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出生前診断する前に考えてもらいたいこと~先輩ママの経験談vol.5~

2020.06.26

このシリーズでは、二人目不妊外来を設けるクリニックのレポートや、不妊治療を受ける際のクリニック選び、男性不妊、出生前診断などについて先輩ママライターの目線からお届け。第5回は「出生前診断する前に考えてもらいたいこと」についてお話をします。


二人目不妊に悩んでいる間に年を重ね、幸運に二人目をお腹に授かることができても、次は「生まれてくる子に障害がないだろうか」という不安を感じる夫婦は多いかもしれません。加齢に伴い受精卵の染色体異常の確率は上がることがわかっており、ダウン症児が生まれれる確率は、女性が40歳を超えると1%以上に高まります。

仮に何らかの障害をもって生まれてきたとなると、親も年老いていくなか、ずっと面倒を見続けられるのか、兄弟に負担がのしかからないか、社会で自立して生きていけるのか、先々の不安は尽きません。「それならいっそ出生前診断をしてみよう」と、ここでは3年前、40歳で第三子を妊娠した私の経験についてお伝えしたいと思います。

高確率で染色体異常を判定できるNIPTが登場

その前に、日本で一般的に行われている出生前診断の種類について紹介します。まずは羊水検査。これは妊婦のお腹に針を刺して羊水の一部を抜き取り染色体異常を調べる検査で、陽性とでたら結果は確定です。

一方、日本で普及するクアトロ検査は、妊婦の血液からダウン症はじめ胎児の3つの染色体異常の確率を割り出すもので、身体への負担は軽いものの検査精度は低く、ある検査会社の公表データによると陽性的中立は2%程度(陽性と判定されても実際は98%が異常なし)。陽性でも確定には羊水検査が必要になります。

そんな中、2014年頃から急速に広まった新型出生前診断(NIPT)は大きなインパクトをもたらしました。採血のみで、ダウン症や13、18トリソミーの確率を割り出すもので、陽性的中立は95%超。費用は20万円ほどしますが、晩産化により希望者は年々増加しています。

結果に激しくうろたえた

私は第三子を妊娠してすぐ、クアトロ検査を受けました。第二子のときは同じ検査を受け特に問題なかったことから、きっと今回も大丈夫だと、今思えば軽い気持ちでした。クアトロ検査はダウン症の場合、295分の1以上確率が高いと、一律に陽性とでます。結果が陽性の場合のみ病院から電話が入ることになっていましたが、一週間後、その電話がかかってきました。着信番号を見た途端、嫌な予感がしましたが、的中しました。

検査の結果、ダウン症の陽性判定が出たため医師から話があることのことでした。クワトロ検査による陽性の的中率は低いことは予め分かっていましたが、それでも電話を切った直後、動揺のあまり手にしていたコーヒーカップをひっくり返したのを今でも覚えています。

お腹の子のダウン症の確率は135分の1でした。これを高いと取るか、低いと取るかは人それぞれだと思います。私は第二子で同じ検査をしたところ、確か2000分の1程度の確率だったので、それと比較するとかなり高い確率のように思えました。悩んだ末、17週で羊水検査を受けることにしました。中途半端な不安を抱え妊娠期を過ごすのが嫌だったからです。結果が出るまでの2週間は真っ暗なトンネルにいるようでした。お腹に胎動を感じながら、堕胎手術について考え、障がい児育児について考えました。

そして考えに考え抜いた末、もし陽性と確定しても産もうと思いました。それはどんな病気でも受け入れる、という覚悟ができたのではありません。妊娠中期の中絶は人工的に陣痛を起こし流産させることです。すでにお腹で動く子を堕胎するという行為に私の精神状態は耐えられないだろう。ただ、目の前の苦しさからのがれたかっただけです。

羊水検査の結果は陰性でした。こんなことを書くと不快な気持ちになる方もいらっしゃると思いますが、正直、ほっとしました。ただ一方で、釈然とせず、割り切れない気持ちは今もずっと引きずっています。

技術に振り回されないために

まず、痛感したのは、出生前診断は私のような安易な気持ちで受けてはならないということです。胎児の障害が分かっていても、それを治す胎内治療の技術は追いついていません。どの出生前診断であれ、受けるからには、産む、産まないの選択を迫られるかもしれない、という覚悟を同時に引き受けなければいけません。もし受けるのであれば、陽性と出た場合のことまで想像し、熟考して決めてほしいと思います。

また、診断で最終的に障害が確定された場合、それは当事者だけが悩むべき問題なのか、という疑問も残りました。私が産みたいと思ったとき、同時に未知で不安だらけの世界に一人放り出されることでもありました。ダウン症の子はどのように成長するのだろう? 何歳まで生きられる? 社会的サポートは? 検査を受けた医療機関では、事前カウンセリングというものは一切なく、結果はすべて自分が追わなくてはいけないと思い込み、どこまでも孤独でした。

出生前診断について否定するつもりはありません。お腹の子の障害がいち早くわかれば、NICUの整った施設で出産し早期に対応することができます。また、家の事情でどうしても障害のある子を産み育てられないこともあります。「安易な命の選択」という人もいますが、決断の背景や、妊婦が受ける心身の苦しみを思えば、そんな言葉をかけられるはずはありません。

ですが、現実的なことを言えば、出生前診断については、技術だけが先走り、十分な情報提供や社会的な受け皿が追い付いているとは、当時は全く思えませんでした。もし将来、自分の娘が妊娠して、お腹の子の障がいが分かり、それでも産みたいと願ったら。社会はその選択を尊重してくれるだろうか、私はそんな娘を心から応援できる母親でいられるだろうか。依然、妊婦が一人不安な思いを強いられるのであれば、それは私たち社会側の怠慢なのかもしれません。

一連の経験を通し、そんなことを考えました。もちろん、多くの方が熟慮の末に出生前診断に臨まれると思います。ですが、もし万が一にも私のように「軽い気持ち」や「お守りで」という感覚で受けようとしているのであれば、私がそうだったように診断の目的について、ご夫婦でとことん議論してもらえたらと思います。

内田 朋子

内田 朋子 (うちだともこ)医療ライター。

1977年山口県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、医療・介護専門の出版社を経てフリーに。自身の経験を活かし不妊治療、周産期医療、出生前診断、女性医療を中心に取材。『週刊文春woman』や不妊・未妊に向き合うサイト『UMU~不妊、産む、産まないに向き合うすべての女性たちへ~』などで執筆中。日本医学ジャーナリスト協会会員。不妊治療を経て三児の母。umumedia.jp

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