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君はとても子供でした。【連載・室木おすしの「娘へ。」】
2020.02.29 by 室木 おすし 室木 おすし

君はとても子供でした。【連載・室木おすしの「娘へ。」】

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。

娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。
この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。
室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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「君はとても子供でした」【第33通目】

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娘へ。(長女)

結婚おめでとう。
君が今、こうしてこのような場で素敵なドレスを身にまといたくさんの友人に見守られながら、素敵な旦那さんと結婚式を挙げているなんて、
「お母ちゃんお父ちゃん見て!」と我々夫婦を呼んではおしりを出して大笑いしながらフリフリしていたころのあなたを知っている私は、とても驚いております。

5歳のころのあなたは、当たり前のことですが、とても子供でした。

幼稚園では恥ずかしがってふざけたことをしないあなたでしたが、うちの中ではひょうきんで、おしりを出すわ、両手をカマキリのように上げて、人間ができる最大限のふざけた顔で両サイドにステップするという、
ふざけの頂(いただき)のような行為を、毎日繰り返していました。
口を開けばうんち、オナラなどの言葉の連発。 すみません、お食事中に。
と思えば突然「私はマリコです」などと、嘘の自己紹介を始めたり、と、それはもうやりたい放題で、私は苦笑いすることもしばしばでしたが、そんなあなたが心より大好きで、いつも吹き出して笑ってしまいました。

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あなたはそんな明るい子でしが、同時にとてもさみしがりやでもありました。

その頃あなたたち姉妹はいつも寝るときに、誰がお母さんの隣で寝るかの戦いに明け暮れていて、あなたは特に母の隣で寝たい願望が強く、隣で寝るために、部屋の片づけを率先してやり始め良い子アピールをしたりと、
知略をめぐらし、2つ下の双子の妹たちを出し抜いていました。

ただたまにお母さんがいない日、あなたは、はじめこそ私の架空の昔話「うんち太郎」などの話をテンション高く聞いたりしていたものの、徐々にシクシクと泣き始めるのでした。

下の妹たちは、生まれた時から、姉や双子の相手がいてにぎやかだったからでしょうか、母親がいなくても、さみしがらずすんなり眠ったのですが、あなたは違いました。
きっと妻が双子の出産の際2カ月ほど入院していた時、一人で祖母の家に泊まったりしていたことが潜在的な寂しさとして心の奥にあったのかもしれません。

あるお母さんがお出かけしている日の夜、あなたはお母さんがいない寂しさを私にとつとつと語りました。

「ののちゃん寂しくなっちゃうよ。だってお母ちゃんといっつも一緒なんだもん。一緒に遊んだりごはん食べたり、公園行ったり、買い物したり、笑ったりしてるんだよ。だからいないと悲しくなっちゃう…」

暗い部屋の中、寝ている双子の隣で、あなたは寂しさをなんとか堪えるように、そして寂しい気持ちを整理するように、言葉を発しました。「お母ちゃんと笑ったりしている」という 言葉が、切なく、今の気持ちをよく表しているなと私は思いました。

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「お父ちゃんはどうして寂しくないの?」
とあなたは質問してきました。
「お父ちゃんも寂しいよ。でも大人だから我慢しているんだよ。」と私は答えました。
「大人はなんで我慢できるの?」とあなたが聞きました。。
「大人はお母ちゃんが今いなくても、ちゃんとどこかにいることを知っているからだよ」
「ののちゃんは寂しくなっちゃう。子供だから?」
「そうだね。大人になったらきっと我慢できるようになるね」
と言っていて、これは今の解決策になってないかもなと、私は、うまく娘の寂しさを解消できない歯がゆさを感じていました。

「こういうのが子供なの?」

とあなたがさらに聞きました。その質問に「今の自分の気持ちがとても寂しくて悲しいけど、子供はみんなそうなるのだったら少しは安心できる」といった思いを感じ取り、
わたしは「そうだよ」とだけ答えました。

それで納得したかなと思いきや、あなたは、まだ紛れない寂しさを、うち砕くようにさらに踏み込んだ質問をしてきました。
「いつまでお母ちゃんとお父ちゃんは一緒にいてくれるの?」
「ずっと一緒にいるよ」
「大人になっても?」
「大人になってもいるよ」
「どこにいるの?」
「ののちゃんのそばにいるよ」
「ののちゃん、ずっと一緒じゃなきゃヤダなんだよ」

と言いながら、あなたは顔を向こうに向けて、さらにシクシクと泣きました。
あの時のことを、あなたは覚えているでしょうか。あなたはきっと気づいていなかったと思うけど、あの暗闇の中、
私も、泣いていました。

あなたが大人になった時のことを思って。
こんな日があったことを思い出す日がくることを思って。

あなたは子供でした。
私たちの子供でした。

今のあなたなら、あの時わたしが言った言葉の意味が理解できるでしょう。
今そこにいなくても、ちゃんとどこかにいることを大人は知っているということを。

私たち両親は、あの時、ずっと一緒じゃなきゃヤダと言った、あなたとの約束を忘れたことはありません。たとえ物理的にそばにいなくても、気持ちはそばにいます。
だから自信をもって人生を楽しんでください。

結婚おめでとう。
今度はあなたが誰かの寂しさを癒してあげなさい。

【続く】
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心の披露宴は心の雅叙園の中、心の讃美歌を、手を後ろに組んで、周りの人より若干大きめな声でうたう自分に酔いながらまだまだつづく。

001-illust-05プロフィール

室木おすし

イラストレーター、漫画家。長女と双子の次女・三女の父。
悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。
雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。
夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

室木 おすし

室木 おすしイラストレーター、漫画家。

長女と双子の次女・三女の父。悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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