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麺が浮かぶ看板をみんなで見て楽しんだ頃。【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2020.01.12

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。

室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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「今日のちゅるちゅるは動いているのか」【第32通目】

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娘へ。

あなたたちが小さい頃、麺類のことをちゅるちゅると言っていました。
ちゅるちゅるラーメン。
ちゅるちゅるうどん。
ちゅるちゅるパスタにちゅるちゅるそーめん。

ちゅるちゅるとつけるとなんだか楽しそうで、あなたたちは目を輝かせていましたね。
とくにラーメンと、うどんはみんな、好物でよく食べていました。(パスタはあんまり好きじゃなかったけど)

あなたが4歳、次女と三女が2歳の夏の頃、山の上の公園にあるプールで遊んだあとの帰り道、家族5人でラーメン屋さんに入りました。

まだお店で食べるには小さい2人がいる我々はあまり外食ができず、めったにないお店での食事にあなたはとても喜んでいました。
店に入る前から寝ていた3女をベビーカーに乗せたまま、我々夫婦は素早く注文し、子供二人、大人二人なら、ちゃんと食べることができる、起きる前にしっかり味わおう!という気持ちが何も言わずとも夫婦間に流れていました。

運ばれてきたラーメンを急いであなたと次女にわけ、食べさせつつ、自分の口に入れた海老ワンタン麺の美味しさは今でも覚えています。
特段美味しいというようなラーメンでもなかったのですが、あの頃、家族で料理屋に入って、なんのトラブルもなく、ラーメンが味わえる感動はとても貴重なものでした。

あなたはちゅるちゅるラーメンをとても一生懸命に、フーフーと食べていました。

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そんなちゅるちゅるラーメンですが、食べること以外でも、よく覚えているシチュエーションがあります。
妻の両親の家、つまりあなた達の祖父母の家がある静岡に、休みになるとよく帰省していました。新横浜から新幹線で帰っていたのですが、新横浜の駅の売店に、ある置物があったのです。

それは、ラーメンどんぶりの麺を箸で空中に引っ張り上げる、たまに蕎麦屋などの軒先にある機械の看板です。

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初めて見たあなたは、「なにこれ、すごいー!おもちろいーー!ぶふふふふ!!」とめちゃくちゃウケていました。
それからというもの、帰省でそこを通るたびに、「変なちゅるちゅるあるかな?」と期待を膨らませ、店をのぞきました。最初の頃は通るたびいつも動いていて、「あったーーー!おもちろいー!!」と毎度笑っていたのですが、2年ほど経つと、動かない日などがでてきました。

それからというもの、そこを通る際は、「今日はちゅるちゅる動いてるかな?」と言いながら覗くようになり、動いていると、「やったー!動いてたー!」と喜び、止まっていると、「あー止まってたー!」としょんぼりしました。

そのうち止まっている方が多くなり、何となくみんなそんなに興味がなくなっていっているのを感じました。

私はなんだかそれが寂しくて。
ちゅるちゅるラーメンが上下に動いているだけの置き物を見るだけで、あんなにも盛り上がれたあの頃を、私はその止まったちゅるちゅるの脇に見てしまうのでした。

そして止まったその置物とは相反し、あなたたちはどんどん成長していって、いつしかちゅるちゅるラーメンのことを、なんと、「ラーメン」というようになりました。

あんなにちゅるちゅるラーメンと言ったのに、どこで正解を知ったのでしょうか。

今日、この会場に来る際、新幹線を利用しました。
当時、新横浜での乗り換えは、ベビーカーを押していると、たくさんエレベーターの順番に並ばなくてはならなくて、とても骨の折れる乗り換えで、関係のないやつはエスカレーターを使えよ!と心の中で思っていたのですが、申し訳ないと思いつつ、今日はその頃のようにエレベーターを利用して、乗り換えました。

横浜線のホームでエレベーターへ乗って、ホーム2階へ、それから新幹線方面の階段脇のエレベーターでまた下の階へ降り右へ、少し歩くと道が開け、脇にある売店が見えてくるとき、

「今日はちゅるちゅる動いてるかな 」

と、どこからか声が聞こえてきたように感じました。
「どうかな?動いてるかな?」
私は思わず言葉が出てしまいました。

ののか、結婚本当におめでとう。

さて今日、ちゅるちゅるラーメンの置き物は動いていたでしょうか?

今度一緒に見に行こう。

【続く】

心の披露宴は心の雅叙園の中、お色直しで新婦が出て戻ってきた時に、衣装は全く変わらず、顔だけデーモン小暮みたくなってたらめちゃくちゃ面白いな、と思いながらまだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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