニヤニヤしていました。

と思えば、目が合うと何かを企んでいる不敵な顔をして、相手を笑わそうとしたり、何か一人で演劇みたいなことを初めるやいなや、叫びだしたり、ようするに、せわしない子供でした。
ただあなたがやることはだいたい思い切りがよく、モノマネや踊り、急にはじめるギャグに関しても、すごく面白く、私はいつも爆笑してしまったものです。

ただ、長女と次女と違ってあなたはあまり抱っこを求めない子でした。
私はそれが残念で、無理やりよく抱っこしていたのですが、抱っこ中グネグネと動きまくるので、私はいつもハトヤのCMの子供のような状態で、やりづらかったです。(若い人には全く伝わらないと思いますけど)
しかしたまに抱っこを求めてきたときは、やった!とそのチャンスを噛み締めて、軽いあなたをギュっと抱きしめたことを覚えています。

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このように自由だったあなたは、本当につかみどころのない性格で、一体何を考えているのかわからないところがあり、
また天邪鬼な部分もあって、接し方が難しいところがありました。

3歳になる前の夏が終わり、秋が始まろうとしている季節の変わり目の頃、あなたは風邪をひいて、体調を崩しました。
いつもは長女の幼稚園のお迎えや、公園遊びに、双子の姉と一緒に意気揚々とついて行くあなたでしたが、その日は行きたくない、家にいる、と弱々しく言いました。
大概こういうようなことを言っても、母親が出かけてしまうと、急に寂しくなり、「行きたかったー!」と泣き出すというのが定番でしたが、この時は本当に疲れていたのか、出て言っても何も言わずゴロゴロと布団で寝てしまいました。

きっと目が覚めて、みんながいなかったら泣くだろうなと思っておりましたが、起きても大きくは泣かず、「お水飲む?」と聞くと「うん」と答えました。
普段からあんまりたくさん食べないあなたでしたから、風邪を治すために何か栄養をと思った私は、冷蔵庫にみかんのゼリーがあることを思い出しました。
「ゼリーたべる?」と聞くと「うん」と頷きました。
小皿にゼリーを半分入れて渡すと、美味しそうに勢いよくパクパクと食べたので、
「もっと食べる?」と聞くと「うん」
他の子達も食べたいかもな、と半分取っておいたゼリーでしたが、今回は特別だ!と残り全部をあげると、嬉しそうに食べました。(残り半分はみかんだけ食べてゼリーを残していたけど)

ゼリーも食べて少し元気になったのか、私に何かいろんなことを喋ってきました。内容がほとんどなかったので憶えていないのですが、ふたりでソファーに座ってゆったりとお話や歌などを歌ったりしました。
それまでなかなかあなたと二人ですごす時間がなかったものですから、その時間はとても特別で、私はとても嬉しかったです。

しばらくするとみんなが帰ってきました。
あなたはいつものように、長女と次女と一緒に遊び始めました。

少しは元気になったかなとほっとしていると、少し経ってあなたは一人で トコトコトコ と私のところへやって来ました。
そして、なにか、めちゃくちゃ役に立たなそうな、あなたの作ったオリジナルのおもちゃの塊を私に渡してきて、ニコっと笑って足に抱きついてきたのです。

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とても嬉しくって、今でも覚えています。そのおもちゃの塊はすぐにおもちゃ箱に放り込んだけど。

なんとなくですが、あの時から、私はあなたに近づけたような気がしています。相変わらず何を考えているかわからない部分はそれからもずっとありましたが、接し方が難しいと思ったことはなくなったと思います。

あなたは、昔から今でもずっと、とっても可愛く面白い自慢の娘です。
抱きしめると、ニヤリとハトヤの魚のように逃げるあなたですが、それでも私はいつまでも両手を広げているよ。たまには飛び込んできてもいいんだよ。
来ないとお父さんはずっと、すしざんまいの人のようになるよ。

結婚おめでとう。
あなたの世界がよりあなたらしく輝くことを、お父さんは願っています。

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心の披露宴は心の雅叙園の中、雨の時の披露宴って、「お足元の悪い中、来てくださって」と言うけど、足元が悪いくらいで来なかったら、最悪だよな、と思いながらまだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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