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あの時うちには名探偵が。【連載・室木おすしの「娘へ。」】

2020.04.16

この連載は……

イラストレーターで、3歳と1歳の双子の女の子のパパ、室木おすしさんによる育児イラストエッセイ。娘が将来結婚などして(しなくても)離れていってしまうことが今から心配で、0歳のころから、娘とのあれこれを結婚式で思い出そう!と「娘素材集」を頭の中にコツコツと作っている、という室木さん。

この連載では、よりすぐりの素材をチョイス。室木さんが娘の結婚式でスピーチとして娘に読んでいるような体でお送りします!

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「あの時うちには名探偵が」【第34通目】

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娘へ。(長女)

あれはもうずいぶん前になるけれど、とても大きな厄災のあった年、2020年のことです。

本来なら東京オリンピックが開催される予定だったその年、世界は新型コロナウィルスという、その当時はまだワクチンのなかったウィルスに大きな被害をうけました。日本でも日々不安をあおるニュースが流れ、外出禁止、ロックダウン、緊急事態宣言など、重々しい言葉であふれていました。

しかし当時まだ5歳だったあなたは、そんなことにはほとんど気づかず、予定していた祖母の家に行けなくなったことに、号泣するくらいの関係性で、ただただ長い休みを過ごしているにすぎなかったことでしょう。

3歳だった双子の妹とともにあなたは家の中でいつもと変わらず楽しそうに過ごしていたことを、覚えています。
その頃、あなたは「おしりたんてい」というアニメが好きでよく見ていました。

おしりたんていは、顔がおしりの名探偵で、どんな事件もププッと解決してしまう憎いやつです。いつも冷静沈着、しゃべり方も丁寧でスマートな、父の私から見ても「やるな」と一目置く探偵でした。

あなたはそんな名探偵に憧れていたのか、ふとしたタイミングで、「なんだかおかしいですねぇ…」などと、何も事件など起きていない我が家の中で、無理やり探偵になり何かを解決しようとするのでした。

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例えば母親が、娘達より一つ多くミニトマトを食べたことに気づいたあなたは、

「おかしいですねぇ… いつものお母ちゃんならトマトをくれるはず…」と訝しみました。

さらには母親の顔にぐぐっと近寄って、
「あなたは…にせものですね…?」と偽母を見抜く名推理を披露。

「にせものじゃないよ!」と母が反論すると、あなたは
「あやしい…」とだけ言い残して、どこかへ走っていきました。
この「あやしい…」というセリフ、あなたはとても気に入ったようで、その時期だいぶ連発していました。

あれはお風呂に入っていた時のことです。

まだ私と一緒にお風呂に入っていたあの頃、手で作るシャボン玉をしたり、祖母からもらったアイス屋さんのおもちゃで遊んだりと、お風呂も遊び場の一つでした。

そんなお風呂の中にも、名探偵は現れました。

「お湯がいつもより少ないですねぇ…あやしい…」と、なにかしらの架空の事件を追い始めたあなたは、シャンプーとコンデショナーの容器の色が違うことに、何か事件のヒントがあるのではないかと、しきりに怪しんだり、曇った鏡に自分で絵を描いて、その絵を怪しんだり(じゃあ犯人お前じゃないのか)、湯けむり架空事件にあなたは推理の精を出していました。

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すると、名探偵の疑いの目は私に向くようになりました。

「髪の毛を洗うのが遅い…あやしい…」
完全なる言いがかりなのですが、推理は止まりません。

私がうがいをすれば
「お風呂は体を洗うところなのにうがい…?…あやしい…」
と、小さな常識に縛られた推理で私を追い詰め、

突然「あ!」と叫びました。
そして私の乳首を指さして、「こんなところに毛が生えてる!あやしい!」

と、乳首にたまにイレギュラーに生える、長いちょろ毛に気づいて、めちゃくちゃとんでもない物証が出てきた! と言わんばかりに怪しんだのです。

この時、私ははじめて知りました。

名探偵に乳首の毛をまじまじと怪しまれることが、とてつもなく恥ずかしいことだということを。
毛はその後、すぐ抜いて捨てました。
しかしなんだかどうにも面白くなってしまい、それから名探偵に乳首毛を指摘されたことをちょくちょく思い出しては、私はくすくすと笑ってしまったのです。

きっとあなたは覚えていないでしょう。この迷宮入りした湯けむり乳首ちょろ毛事件を。

世の中は大変な頃でした。毎日毎日感染者数が増えて、世界の恐ろしいニュースが流れてきて、仕事もままならず、外出もできない。
でもうちの中には名探偵がいました。何の事件を追っているのか一つもわからない名探偵が。私はそれでいつでも明るい気持ちになれたのです。

そして今日、その名探偵が、美しい花嫁になるというのですから、私にとってはまるでミステリー小説を読んでいるかのようです。

結婚おめでとう。

この小説の最後が誰もが笑顔になるHAPPY END であることを、私は知っています。失礼。ネタバレでした。

【続く】
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心の披露宴は心の雅叙園の中、酒の席でのトイレで、今日ペパリーゼ飲み忘れたーって言ってる奴に出くわす確率結構高いなと思いつつまだまだつづく。

室木 おすし

室木 おすし (むろき・おすし)イラストレーター、漫画家。

長女と双子の次女・三女の父。悲しみゴリラ川柳家元。オモコロネットラジオ「ありっちゃありアワー」パーソナリティ。雑誌やWEBで記事や漫画の執筆をしたり、広告でイラストやGIF動画を作成したりと日々あくせく。夜泣きのひどい次女の抱っこには定評があり、2018年には生春巻きが好きだという自分の側面にはたと気づいた。

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